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第百四十八話:初めての魔法薬作り

 翌日、クラン先生に届けを出して正式に魔法薬研究会に入ることになった。

 届けを出した時、クラン先生は目を丸くしていたけど、やはりマイナーな研究会なのだろうな。

 研究会にはそれぞれ顧問となる先生がいるらしく、本当は顧問の先生に直接届けを出すのがいいんだけど、私は顧問の先生を知らないので担任のクラン先生に出すことにした。

 ついでだから顧問が誰か聞いてみると、どうやら入学テストの時に出会ったルシウス先生がそうらしい。

 フードを目深にかぶった無口な先生だったよね。なんか優秀そうなオーラを出していたからこんなマイナー研究会の顧問をやっているのはちょっと意外だ。

 顧問も知れたし直接出しに行こうかとも思ったが、あの人は基本的に姿を現さないらしく、新入生である私が見つけるのはほぼ不可能だとか。

 無口なだけじゃなく人前に姿を現さないって、恥ずかしがり屋なのかな?

 ルシウス先生は先生の中でも交流が少ないが、クラン先生はその中でも交流がある数少ない先生らしい。このまま届けてくれるそうなので、任せることにした。

 後はルシウス先生の許可さえ下りれば晴れて魔法薬研究会に入ることが出来る。基本的に研究会の門は広く開かれているし、マイナー研究会ともなれば人はいくらいても困らないだろうからほぼ確定でいいだろう。

 昨日から色々考えていたのだ。魔法薬に使う魔法はどんなものがいいのか。

 例えば隠密魔法を使えば体を透明にする薬ができるかもしれないし、持続を長くすれば魔力を消費せずに防御魔法が使えるかもしれない。可能性は無限大だ。

 ああ、放課後が待ち遠しい。早く授業が終わらないだろうか。

 授業は基礎的な魔法の詠唱について。全く興味がないわけではないし、むしろ魔法関連は興味深いのだが、魔法薬のことで頭がいっぱいであんまり頭に入ってこなかった。

 これはいけない兆候かもしれない。ちょっと気を付けた方がいいかも。サリアの学園生活を守ると決めたでしょう、しっかりしないと。

 とはいえ、今のところ大した問題は起きていないのは事実。サリアのことをよく思わない不安分子は存在するけど、初日に私に忠告してきたことを除けば目立った行動もしていないようだし、あんまり気にしなくていいんじゃないかな。

 その日も特に何も問題は起きないまま時間は進み、放課後となる。

 シルヴィアさん達に別れを告げ、早速旧校舎へと赴いた。

 扉をノックすればヴィクトール先輩の声が聞こえる。まだ二回目ではあるが、すでに緊張はなくスムーズに入室することが出来た。


「おお、君達か。昨日に続いてここに来たところを見ると、本気でここに入りたいようだね」


「はい。すでに届けも出しました」


「なんと、それは手が早いことだ。君達のような可愛らしいご令嬢を迎えられたことを嬉しく思う。改めて歓迎しよう。君達は仲間だ」


「はい、よろしくお願いします。ヴィクトール先輩」


 はっきりとした口調の先輩にぺこりと頭を下げる。サリアもつられて頭を下げると、そう畏まらなくていいと笑いながら諭された。


「さて、そうなると君達の席が必要だな。ミスティア君、用意してくれたまえ」


「はーい」


 昨日と同じく椅子に座ってお茶を楽しんでいたミスティアさんはヴィクトール先輩の指示でゆっくりと立ち上がる。

 動作そのものはおっとりとしていてどこか頼りないが、足取りはしっかりしていて意外に早い。

 部屋の端に追いやられていた椅子を二脚手に取ると手早く机の傍に置いた。


「はい、どうぞー」


「ありがとうございます。ミスティアさん」


 ミスティアさんが座っている椅子もそうだが、椅子は簡易的なものだ。椅子だけでなく、机もよく見れば安そうなもので、全体的にあまり品がない。

 まあ、その分魔法薬に使う機材は結構いいものを揃えているようだ。素材を保管しておくための木箱や液体を保存するための小瓶、壁は魔法の暴発に備えてか実技テストの時にも見た魔法耐性の高いものが使用されているようだ。

