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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十五章:知識の集積編
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第六百八十八話:その手の専門家

 翌日。私は、お兄ちゃん達に頼んで、冒険の活躍を書いてもらうことにした。

 まあ、一夜ひよなに書かれている知識は、冒険譚よりも、どちらかというと図鑑に近く、魔物の種類なんかを書く方が適しているのかもしれないけど、私も魔法理論で埋めたし、今更だろう。

 別に、ちゃんとした知識であるなら、その埋め方はなんでも問題ないわけだし、冒険譚でも、十分すぎるものだと思う。

 ただ一つ問題があるとすれば、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、文字を書くのはそこまで得意ではなかったということだろう。


「うーん、うまくまとめるのが難しいな」


「全部箇条書きになっちゃうわね」


 別に、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、文字が書けないというわけではない。

 冒険者の中には、文字が書けない人もたくさんいるし、そう言う意味では、二人とも優秀と言えるだろう。

 ただ、要点をまとめるというか、読み手に伝わりやすいように書くというのが苦手らしく、ただ事実を書き連ねているだけの内容になっているということだ。

 別に、これでも最低限の情報は読み取れるし、知識としては成立しそうではあるけど、一夜ひよなとしても、やはり本である以上は、読んでくれる人にわかりやすい内容を望んでいるようだ。

 やっぱり本に精神が寄っているような気がしないでもないけど、おかげでお兄ちゃん達の知識は、ほとんどページ埋めには役に立たなかった。


「すまん、ハク、ヒヨナ、役に立てそうにない」


「ごめんね?」


「ううん、手伝ってくれただけでも嬉しいよ」


 さて、これからどうしようか。

 知識として成立するものは、世の中にはごまんとあるだろう。

 料理のレシピや魔物の種類、薬に使える薬草や魔石の性質など、書こうと思えばいくらでも書くものがあると思う。

 ただ、いざ書こうと思うと、案外それらのことについて知らないんだなと思い至る。

 例えば、私は魔石の変換が得意だけど、魔石の性質を詳しく理解しているわけじゃない。

 一応、魔石の属性とか、どのように変換されるかの工程くらいは知っているけど、昨日書いた魔法理論のように、論文を書けるほどは知らないのだ。

 別に、論文レベルの知識を書けと言うわけではないと思うけど、一夜ひよなの知識とするからには、やはりまともなものにしてあげたいという気持ちもある。

 書いたことをすべて理解できるということは、逆に言えば、書いたことが間違っていても、それを本当のことだと思ってしまうってことだ。

 元に戻った後も、その知識が残り続けるのだとしたら、後から正すのは難しそうだし、あまりに不正確な情報は、後々一夜ひよなを苦しめる可能性がある。

 だから、書くとしたら正確に書かなければならないのだ。


「とはいえ、全部一から調べるのは時間がかかりすぎるよね……」


 私が知らないことはないと言えるくらいの知識を誇っているのは、魔法に関することくらい。その他に関しては、知ってはいるけど、それは一般的な知識に留まる。

 調べようと思えば調べることはできるかもしれないけど、いちいち論文レベルまで仕上げていては、時間もかかるし、それでは早く一夜ひよなを元に戻すという目標が遠のくことになる。


「それなら、詳しい人に話を聞けばいいんじゃない?」


「詳しい人か、確かに、一から調べるよりはましかもね」


 自分が知らないのなら、その分野の専門家に話を聞けばいい。

 至極単純な話だけど、思い至らなかったな。

 その分野の専門家、となると、誰がいいだろうか?

 魔法に関することなら、以前学会発表で訪れたロードレスがいいかなと思うけど、魔法に関しては私の今の知識でもどうにでもなると思うし、それ以外がいい。

 ぱっと思いつくのだと……。


「……セレフィーネさんかな?」


 セレフィーネさんは、ドワーフの国であるゴーフェン帝国の魔道具の発明家である。

 その天才ぶりは、以前魔導船を作った際にいかんなく発揮されているし、魔道具の発明に置いて、右に出る者はいないだろう。

 その兄であるエルバートさんも、魔道具の扱いに関してはトップクラスだし、専門家と言って差し支えない。

 まず話を聞く相手としては、十分すぎるだろう。


『ドワーフの国? 本物のドワーフが見れる?』


「まあ、そう言うことになるのかな」


『やったー! 実は見て見たかったんだよね!』


 そういえば、一夜ひよなはドワーフを見たことはなかったんだっけ?

 まあ、もしかしたら、王都に住むドワーフくらいは見たことあるかもしれないけど、ちゃんとドワーフだって教えたことはないかもしれない。

 一夜ひよなの知らない知識という意味では、ドワーフがいる国というだけでも、いい刺激になるかもしれないね。


「じゃあ、さっそく行ってくるよ」


「護衛はいらないか?」


「大丈夫。そんなに長居する気はないし」


 ゴーフェン帝国までは、転移で簡単に行けるし、ゴーフェン帝国自体も、かなり治安はいい方なので、護衛はいらないだろう。

 そもそも、エルがいれば事足りるしね。

 お兄ちゃん達には悪いけど、ここはお留守番していてもらおう。

 一夜ひよなとエルを伴って、転移で飛ぶ。

 ゴーフェンに来たのはいつぶりだろうか。相変わらず、鉄の焼ける匂いがする。

 せっかくなら皇帝にも挨拶をした方がいいかなと思ったけど、今回は私的な用事だし、別にいいか。

 そう思って、セレフィーネさんの別荘に向かう。

 しかし、どうやら留守のようで、扉を叩いたら、メイドさんが出てきて、今はドックの方に顔を出しているだろうと話していた。

 ドック、となると、魔導船関連か。

 空飛ぶ船という、夢のような設計物。

 このファンタジー世界でも、空飛ぶ船というものはなく、おとぎ話の中でしか見られないものだった。

 それを、どうにか魔導船という形にできたのは、セレフィーネさんがいたからこそである。

 オルフェス王国も、未だに支援を続けているし、計画は順調に進んでいそうだ。

 すでに飛行可能な状態まで持って行っているし、後は改良を重ねるだけだろうしね。

 どんなものになっているのか、少し見てみたい気もする。


『魔導船って、空飛ぶ船ってこと?』


「そうだよ。私も、ちょっと協力したことがある」


『相変わらず凄いところに首を突っ込んでるね。ファンタジー世界の空飛ぶ船とか、絶対かっこいいじゃん!』


 一夜ひよなも、魔導船には興味津々な様子だった。

 魔導船に関しての知識も書き込むべきだろうか? いや、あれは確かにすでに一般公開されたとはいえ、まだ秘匿されている部分も多いし、流石にだめか。

 ウキウキとした様子の一夜ひよなを隠密魔法で隠しつつ、ドックへと向かう。

 さて、元気にしているだろうか?


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