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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十二章:対談企画編
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第六百二話:学力対決

 唐突に始まった学力対決。ヒカリ先輩はにっこにこだけど、少し心配ではある。

 なにせ、長らく勉強なんてしていないからね。

 魔法についての研究なら、日々やってはいるけれど、国語やら数学やらの学問については、前世での学校で、あるいは、学園に通っていた時に少し学んだくらいで、今は完全に離れてしまっている。

 もちろん、得た知識がなくなるわけではないから、基本的なことはわかっているけど、それでも心配は拭えない。

 特に、ルイン先輩はめちゃくちゃ優等生って感じだし、勝負になるんだろうか?


「今回は、こちらでいくつかの問題を用意させていただきました! お二人にはそれに回答してもらって、正解数を競います!」


「出題のジャンルは何ですか?」


「基本的な教科ですよ。いずれも、義務教育を受けていればどこかで習った内容のはずです!」


「義務教育……」


 ふと思ったんだけど、私って、義務教育を受けたことになるのか?

 いや、私は確かに学校に通っていたし、義務教育はしっかり受けたと言える自信があるけど、設定的にね?

 私は、海外から来たことになってる。それも、割と危険な地域の出だ。

 直接的に、そう話したことはない気もするけど、設定という名の事実に被せる形で、こちらの世界でも受け入れられるように、ある程度考えた事実という名の設定では、そう言うことになってたはずである。

 果たして、そんな地域に住んでいた子供が、義務教育を受ける機会などあるのだろうか?

 もちろん、国によって形は多少変わるとは思うけど、義務教育というものはあるかもしれない。しかし、受けていない可能性も十分にある。

 この場合、私はどちらとして設定を貫いた方がいいんだろうか?

 私としては、今更義務教育を受けていないというのもあれなので、受けていたことにしたい気もするが。


「ハクさん?」


「……いえ、大丈夫です」


 まあ、受けていようが受けていまいが、問題にきちんと答えられるかどうかはわからないし、気にしなくてもいいか。

 訝し気な視線を向けてくるルイン先輩に軽く返し、回答の準備をする。

 せめて、そんなに難しくない問題であるといいんだけど。


「では、さっそく初めて行きましょう! 最初の出題は、こちら!」


 テンション高めのヒカリ先輩の言葉とともに画面に表示されたのは、テスト用紙のようなプリントだった。

 そこには、簡単な計算問題がいくつか書かれており、全部で十問ある。

 これは、思ったよりも楽勝か?

 流石に、ルートとか出てきたら少し頭を悩ませるかもしれないけど、これでも計算は得意な方である。

 いつの間にか用意されたフリップに回答を書き連ねていき、やがて手を止める。

 ルイン先輩も、書き終わったのか、静かに回答の時を待っていた。


「出揃ったようですね。それでは、見ていきましょう!」


 配信画面に、お互いの回答が表示される。

 見た限り、回答はすべて同じなようだ。


「お二人とも、全問正解です! いやぁ、流石ですねぇ」


(コメント)

・流石委員長やでぇ

・まあ、これくらいは簡単だろ

・ハクちゃんもちゃんと全問正解なの偉い

・くそ、こんな簡単な問題で……

・掛け算と足し算の順番とかたまによくわからなくなるよな

・それは義務教育の敗北では


「流石ですね、ハクさん。これくらいは朝飯前ですか?」


「まあ、計算ならこれくらいは。先輩も全問正解ですね」


「もう何度も引き合いに出されてますからね。ここで失敗するのはブランディング的にまずいのです」


「ああ、なるほど……」


 元々、ルイン先輩はドラゴンで、傍若無人にふるまうラスボスのような設定だったが、今はしっかり者の委員長としてのイメージが先行している。

 当然ながら、頭もいいと言われており、そんな中で、この程度の簡単な計算問題でミスをするようでは、そのイメージに傷がつきかねない。

 まあ、それはそれでギャップがあると思われるかもしれないけど、ルイン先輩としてはどうにかそのイメージを保ちたいようだった。

 勝手につけられたイメージだけど、リスナーさんの想いには応えたいってことなんだろうね。


「簡単すぎたようなので、お次はもう少し難易度を上げていきましょう! 次の出題は、こちら!」


 続いての出題は、漢字について。

 同じみのテスト用紙には、読み仮名がいくつか書かれており、それを漢字で書いてくださいと言うことらしい。

 漢字か、それは少し自信がない。

 日頃から、よく使っている漢字ならば、すらすら書けると思うけど、別に漢字がわからなくても、今の時代は少し調べれば簡単にわかる。

 だから、あえて漢字を覚えておく必要はないし、それを当たり前のように感じていた。

 特に、私はすでにあちらの世界での生活が長い。

 当然ながら、あちらの世界に漢字なんてないし、目に触れる機会なんて微塵もない。

 もはや何十年単位で昔に習ったものを思い起こして書くのは、流石にちょっと分が悪かった。


「回答が出揃ったようですね。それでは、見ていきましょう!」


 そうして表示された回答は、先ほどと違って、多少の違いがあった。

 やはり、うろ覚えの知識では完璧に回答するのは難しかったかな。

 答え合わせをすると、やはり私の答えはいくつか間違っていた。

 なんか、ちょっとショックである。


「今回は委員長に軍配が上がりました! ハクちゃんは漢字苦手な方ですか?」


「苦手というほどではないですが、異世界生活が長いもので、色々とうろ覚えで……」


「ああ、なるほど。確かにそれなら仕方ないですね」


(コメント)

・なんたって700年以上も異世界にいたわけだしな

・むしろ良く書けてる方では?

・俺、一問しか合ってなかった

・小学生の時こんな漢字習ったっけ?

・全問正解の委員長は流石って感じ

・完全無欠なハクちゃんにも弱点ってあったんだね


 ちょいちょいコメントでも見受けられたけど、私のリスナーさんは、私のことを完璧超人か何かと勘違いしている節がある。

 確かに、RTAとかでとんでもない集中力を発揮したり、人間離れした部分は見せているけど、だからと言って何でもかんでもできるわけではないんだけどな。

 ルイン先輩もそうだけど、リスナーさんからつけられたイメージというのは、なるべく守っていきたい。私も、頑張って勉強すべきなんだろうか?

 でも、逆にヒカリ先輩のリスナーさん達は、私のことを受け入れてくれて、こちらの方がいいって言ってくれている人もいる。

 ギャップって奴なんだろうか。少しは欠点があった方が、人間味があるかな?

 ちょっと判断しかねるけど、あまり無理に設定に忠実になる必要はないし、私は私のあるがままにやっていけばいい気がする。

 無理に完璧を目指そうとしたって、どこかでぼろが出てしまうだろうしね。


「では、この調子で行きましょう! 次の出題は、こちら!」


 コメントの流れを追いつつ、学力対決は続いていく。

 なんか、長らく経験していなかったことを体験できて、ちょっと新鮮な気分になった。

 私がいかにこちらの世界のことを忘れているかもわかるし、ちょうどいい機会かもしれない。

 私は、精一杯問題に立ち向かっていくのだった。

 感想ありがとうございます。

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今後学び直ししたりもするんかねぇ
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