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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十三章:思考する結晶編
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第六百二十九話:一夜の適性

 一通り試してみたけど、一夜ひよなが使えたのは、最初のウォーターボールくらいなものだった。

 元々、人には適正というものがあって、適性を持っていない魔法を発動させるのはなかなかに困難という性質がある。

 恐らく、一夜ひよなは水魔法に適性があったということだろう。威力は全然ないけど、一発で成功させたのは、そこらへんが関係していそうである。

 もうちょっと魔力が増えたら、私みたいにいろんな属性を使えるようになるかもしれないけど、まあ、そこまでする必要はないかな。

 同じように、私が作ったオリジナル魔法も使うのは難しいと思う。

 初級魔法程度なら、改良を重ねれば、ほぼ魔力を消費せずに放つことができるけど、オリジナルとなると、どうあがいても魔法陣が複雑になるからね。

 一応、何重にも魔法陣を繋げれば、できる可能性もあるけど、複雑すぎて覚えるのは不可能だろう。


[魔法が使えたのは嬉しいけど、思ったよりも使える種類は限られるんだね]


[普通はいくつも属性を扱うことはできないからね。後できる可能性があるとしたら、身体強化魔法くらい?]


[ああ、いつもハク兄がやってる奴? どうやるの?]


[ええとね……]


 私は、身体強化魔法について説明する。

 身体強化魔法は、一時的に体の一部を強化することができるという魔法だ。

 例えば、腕を強化すれば今まで持てなかったような重いものが持ちあげられるようになったり、足を強化すれば足が速くなったりする。

 ただ、一般的に、これは一時的なものであり、長時間持続させることはできない。

 私は、色々改良して、長時間使えるようにしたけどね。

 魔術師のような、日常的に魔法に触れていない一般人だとしても、身体強化魔法は使えるという人は多い。

 これがないと、仕事がままならないって人も多いし、割と重要な魔法である。


[ふむふむ、なるほど。つまり、ハク兄は規格外ってこと?]


[一般人と比べたらそうだろうね。これも消費魔力は少ないし、使えるとは思うけど]


[やってみる]


 一夜ひよなは、私に言われた通りに魔法を発動させようと試みる。

 おもむろに、助走をつけると、その勢いのままジャンプした。

 どうやら足に身体強化魔法をかけたようだ。足が速くなる他にも、ジャンプ力も上がるはずだから、確かめるにはちょうどいいかもしれない。

 普段なら、一メートルも飛べないであろうジャンプだけど、今回はかなり高く飛びあがり、家の屋根を跳び越す程だった。


[わわわっ……!]


[よっと、大丈夫?]


 思ったより飛んだことに驚いたのか、空中でバランスを崩して落ちてきたので、さっとキャッチする。

 この様子を見ると、魔法はきちんと発動しているようだ。

 いや、むしろ効果が大きすぎるかな?

 確かに、ジャンプ力も上がるとは言ったけど、それでもせいぜい三メートル程度。熟練者になれば、もっと飛べる人もいるだろうけど、魔法を初めて使うような素人がやるにしては、飛び過ぎである。

 もしかして、身体強化魔法の才能でもあるのかな?


[わぁ、びっくりした。ハク兄、ありがとね]


[どういたしまして。それより、ちゃんと発動できたみたいだね]


[うん! あんなに飛ぶとは思ってなかったけど]


[私もあんなに飛ぶとは思ってなかったよ]


 これは、少し検証してみる必要があるかもしれない。

 私は、一夜ひよなに、今度は腕を強化するように指示を出す。

 そして、適当な石ころを【ストレージ】から取り出し、握りつぶすように言った。

 本来なら、常人が石を握りつぶすなんて無理だと思うけど、一夜ひよなは、軽く握っただけで石を粉々に砕いてしまった。

 やはり、普通の身体強化魔法よりも威力が高い気がする。

 身体強化魔法が得意って人はあんまり見たことがないけど、一夜ひよなも面白い適性があったものである。


[やっぱり、身体強化魔法の適性が高いみたいだね]


[それって凄いことなの?]


[凄いと思うよ。身体強化魔法を使いこなす人は多いけど、ここまでのはなかなか見ないしね]


[そっか。なんか嬉しいな]


 嬉しそうに笑顔を見せる一夜ひよなだったが、次の瞬間、ふらりと体が揺れた。

 近くにいたルディがとっさに支えたので倒れることはなかったけど、これはどうやら、魔法を使いすぎたらしい。

 元々、一夜ひよなの魔力はかなり少ない方だった。であるならこれだけ魔法を使えば魔力が尽きるのも当然である。


[あれ、なんか急にクラッと来た……]


[魔力が減ってきたからだね。ごめん、調子に乗って使わせすぎちゃった]


 魔力が減ると、体に倦怠感を覚えるようになる。そして、完全に魔力がなくなれば、気絶する。

 基本的には、魔力の使い過ぎは体に毒とされているけど、一応、魔力を一度空にしてから回復すると、魔力の総量が増えるという性質はある。

 魔力の総量は生まれた時点で頭打ちになるというのが常識だけど、そうやって訓練を重ねれば、魔力を増やすことも可能ってわけだね。

 後は、手っ取り早く魔力を上げたいなら、神星樹の実を食べるという手もあるけど、あれは一般的ではないし、かなり辛いからおすすめはしない。

 でも、この場合、一夜ひよなの魔力ってどういう扱いなんだろう?

 元々、一夜ひよなはこの世界の住人ではなく、魔力なんて欠片も持っていなかった。

 それが、こちらの世界に来たことによって魔力に触れ、魔力を受け入れる器ができたんだと思うけど、この場合、魔力の総量は頭打ちになるんだろうか?

 もしそうだとしたら、一夜ひよなはこちらの世界の一般人と比べても、相当少ない魔力しか持てないということになるんだけど。

 これから成長するのか、それとも頭打ちなのか、ちょっとわからないね。


[部屋に戻って休もう。少し休めば、魔力も回復すると思うから]


[うん、わかった……]


 私は、一夜ひよなを連れて部屋へと戻る。

 ルディから一夜ひよなを受け取ろうとしたら、全然手放す気がなくてちょっとイラッとしたけど、まあ、一応味方だし、あまり目くじら立てないようにしないと。


[ごめん、ちょっと寝るね……]


 部屋のベッドに一夜ひよなを寝かせると、すぐに寝息を立て始めた。

 魔力切れによる倦怠感は、なかなかぬぐえないからね。

 休めば回復も早いけど、気合で乗り切るにはなかなか厳しいハードルである。

 私は、一夜ひよなの寝顔を見ながら、魔法の扱いについて考える。

 自衛を考えるなら、多少の魔法は使えた方がいいのは確かだけど、あんまり無理をさせ過ぎて気絶してしまうのはもっと問題である。

 特に、一夜ひよなの魔力量はかなり少ないし、とっさのことでは魔法を制御するのも難しいだろうから、扱いは慎重にしなければならない。

 自衛として使うのは考えない方がいいかもしれないね。あくまで、平時の際にちょっと役に立つものくらいの認識でいいかもしれない。

 一夜ひよなが起きたら、伝えておかないとね。

 そんなことを考えながら、部屋の椅子に腰を掛けた。

 感想ありがとうございます。

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ワンチャン0からのスタートだから超回復でグンと伸びるかも?
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