 こういう実用性重視な造りは好感が持てる。これだけ揃っていれば、多少無茶なことをしても被害は少なくて済むだろう。腕が鳴る。


「さて、早速だが今日の活動をしたいと思う。と言っても、いつもとやることは変わらない。各自自由に素材を採取し、研究し、魔法薬の完成を目指して奔走すべし、だ」


 昨日も聞いたが、この研究会は基本的に個人が自由に研究を行っていくのだそうだ。会費で購入した研究会の共有素材や機材などは使って構わないが、基本的には素材は自分で採取し、独自の配合を見つけ、込める魔法を考える。

 もちろん、わからないことがあれば相談するのは全然かまわないし、何か協力してほしいことがあれば積極的に手を貸すのがルールだそうだが、基本的には一人でやるという考え方だ。

 まあ、それは構わない。むしろ一人の方が気楽でいいし、あからさまに危険なこと以外は口を挟まないのがルールらしいから集中できる。


「二人は初めてだからわからないことも多いだろう。その時は私かミスティア君に遠慮なく聞くといい。懇切丁寧に説明しよう」


 さて、それでは許可も出たことだし早速魔法薬作りをやってみることにしよう。

 まずは共有木箱にある素材を見ていく。ここにあるものは誰が使っても構わないものだ。

 大体は薬草類で、たまに虫や鉱石なんかがあると言った感じ。

 ちなみに素材は取りに行かなくても会費で購入することもできるが、レアな素材は高いため会員全員の承諾が必要となる。一人でも反対がいれば自力で買うかしないといけない。

 だから、ここにあるのは大体が普通に売られているものだ。薬草はポーションの下位互換として使われることも多いが、それ以外はそれ単体では役に立たないものも多く、割と安価で買える。


「さて、どれを合わせたものか……」


 魔法薬は素材を混ぜ合わせ、仕上げに魔法を撃ちこむことで完成する。ただ、混ぜ合わせる素材は何でもいいというわけではなく、撃ち込む魔法と相性のいいものでなくてはならない。

 薬草は大体に回復作用があるから回復薬を作るのは割と簡単なような気がするけど、それだったらポーション作った方が効果が高い。

 手間としては魔法薬の方が断然多いのにポーションの方が効果が高いのは謎だけど。

 私は悩んだ挙句、いくつかの薬草を選び、それに加えて自前で用意した薬草を使うことにした。

 採取依頼の時についでに集めていた物が役に立つ時だ。

 すり鉢にそれらの素材を放り込み、潰していく。【鑑定】を使いながら魔法を撃ちこむタイミングを見極めていく。

 正直、どのタイミングで魔法を撃ちこめばいいのかはよくわかっていないけど、注意深く見ていればなんとなくわかるかもしれない。

 そんな期待と共に混ぜ合わせていくこと数分。素材に変化が現れた。

 いや、変化自体は何度も起きていたけど、それは私が加えた薬草のせいだろう。だが、この変化は違う。明らかにタイミングだと見た。

 私は即座に魔法陣を思い浮かべ、すり鉢の中に落としていく。

 ゆっくり慎重に、ただ発動させるのではなく、不発させてその魔力がしみ込んでいくようなイメージで……これ、初めから魔法陣の一部を破綻させてた方がやりやすいかな? 次からそうしてみよう。

 すり鉢の中を覗き込んでみればどうやらうまくいったようで、七色に光る液体が底に溜まっていた。

 やっぱりこういう色になるのか。効果を考えれば妥当だけど、ちょっと気持ち悪いな。

 【鑑定】で確認してみれば、ちゃんと望む通りの効果が付与されているようで何より。

 こうして私の初めての魔法薬作りは成功に終わった。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いともアッサリと作られた謎の新薬。 [気になる点] 虹色に光る魔法薬(ー ー;)どういう意味かな?光ひとつひとつが属性だとしたら7つの属性を持つ魔法薬……効能は、隠密どころか完全隠蔽なんで…
[一言] 七色に光る液体ってパッと見やばそう
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