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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十四章:一夜奪還編
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第六百六十八話:泉の捜索

「……なるほど、話はわかりました」


 ソフィーさんにもした説明を、ここでもすると、教皇は静かに頷いた。

 教会にて、創造神様の威光を轟かせ、人々を正気に戻す。

 他の国だったら、そんな頻繁に現れていたら、偽物を疑われるだろうけど、この国においては、それがまかり通る。

 誰だって、深く信仰している神様が目の前に現れたら、ひれ伏すしかないと思うしね。

 まあ、私は前世の関係上、一人の神様だけを深く信仰するってことはあまりないのだけど。


「すぐに通達を出しましょう。異端審問官にも、不用意に裁きを下さないように呼び掛けます」


「ありがとうございます」


「教会の方は、神官達も異端者となっている可能性はありますが、祈りの時間を待てば、その御姿を大勢の人に見せることは可能かと存じます」


 連絡に関しては、通信魔道具を用いて、各地の町と連携して即座に行ってくれるらしい。

 まあ、それでも数日は要することになりそうだけど、こちらもやるべきことがあるし、多少のロスは問題ない。

 問題は、これでちゃんと元に戻るのかどうかと、戻った後の対処だね。

 創造神様の姿を見れば、信仰の対象を思い出して、元に戻るというのは、理屈は理解できるけど、私で本当にできるのかという話。

 まあ、ウルさんやノームさんも大丈夫と言ってくれたし、姿だけならほぼ同じだから、大丈夫だとは思うけど、これで戻らなかったら、かなり面倒なことになる。

 最悪、攻撃される可能性もあるわけだし、その時に、いかに穏便に対処できるかどうかも鍵になってきそうだよね。

 でも、現状はこれが最も有効的な方法であるのは間違いない。

 私も覚悟を決めて、創造神様を演じよう。


「それと、黒き聖水と呼ばれる、黒い液体に関しては、見つけても絶対に手を触れないように。ましてや、飲もうなんて考えちゃだめですよ」


「承知しております。しかし、まさか飲んだだけで異端の神を信仰してしまうようなものがあるとは、異端の神は、とことん卑劣な存在ですな」


「それは、泉で採取されるもののようですので、黒い泉を見つけたら、教えてくれると嬉しいです」


「わかりました。発見次第、報告させるようにしましょう」


 さて、後は、各地に連絡が届くまで、少し待機かな。

 いや、待機と言っても、泉と、グラス本体を探す必要があるから、留まっているわけではないけども。

 ただ、泉はともかく、グラスの方は、ちょっと心配ではあるんだよね。

 なにせ、相手は創造神様に匹敵するほどの力を持っているらしいし、下手に見つけて、そのまま戦闘になろうものなら、勝ち目はない。

 勝ち目を作るためには、信仰を削ぎ、力を奪う必要があるけれど、それをするためには少し時間を置く必要がある。

 積極的に探したいのは山々だけど、あんまり急ぎすぎると、いらぬ被害が出てしまいかねないというのが難しいところだね。


「ソフィーさん、私達は、これから泉の捜索をしたいと思います。これを渡しておくので、準備ができたら知らせてくださいますか?」


 そう言って、私は通信魔道具を手渡す。

 この通信魔道具は、聖教勇者連盟が作った特別製なので、距離の問題はない。

 ソフィーさんは、一瞬目を見開いたかと思うと、跪いて恭しくそれを受け取った。

 そんな仰々しくならなくてもいいと思うんだけど……。


「承知しました。こちらからも、捜索隊を派遣することはできると思いますが、いかがしますか?」


「いえ、相手は見るだけでも発狂してしまうほどの存在です。危険を考えても、こちらで対処します」


「かしこまりました。ハク様、そしてお付きの方々も、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 ソフィーさんを始め、会議室にいる多くの人々の視線を感じながら、部屋を出る。

 それにしても、信仰の力って凄いんだね。

 まあ、気持ちはわからないでもないんだけど、創造神様の姿を真似ているだけの私をあれだけ敬ってくれるとなると、ちょっと罪悪感も生まれてくる。

 一応、これは創造神様を始めとした神様の決定であって、正式なものだから、騙しているわけではないんだけど、それでも心は少し痛い。

 早いところ、終わらせて帰りたいものだ。


「それで、探すと言っても、どこを探すの?」


「それなんだけどね、ある程度絞り込んでみたよ」


 教皇庁を後にし、探しに行くぞというタイミングになったので、まずは場所を把握することにする。

 ソフィーさんの話では、例の信仰が広まっているのは、末端の村が始まりだと言っていた。

 つまり、皇都から見て、かなり辺境にある場所が始まりってことだ。

 実際、ここに来る途中でも、なにやら妙な気配は感じていたので、その近くにあるのは間違いないだろう。

 だから、そこを重点的に探せば、すぐに見つかるはずである。


「なるほどね。見つけたらどうするの?」


「一番いいのは破壊だけど、下手に手を出すと、本体が出てくる可能性があるんだよね……」


 妙な性質を持っているとは言っても、液体なわけだから、高温に晒されれば蒸発すると思う。

 そうでなくても、何らかの方法で破壊してしまえば、もう二度と利用されることはないだろう。

 ただ、泉の水は、元はグラスの体液なのだという。つまり、長時間その場に本体がいたということだ。

 グラスがどういう性質を持っているかはよくわからないけど、もし、泉を住処のように利用しているのだとしたら、下手に近づくのは危険。

 せめて、万全の準備を整えてからでないと、逃げることすら難しいだろう。

 だから、理想は破壊だけど、差し当たっての目標は、遠目で確認するくらいでいい。

 準備ができ次第、そこに向かい、あわよくば本体をおびき出して倒すというのが、一番丸いだろうね。


「じゃあ、ひとまず確認するだけだな」


「うん」


 当初は、手分けして探す予定だったんだけど、本体を探すならともかく、泉を探すだけなら、その必要はなさそうだと今は感じている。

 というのも、ある程度の目星がついたからだ。

 ソフィーさんの情報だけなら、まだ範囲が広かったと思うけど、道中で妙な気配を感じたというのが大きい。

 恐らく、異世界の神様の一部を取り込んだことで、そのあたりにも敏感になっているんだろう。

 泉も、言うなればグラスの一部ということだろうしね。

 連絡が完了するまで時間もあるし、集中的に探してみて、見つからなかったらその時考えるでいいと思う。

 臨機応変が大事だね。


「それじゃあ、さっそく向かいましょうか」


「まずは町の外に出ないとね」


 移動はエルの背に乗っていくことにする。

 開幕で崖に連れていかれたせいもあって、町の外も全く人目がないわけではなさそうだけど、まあ、隠密魔法をかければ大丈夫だろう。

 竜の姿になったエルの背に乗り込んで、さっそく辺りをつけた場所へと向かう。

 さて、すぐに見つかってくれるといいけど。

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