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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十二章:対談企画編
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第六百七話:放っておけない子

 今日何をするべきかを考えたんだけど、ひとまず、葵ちゃんに会いに行くことにした。

 葵ちゃんは、ローリスさんのお父さんである正則さんと敵対関係にある家の子供で、親同士の関係はそこまでよくない。

 しかし、以前にゲームセンターでクレーンゲームでぬいぐるみを取ってあげたことをきっかけに懐かれてしまい、事あるごとに遊びに来てほしいと催促されているのである。

 スマホには、着信履歴が無数にあり、恐らくだけど、私があちらの世界に行っている間にも、たくさん連絡しているんだと思う。

 まあ、その分は、世界を跨いでいるからなのか、履歴には残っていないんだけどね。

 葵ちゃんはかなり強引で、私が家に行くといつも泊って行って欲しいと泣きついてくるんだけど、今回は明日に予定があるから泊るわけにはいかない。

 タイミング的には少し悪いかもしれないけど、この調子だといつまで経っても会いに行けない気がしたので、ちょっとした賭けである。

 まあ、親である信之さんはその辺に理解がある人ではあるから、大丈夫だとは思うけどね。

 ひとまず、連絡もなしに訪問するのもどうかと思うので、連絡をしようと思う。

 登録した連絡先に電話すると、すぐにかかった。


『もしもし、ハク様でしょうか?』


「はい、そうです。そちら、信之さんの携帯だと思うのですが、取り次いでいただけますか?」


『少々お待ちください』


 電話に出たのは、何度か聞いたことがある男性である。

 どうやら、信之さんは自分のスマホを付き人に預けているらしく、連絡するといつもこの人が出てくる。

 まあ、信之さんも大きな会社を持っているっぽいし、付き人がいるのはおかしくない。

 そもそも、本業はヤのつく人だからね。

 しばらく待っていると、信之さんが出てきた。


『おお、ハクか。久しぶりだな』


「ご無沙汰しております。少し時間が空いたので、葵ちゃんに会いに行こうと思ったのですが、ご都合の方は大丈夫ですか?」


『いつでも遊びに来ていいって言っただろ。もちろん大歓迎だ』


 葵ちゃんのこととなると、信之さんも上機嫌そうである。

 迎えをよこしてくれると言っていたが、すでに近くにいるので不要だと伝えておいた。

 別に、まだ家にいるから近くではないけど、転移を使えばいつでも行けるからね。

 毎度、サングラスをかけた黒服達が、黒塗りのバンに私を連れ込むさまは、誘拐にしか見えないし、単純に面倒というのもある。

 今後も、転移で行けるならその方がいいだろう。


「それじゃあ、私は出かけてくるから」


「うん、行ってらっしゃい」


 電話を切り、出かけることを一夜ひよなに伝えると、さっそく転移で移動する。

 相変わらず、立派な庭がある豪邸の前に着くと、門番さんに事情を伝えた。

 まあ、私のことはすでに何度も聞かされているのか、大体は顔パスなんだけどね。

 中に通され、応接室で待っていると、信之さんと共に葵ちゃんがやってきた。

 私の姿を見た瞬間、タックルするように突撃してきたので、軽く身体強化魔法をかけ、倒れないように注意しておく。

 無口だけど、元気だけはあるよね。


「おお、ハク、よく来てくれたな」


「お邪魔しています。突然の訪問で、ご迷惑ではなかったでしょうか?」


「おいおい、そんなの気にしなくていいって言ってるだろ?」


「それが礼儀かと思いまして」


 信之さんなら、多分本当に遠慮なしにやってきても笑って許してくれそうだけど、こう言うのはしっかりしておいた方がいいと思う。

 まあ、友達同士で、気を許せる関係であるって言うなら話は別だけど、私が友達なのはあくまで葵ちゃんであって、信之さんではないからね。

 友達の家に行った時に、その親にまで気安く接する人はいないだろう。むしろ、お邪魔させてもらってるって言う遠慮を持った方が、印象はいいはずである。

 信之さんがどこまで私のことを把握しているかは知らないけど、今後も対応は変わらないだろうね。


「ハク、あそぼ」


「はい、何して遊びますか?」


「ゲーム、新しいの買ってもらった」


「わかりました。では、行きましょうか」


 葵ちゃんに急かされて、葵ちゃんの部屋へと移動する。

 信之さんは、楽しんで来いと言って、その場を去っていった。

 さて、今日はちゃんと帰してくれるといいけど。


「これ、面白い奴」


「これは、パーティゲームですか」


 赤い帽子の配管工が主役のパーティゲーム。

 昔はこれでよく遊んでいた気がするけど、今でも新作が出ているらしい。

 基本的にはすごろく形式で、途中でミニゲームを遊びながら、スターを集めるというのが遊び方だけど、毎度、ミニゲームの種類が多いのが特徴な気がする。

 新作だけあって、画質も綺麗だし、背景の細かな部分もよく作り込まれている。

 なんだかわくわくしてきたかも。

 お互いにキャラを選んで、さっそくプレイする。

 本当は、もうちょっと人数がいた方がいいのかもしれないけど、流石に集められないかな。

 黒服さんとかに頼めばやってくれそうな気がしないでもないけど、機嫌損ねたら首が飛びそうだし、流石にやってはくれないかな。

 まあ、足りない部分はCPUがいるし、問題はないけどね。


「今日は負けない」


「私も負けませんよ」


 一応、私は手加減しているつもりである。

 身体強化魔法も使わないし、その上で全力で勝ちに行くようなこともしていない。

 それでも、それなりの確率で勝ってしまうから、葵ちゃんとしてはリベンジしたいらしい。

 わざとでも負けた方がいいのかなと思わなくもないけど、流石に、露骨にやろうとすれば気づかれてしまうだろうし、その方が失礼になるだろう。

 だから、葵ちゃんにはぜひともプレイスキルを上げてもらいたい。

 しばらくゲームに興じ、時は過ぎていく。

 葵ちゃんも、最初こそ楽しそうにプレイしていたけど、だんだん眠くなってきたのか、うとうとする場面が多くなってきた。

 そろそろやめるかどうか聞いても、まだやると言うので続けているけど、眠いなら寝た方がいいと思うけどなぁ。


「んっ……」


 そのうち、意識も朦朧としてきたのか、コントローラーが手から離れる。

 これ以上は流石に無理そうだ。

 私は、軽く睡眠魔法をかけ、葵ちゃんを眠らせる。

 ベッドに寝かせ、毛布を掛け、部屋の片づけをすることにした。

 別に、片付けはしなくてもいい気はするけど、気になっちゃったからね。

 もういい時間だし、これが終わったら帰らせてもらおうかな。


「すいません、信之さんはいますか?」


「これはハク様、どうなさいましたか?」


「葵ちゃんが寝てしまったので、そろそろ帰ろうかと思いまして」


「そうでしたか。わかりました、今呼んでまいります」


 部屋の外には、黒服さんが待機していた。

 警備の一環なんだろうけど、なんだか監禁されてる感が否めない。

 ほんとに、あの服装やめさせた方がいいと思うんだけどね。仮に真っ当な仕事をしているのだとしても、印象が悪すぎる。

 そんなことを思いつつ、信之さんが来るのを待つのだった。

 感想ありがとうございます。

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