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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十四章:一夜奪還編
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第六百八十話:予想外の力

『まあ、そうくるよねぇ』


 私が必死に浄化魔法をかけている中、私の中にいるリクは暢気なものだった。

 まるで、初めからわかっていたかのような言い草に、少し憤りを覚える。

 リクだって、私が眷属化したら困るのは同じだろう。

 それとも、これを機に私の体を乗っ取ろうとか思ってる?

 確かに、いくらグラスが強力な神様とは言っても、先にいたのはリクの方だ。

 リクだって、強力な神様には違いないし、その性質から、私の体を秘密裏に乗っ取る準備をしていてもおかしくはない。


〈リク、何を暢気なことを!〉


『大丈夫だよ。これは予想していたし、むしろチャンスだから』


〈チャンス? やっぱり、私の体を……〉


『とりあえず、その浄化魔法やめな? あんまり意味ないから』


 人が必死になっているのに、この言い草である。

 そりゃ確かに、グラス本体から受けたものなら、浄化魔法もあまり効力がない可能性もあるけど、無駄ってことはないでしょう。

 体が作り替えられている感覚はあるけれど、せめてもの抵抗として、やっておくに越したことはない。


『何か勘違いしてるみたいだけど、眷属化はしないから安心しなよ』


〈どういうことですか?〉


『言ったでしょ、これは予想していたことだって。僕らが、それに何の対策もしていないとでも?』


 そう言って、リクは得意げに鼻を鳴らした。

 対策、と言っても、何をやっていたんだろうか?

 飲まされた時点で、もう手遅れな気がするんだけど……。


『豊穣の神の体液で眷属化するのはあくまで人間であって、神は眷属化することはないよ。まあ、あまりに格差があればわからないけど、これでもハクは色々な神の力を取り込んできた。よっぽど、薬漬けされない限り、早々眷属化はしない』


〈じゃあ、グラスの行動は無意味ってことですか?〉


『あいつは、ハクは厳密には神じゃないし、明らかに格下と思ってるだろうから、行けると思ったんだろうけどね。一応、可能性はないわけじゃないし、その確信があってやって来たなら、眷属化してもおかしくはないけど』


〈やばいじゃないですか!〉


『だからこその対策だよ。あいつの乳は、人々を眷属化すると共に、万病を治療する効果がある。そして、体液とはいえ、それは神の一部とも言える。これらをうまいこと組み合わせれば、よりパワーアップできるんじゃないかと思って、準備してたんだよ』


 元々、リクは私の体に異世界の神様の一部を取り込ませることによって、短期間で膨大な神力の入手に成功させた。

 これは、他の神様の一部を取り込めば取り込むほど強くなるので、協力してくれる神様が多ければ多いほどいい。

 そして、その対象は、グラスを利用することでも満たすことができる。

 グラスから流れる体液は、グラス自身から生成されたものであり、言うなれば、グラスの一部でもある。

 しかもそれは、デメリットこそあるものの、プラスの効果がある薬のようなもの。

 であれば、デメリットを排除し、いいところだけを取り出して強化を促すことができれば、私の力はさらに増すことになる。

 もちろん、グラスは厳密にはリクの世界の神様ではないし、別世界の神様の力が、どのように作用するのかという心配はあるにしても、今は強くならなくてはならないというのも事実。

 特に、この後クイーンとも戦わなければならないと考えるなら、力は貪欲に吸収していかなければならない。

 であるなら、この機会を逃すわけにはいかないのだ。


『まあ、ちょっと苦しいかもしれないけど、それは我慢してね』


〈一体どうなるんですか……〉


 そうなると、体を作り替えられている感覚がするのは、そのパワーアップの影響か。

 少し安心したけど、それでも焦燥感は消えない。

 このまま、グラスの体液を取り込んで、力を得てもいいのだろうか。

 元々、得体のしれない力を取り込んでいるのだから、いまさらという考えはあるにしろ、グラスはその中でもかなり未知の存在である。

 眷属化の心配もあるし、そうでなくても、どのような変化があるかわからない。

 不安を抱えながらも、浄化魔法の連打をやめ、変化を待つ。

 この間に、グラスが攻撃してこないか心配だったけど、私の変化を見届けたいのか、静かなものだった。

 まあ、グラスの考える変化と、今私が体感している変化は別ものだろうけど。


〈う、ぐぁ……!〉


 やがて、変化も大詰めになって来たのか、体の熱さが激しくなってきた。

 空中での体制制御もあいまいになっていき、やたら滅多らに辺りを飛び回る。

 早く変化が終わって欲しい、そう願いながら耐えることしばし、ようやく熱さが引いていった。

 荒い呼吸を整えて、ひとまずグラスから距離を取る。


〈はぁはぁ……なにがどうなりましたか?〉


『うーん……これは、ちょっと予想外かも』


 リクは、少し困惑したようにそう呟く。

 私も、とっさに体を見回してみたが、相変わらず、発光する透明な鱗以外は、特におかしな点は見当たらない。

 何か見逃しているのだろうか?

 私は、とっさに【鑑定】で自分の体を調べてみた。


〈……え?〉


 その結果を見て、私はぽかんと口を開けてしまった。

 そうして、私は無意識のうちに、自分のお腹を見る。

 発光し、近くで見るには少し眩しいそのお腹だけど、よく見てみると、少し膨らんでいるように見える。

 いや、まさか、そんな……。

 【鑑定】で見たのだから、恐らくは事実なんだろうけど、それを認めたくなかった。

 いや、だって、私が、妊娠しているなんて……。


『あらあら、子にするつもりが、親にしちゃったかしら?』


 無情にも、グラスがそう告げる。

 お腹の中にある感触を含めて、もはや認めざるを得なかった。

 私は、よくわからないけど、子を身ごもっている。

 なんでパワーアップしようとして妊娠してしまうのか、理解できない。

 いや、本当に理解できない。なんで?

 私の頭は、ショート寸前だった。


『多分、豊穣の神の母としての性質が強く出たってことなのかなぁ』


〈母って、あんな化け物が?〉


『まあ、一応ね。豊穣の神の眷属は、皆その乳を飲んで生まれることになる。だから、眷属は皆子供であり、あいつは母なのさ』


 まあ、母と言っても、全く子育てしない放任主義みたいだけどね、と独り言ちる。

 なるほど、それなら納得、ってなるか!

 仮に、グラスに母としての性質があるとしても、イコール子供ができるということにはならないだろう。

 そもそも、今までも、ルディやクィスと言った、異世界の神様の一部を取り込んできたけど、そんな性質が現れたことはなかった。

 確かに、グラスはその中でも異質な神様ではあるけど、何だってこんな妙なことになるのか。

 憤りを通り越して、呆れてしまう。

 というか、これどうすればいいの?

 確かに、眷属化はしていないみたいだから、その点は安心したけど、お腹に子供がいるということは、下手なことをすれば、子供が死んでしまう可能性があるということ。

 いくら望まぬ形で得たものとはいえ、流石に子供を殺すのは憚られる。

 となると、衝撃を与えないように、慎重に戦う必要があるけど、そんなことをしていられるほど甘い相手ではない。

 事実、不意を突かれて触手に結界を破壊されたわけだしね。

 もはや、パワーアップどころか、パワーダウンである。

 私は、どうやって戦えばいいんだろうか?

 未だに状況がよく理解できない中、私はいかにして戦うかを思案した。

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