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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十二章:対談企画編
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第六百十五話:三期生のユニット名

 そうして時間は過ぎ、そろそろ帰る時間となった。

 葵ちゃんは、今にも泣きそうな目でこちらを見ていたけど、いつもと違って、引き留めてくるようなことはない。

 ちゃんと、こちらの事情もわかってくれているようだった。


「それじゃあ、葵ちゃん、またね」


「またすぐ来てくれる……?」


「はい、時間ができたらなるべく行くようにしますよ」


「待ってる……」


 控えめに手を振る葵ちゃんに手を振り返し、玄関へと出る。

 以前と同じように、信之さんと黒服さん達が見送りに来てくれたけど、今回は釘を刺しておいたので尾行はないだろう。

 信之さんは、私と話したい様子だったけど、私も予定があるのでこれ以上は滞在できない。

 必要なら、電話でやり取りすることもできるし、今はいいだろう。


「……なあ、お前は一体何者なんだ?」


 信之さんは、小さくそう呟いた。

 信之さんからすると、ゲームセンターで偶然出会っただけの子供だった私が、尾行に気づいたり、それについて釘を刺したりしてくる光景は、少し異様に映ったことだろう。

 仮に、すでに成人しているとわかっていたとしても、その疑念は拭えない。

 まあ、それにわざわざ答えてあげる義理もないけど、葵ちゃんとは今後も仲良くしていきたいし、信之さんとも敵対したいわけじゃない。

 ただ、私のことをどう伝えるのかは難しいところだ。

 真実を話すわけにはいかないし、何かいい落としどころはないだろうか。


「いずれお話しますよ。今日のところは、これで」


「……わかった。後で時間を作ってもらうぞ」


「ええ。それでは、失礼します」


 少し険しい顔をしている信之さんに背を向けて、家を出る。

 ちゃんと尾行もしていないようだし、とりあえずは信用してもらえたのかな。

 得体が知れなさ過ぎて手を引いただけかもしれないけど。


「後でうまい言い訳を考えておかないと」


 そんなことを考えつつ、一夜ひよなのマンションへと転移で帰る。

 帰ってくると、一夜ひよながリビングでテレビを見ていた。


「あ、ハク兄、おかえりー」


「ただいま。何か面白いニュースでもやってた?」


「ううん、別に。ただの暇つぶしだからね」


 どちらかというと、ソファでくつろいでいるのが本当の目的で、テレビをつけていたのはただの偶然のようだ。

 この時間帯だと、何をやっているんだろうと思って覗いてみると、ニュース番組をやっていた。

 以前お母さんも言っていたけど、大抵はスポーツ選手の活躍だったり、政治家のスキャンダルだったりが主らしい、

 私にとっては、どちらも興味ないので、すぐに視線を外し、通話アプリの確認をした。


「時間に変更はなしだね」


 いつも通り、三期生全員のコラボという形になっているけど、あちらも準備はすでにできているらしい。

 後は、予定の時刻になるまで待機していればいいだけだね。

 SNSですでに告知はしているけど、久しぶりのコラボということで、盛り上がっていた。

 さて、時間までにお風呂とか入っておかないとね。


「……よし、準備できたかな」


 そうして、やるべきことを済ませて、予定の時刻。

 配信部屋で待機していると、アケミさんから確認の連絡と共に、通話がかかってきた。


『もしもーし、聞こえる?』


「聞こえてますよ。そちらは大丈夫ですか?」


『ばっちり! いやぁ、こうしてまたコラボできて嬉しいね!』


 少しテンション高めの声。

 一応、前回来た時には、先輩達とのコラボの橋渡し役として、結構な頻度でコラボしていたんだけど、あれは緊張が勝って純粋に楽しめなかったってことなのかな。

 純粋に三期生だけでコラボするのはしばらくぶりだし、そう言う意味でも楽しみだったのかもしれない。


『もしもし、お久しぶりです』


『ハクちゃーん、会いたかったよー』


 アケミさんが通話をかけたのを皮切りに、他の二人の通話に入ってくる。

 一応、連絡を受けて元気なことは知っていたけど、こうして声を聞くと安心できるね。


『準備は大丈夫?』


「はい、問題ありません」


『じゃあ、さっそく始めるねー』


 軽く雑談をした後、時間も迫ってきたので配信の準備をする。

 配信の枠を開くと、すでに何人もの人達が待機していた。

 一度深呼吸をし、呼吸を整えた後、アケミさんの合図ととともにスタートする。


「皆さんこんばんはー! 三期生コラボ、始まるよー!」


(コメント)

・きちゃー!

・きちゃー!

・三期生コラボだ!

・待ってたぜー

・みんないるー!


 アケミさんの合図とともに、全員が登場する。

 おなじみの自己紹介をして、場が落ち着いたところで、さっそく本題に入ることにした。


「今日はこのメンバーで雑談配信をしていこうと思うよ!」


「それにしても、そろそろこの集まりにも名前が必要なんじゃないかのぅ」


「確かに、ずっと三期生コラボだと面白みに欠けますね、のじゃ」


(コメント)

・確かに

・間違ってはいないけど、安直な感じ

・何かユニット名みたいなのが欲しいな

・共通点とかないか?

・みんなファンタジーのお馴染みって言う感じだけど、それは箱全体がそうだしなぁ


「ハクちゃん、何か案はない?」


「私? うーん、そんな急に言われても……」


 まあ、確かに名前が欲しいというのはそうなんだけど、いきなり言われても答えられるわけもない。

 ファンタジー以外で共通点を上げるとしたら、いつも雑談しているくらいだけど、それは他の人達もやっていることだしね。

 というか、いつも私の話ばっかりしていて、雑談にしても偏っている感じがするし。

 それが特徴かと言われたらそうかもしれないけど、それだと私の名前がつきそうだからあんまり言いたくない。


「みんなの頭文字を取ってー、とかー?」


「それだと、A、S、C、H、ですかね?  あまり思いつきませんね、のじゃ」


「『妖精の庭』、とかどう? 勇者も魔王も、分け隔てなく話すことができる秘密の庭みたいな」


「ああ、それならいいかもしれませんね、のじゃ」


(コメント)

・妖精ってことは、ハクちゃんが関係してるのかな

・フェアリーガーデンとかでもいいかも

・それっぽくなった

・でも雑談する場としては妖精の庭のままでいいんじゃない?

・『Vファンタジー』らしい

・ハクちゃんに逆らえなさそうな場所

・みんなハクちゃん推しだから大丈夫よ


「よし、じゃあこれで決まり! こうしてみんなで雑談できる場所、妖精の庭!」


「おー!」


 いい感じに決まったと、みんな拍手を送る。

 なんか、結局私が関係してそうな名前になったのはちょっとあれだけど、まあ、これくらいなら何とかなるだろう。

 私は、楽しそうな三人を温かく見守りつつ、合せて拍手を送るのだった。

 感想ありがとうございます。

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