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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十四章:一夜奪還編
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第六百七十三話:信仰を取り戻す旅

「あ、あぁ、創造神様……」


「お、俺はいったい今まで何を……」


「私は今まで何を信仰していたの……? ああ、創造神様……!」


 教会内は、阿鼻叫喚となった。

 私の姿を見て、感涙にむせび泣く人もいれば、正気に戻ったかのように、急に辺りをきょろきょろと見まわす人もいる。

 当初の予想通り、人々は私の姿で、創造神様への信仰を思い出したようだ。

 一応、【鑑定】で見てみたけど、眷属化の状態は消えていない。

 これは、眷属化によって、何を信仰しているのかが曖昧な状態だったところに、創造神様という信仰対象が現れたことで、自分はこの神様を信仰していたんだと、思い出したという状態だからである。

 だから、厳密にはまだ眷属化は解けておらず、完全に除去するためには、浄化する必要がある。

 できることなら、この場で全員浄化してあげたいところではあるけど、この後、グラスとの戦闘が待っていることを考えると、あまり神力を消費しすぎるわけにもいかないし、黒き聖水の流通をまだ止めれていない以上、この後再び眷属化する可能性もあるから、そうなったらまたこの姿を見せるところから始めなければならない。

 だから、現状はこの状態で維持し、グラスを倒した後で浄化するというのが、最も効率的だ。

 まあ、不安がないわけではないけど、今はこの方法が正しいと思うしかない。


「私は何て罪深いことをしてしまったんだ! これはもう、死んで償うしか……!」


『早まることはありません。あなた達は、そう、悪い夢を見ていただけなのですから』


「夢……? これは、夢だったのか……」


 信心深い人々の中には、自らの信仰の矛先が変わってしまったことを憂いて、自ら命を絶とうとする人もいたが、そこは私が声をかけることによって、留まらせた。

 流石に、創造神様からの言葉を無碍にすることはできないだろうからね。

 まあ、それでも、この後私がいなくなった時に再び暴れ出す可能性もないことはないけど、そこらへんは、異端審問官を通して、制圧要員を確保してある。

 まあ、眷属化の影響が確認できていない町からの呼び寄せだから、まだすべての町に送られているわけではないけれど、こうして信仰を取り戻せば、そこからまた別の町にってこともできるので、やればやるほど制圧できる人員の確保はできるはずである。

 最悪、間に合わなければ、戦闘が終わるまで寝ててもらうこともできるから、何とかはなると思うけどね。

 思ったよりも、人々が従順でよかった。流石、創造神様を信仰しているだけのことはある。


『私のことを、どうか忘れないでくださいね』


 私は、それっぽい言葉を残し、姿を消す。

 今回で、教会に祈りに来ていた人々は、全員ではないだろうけど、一つの町の人々を全員浄化するよりは、多くの町で多くの人々を浄化した方が、いいと判断した。

 それほど時間もないだろうしね。

 特に、末端の村に行くほど、あの時のように化け物が潜んでいる可能性がある。

 そう言った問題に対処するためにも、多くの場所を回った方がいい。


「ハク、お疲れ様」


「うん。緊張した……」


 人の姿に戻り、町を後にしながら、労いの言葉を受ける。

 元々、ああいう人前で話すということは苦手だったけど、今回はその責任がかなり大きいからね。

 下手をしたら、私のせいで命を絶とうとする人もいたわけだし、うまく思い留まらせることができてよかった。


「この調子で、他の町でも頑張らないとね」


「う、うん」


 そう、これはまだ始まったばかり。これから、これと同じようなことを、各町や村でやらなくてはならない。

 そう考えると、ちょっと憂鬱な気分になるけど、これもグラスを倒すため、ひいては、人々を助けるためである。

 まだ連絡がついていないところもあるようだから、少しずつということになるだろうけど、きちんとやって行かないとね。

 私は、ちょっとキリキリする胃を抑えながら、エルの背に乗って次なる町へと向かった。


 そうして飛び回ること数日。私は、ひたすら創造神様の姿を見せつけ続けた。

 大抵の場所では、皆私の姿を見て跪き、時には涙し、時には叫び声をあげ、と言ったように、阿鼻叫喚となっていくのだけど、私が言葉をちょいとかけると、とたんに大人しくなるのだから、創造神様の威光は凄いと思う。

 まあ、こんな風に、何回も現れて偽物を疑われたりしないのかという不安もあると言えばあるけど、基本的にはその町で姿を現すのは一回だけだし、他の町から来た応援に関しても、そんなの関係ないと言わんばかりに跪いていたから、多分大丈夫なんだろう。

 私も、何回もやっていると次第に慣れてきて、言葉もすらすら話せるようになったから、それもよかったかもしれない。


「ルーシーさん、私の喋り方って、創造神様と比べてどうなんですか?」


「そうですね、ちょっと硬くなりすぎでしょうか。創造神様は、とても包容力のある方ですから、同じ目線というよりは、親から子へ言い聞かせるような、そんな言葉づかいの方がいいと思います」


 道中、創造神様のことをよく知るルーシーさんにも話を聞いてみたが、そんな答えが返ってきた。

 確かに、あのマキア様でさえ、創造神様の前では形無しだったし、親から子へ、という表現はあながち間違いでもないかもしれない。

 まあ、私は親になったことはないから、そこらへんはちょっと曖昧だけどね。

 お母さんの喋り方、とも少し違う気もするし、そこらへんはアドリブでやるしかなかった。


「次の町は、すでに結構やばいらしいぞ」


「うん。あの村に近いからね」


 順調に信仰を取り戻して行っているわけだけど、そろそろ黒き聖水が広まり始めた地点に近づいてきた。

 泉に近い場所になればなるほど、それだけ黒き聖水の流通が多いということでもあり、特に、それを万病が治る薬としてではなく、ただの健康飲料として販売しているところもあるくらいなので、その侵食具合はかなりのものだろう。

 どうあがいても、例の化け物が出てくることになると思う。

 仮に、うまく倒せるとして、他の人々を巻き込まずに倒すことはできるだろうかと、少し不安ではあるよね。


『ああ、そのことなんだけど、ちょっと情報を仕入れてきたよ』


「情報?」


『ほら、弱点がどうとか言ってたでしょ? それについてだよ』


 そう言って、リクはあの化け物の弱点について話し始める。

 まず、弱点となる部位だけど、やはりあの瘤で間違いないようだ。

 子山羊と称されているけれど、どちらかというと樹木に近い性質を持っているようで、本体はあの瘤の方と言っても過言ではないらしい。

 寄生してるって感じなのかな? 山羊に見える部分は、人が変化した成れの果てってことなのかもしれないね。


『で、有効な攻撃だけど、火の他に、電気も有効だよ。これに関しては、僕らにも当てはまるかもね』


「リクは火や電気が苦手なんですか?」


『もちろん、魔術的な要素のある攻撃って言うのが前提だけどね。効かない奴もいるけど、大抵はそこらへんが弱点だと思うよ』


「それって教えていいんですか?」


『まあ、ハクならいいかなって。それに、多少であれば、そんなの関係なく叩き潰せるし』


 なんか、凄く重要なことを教えてくれたような気がするけど、いつの間にそんなに信頼を得ていたんだろうか。

 確かに、クイーンを打倒するために、異世界の神様の一部を吸収するように言ったりと、協力的になりつつはあったけど。

 何となく、疑問に思いながらも、弱点に関しては有用な情報には違いないので、心の内に留めておくことにした。

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