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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十四章:一夜奪還編
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第六百六十七話:創造神様の威光

 ひとまず、大まかな作戦は決まった。

 教会の協力の取り付けや、眷属化を解除した後の人々の収容場所など、協力してくれる部分は大体決まったと言っていいだろう。

 一応、グラス及び黒き泉を探すという目的もあるが、これに関しては、こちらで行いたいと考えている。

 グラス本人を目の当たりにすれば、大抵の人は発狂することになるだろうし、泉の方に関しても、下手に触れたら眷属化のリスクがある以上、信用のある人達で固めたい。

 その点では、お兄ちゃん達は信用度で言えば身内だし、ルディの姿を見て多少なりとも耐性がついているだろうから、発狂の可能性も低い。

 そう言う意味でも、身内で固めた方がいい訳だね。


「作戦はわかりました。後は、これをお父様、教皇に伝えて、会議で決定されれば、協力は得られると思います」


「ありがとうございます。ですが、なるべく早くしてもらいたいのですが……」


「承知しております。我々としても、今が最大の国難、いえ、世界の危機だということは理解しています。ですから、ハク様に、一つお願いをしていただいてもよろしいでしょうか?」


「お願い?」


 ダラス聖国では、教皇、もしくは枢機卿に意見が通された場合、主要な人物が集まって会議を行い、それによって結果の良し悪しが出るらしい。

 会議に出席するのは、教皇本人を始め、枢機卿や騎士隊長クラスの人物。

 意見が重要であればあるほど会議は慎重に行われ、長い時では、一か月かかっても決まらない時もあるという。

 しかし、そんな時間を費やしていては、どうなるかわからない。

 クイーンだって、そんな長くは待ってくれないだろうし、急ぐに越したことはないだろう。

 そこで、私の出番だ。

 会議を重ねた後、最終的な判断を下すのは教皇となっているが、それよりも上の人物からの要請があれば、会議などしなくても、即座に決まることになる。

 教皇より上の人物とは誰かと言われたら、それは創造神様に他ならない。

 国教である創造神様が直々にお願いをすれば、どんなことでも即座に通る。

 もちろん、普通はそんなことは起こらない。創造神様が、わざわざ会議の場に降りてくるなんてことはないのだから。

 しかし、今は私がいる。創造神様の姿を真似ることができる、私が。

 本物ではないにせよ、創造神様の機転によって、私は分体神ということになっているし、私が神様の威光を振りまきながら登場すれば、意見はすぐに通るだろう。

 ちょっと強引ではあるけど、早めに結論を出してもらうにはこれしかない。


「いかがでしょう?」


「わかりました。出ましょう」


「ありがとうございます。ハク様を山車に使うようで申し訳ありませんが、これも国を救うため。どうか、よろしくお願いします」


 さて、どうやら早速創造神様の姿を借りる必要が出てきたようだ。

 一応、訓練の時にもやってみたけど、あの姿で大丈夫だろうか?

 創造神様の本来の姿を完璧に真似れるわけではないから、もし本物を見たことがあると言われたら、ちょっと妙なことになりそうだけど、あくまで分体神ということになっているから、多少違っても許されるだろうか。


「それでは、さっそく向かいましょう。ついてきてください」


 ソフィーさんは、すぐに立ちあがり、部屋を出ていく。

 会議って、そんなすんなり始められるものなのかと思ったけど、どうやら今は、元々対策のために、集まって会議をしている状況なんだとか。

 連日集まっているものだから、意見も煮詰まっていて、どうしようもできない現状。

 そんな場所に、創造神様が現れたら、さぞ勇気を貰うことができるだろうと、画策している様子である。

 私としては、そんな煮詰まった会議場にいきなり入って大丈夫かなと思わなくもないけど、まあ、やるしかない。

 しばらくして、とある部屋へと辿り着く。

 扉には、会議中の立て札と、見張りらしき騎士が二人。

 突如としてやってきた私達を見て、騎士は少しびっくりした様子だったけど、ソフィーさんの姿を見て、すぐに表情を戻した。


「ソフィーです。少し入らせてもらいますね」


「ソフィー様、今は会議中でございます。巫女と言えど、重要な会議に水を差すのはいかがなものかと」


「その会議に光明をもたらす者を連れてきたのです。通しなさい」


「……わかりました。お通りください」


 見張りの騎士は、少し納得できなさそうな顔をしながらも、道を開けた。

 ソフィーさんは、私達に向かって目配せをした後、扉を開く。

 部屋の中は、薄暗かった。

 窓を閉め切っていて、ろうそくの明かりがゆらゆらと揺らめいている。

 部屋の中央には、円形に椅子が並べられており、それぞれに人が座っていた。


「何事か。今は会議中であるぞ」


「ソフィーです。神託について、重要なお方をお連れしました」


「なに?」


 一番奥の椅子に座っている男性が、立ち上がる。

 服の意匠からして、あれが教皇かな?

 他の人達も、訝し気な視線でこちらを見ている。

 ソフィーさんは、ちらっと私の方を見た。

 ここからは、私が話すとしよう。


「創造神様より派遣されてまいりました、分体神のハクと申します。此度は、この国が抱える問題を解決すべく、作戦を考えてまいりました」


「ハク……確かに、ソフィーの聞いた神託では、ハクという創造神様の分体神が現れると言っていたな。そなたが、そうだと言うのか?」


「その通り。ですが、ただ言うだけでは信じてもらえないでしょう。ですので、少しだけ、真の姿を見せたいと思います」


 そう言って、私はソフィーさんに少し離れるように言う。

 言葉だけで信じてもらえれば楽だけど、今後のことを考えると、一応ここでも姿を見せておいた方がいいのは確かだからね。

 万が一にも、この人達も眷属化していたら、大変なことになるし。

 というわけで、さっそく変身だ。


『リク、頼みますよ』


『おっけー』


 私は、竜珠の力を解放し、姿を変える。

 ベースとなるのは、いつもの竜神モードの姿と同じだが、創造神様の姿に近づくように、鱗は透明に近くなり、体内からは光が溢れ、全体がシルエットしか見えないようになる。

 後光を纏って現れるのは、創造神様の姿を似せた竜の姿だ。


「なんと……神託は誠であったか……」


「これが、真の姿……なんと神々しい……」


 教皇を始め、ソフィーさんや、他の椅子に座っていた人達も、皆私の姿に釘付けである。

 ちょっと緊張したけど、どうやらちゃんと私のことを創造神様だと認識してくれたようだ。

 一呼吸置いた後、私は元の姿に戻る。

 場は、静寂に包まれた。


「……これで、信じてくださいますか?」


「も、もちろんですとも、ハク様。わずかでも、御身のことを疑った私を、どうか許していただきたい」


 そう言って、平伏する人々。

 ちょっとやり過ぎた感じがしないでもないけど、後々のことを考えれば、これがベストだと信じたい。

 私は、少しやりにくさを感じながらも、作戦について、話すことにした。

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