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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十一章:開拓村編
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第五百八十七話:遅い増援

 昨日は実質徹夜したということもあって、一度仮眠を取り、朝。

 なにやら外が騒がしいことに気づいて、何だろうと思い外に出る。

 悩みの種だった魔物が討伐されたということもあって、みんな興奮していた様子だったけど、そのせいだろうか。

 ひとまず、テルミーさんに話を聞こうと思い、町を探していると、町の入り口に、見慣れぬ集団がいることに気が付いた。


「お、先生、起きたか」


「はい、おはようございます。何の騒ぎですか?」


「見ての通り、ようやく追加が来たらしいですぜ」


「ああ」


 元々、私の仕事は、冒険者候補となる人達の育成であった。

 しかし、それは私だけの仕事ではなく、他の国からも、有名な冒険者を呼び寄せて、指導を行ってもらうように調整していたのである。

 ただ、なぜか私が同行することになったこのグループは、私がいればどうとでもなるだろという謎の信頼感によって、他の冒険者が来るのを待つことなく開拓に行かされ、一人で指導することになっていたのだ。

 担当であるフィズさんは、すぐに話をつけて追加を送り込むという話をしていたけど、それがようやく来たってことらしい。

 よく見れば、フィズさん自身の姿もある。

 一緒に来るとは言っていたけど、まさか本当に来るとは思わなかった。


「おお、ハク様! しばらく姿を見れなくて大変寂しい思いをしておりました! 息災のようで何よりです!」


「そちらも元気そうですね。そちらが例の冒険者さん達ですか?」


「はい! 皆、各国でAランクやBランクという実力者ばかりです!」


 そう言って、フィズさんは他の冒険者達に私のことを紹介する。

 どう見ても子供の姿に困惑する人も多数いたが、ハクという名前だけは知っている人も多いのか、ああ、あの……と珍しいものを見るような目に変わっていった。

 それにしても、今更増援か。いや、タイミング的にはちょうどよかったのかな?

 あの魔物を倒す際に、この冒険者達がいたら、一緒に討伐に行くことになっていただろうし、いくらAランク冒険者が揃っているとは言っても、怪我人の一人や二人は出ていてもおかしくはなかっただろう。

 一応、死んでなければ治すこともできるけど、これほどスムーズに進まなかったと思うと、到着が遅れてくれて感謝してもいいくらいである。

 それに、ここで到着したということは、私の仕事もだいぶ楽になる。

 元々、冒険者候補の育成が仕事なのに、開拓の仕事までやらされていたからね。人手が増えれば、それだけ私がやらなければならない仕事も減る。

 冒険者には申し訳ないが、私もそろそろ帰りたいので、ありがたい戦力だ。


「ハク様、早馬で報告がありましたが、なにやら厄介な魔物が出たとか?」


「ああ、はい。それに関してはもう討伐したので、気にしなくていいかと」


「なんと! 流石はハク様! 仕事が早いですな!」


「それより、この町のことについて説明しますね」


「おっと、そうでした。エルフが放棄した町という話は聞いておりますが、結構綺麗な状態ですね」


 とりあえず、ずっと町の入り口にいるのもなんだということで、町を案内することにする。

 町に関しては、すでにある程度整備して、使える家は修繕し、道もある程度は草むしりをしている。

 設備も、機材こそあまり残っていなかったが、スペースは十分使える状態だったし、後は機材を持って来ればすぐにでも使える状態だ。

 畑も、放置されていた割には綺麗で、ちょっと耕せばすぐにでも使えそうだったため、今は今後のことを考えてすでに整備させている状態である。

 町で暮らすための基盤は粗方揃っている。問題があるとすれば、この町に来るためのアクセスの悪さだが、それは今後ゆっくり開拓していけばいいだろう。

 町を発展させることに必要なリソースをそのまま割けるのだから、割と早いだろうしね。


「ここが、精霊が住まう教会です」


「おお、精霊! 確か、ハク様は精霊に愛される冒険者でもあるとか。ハク様がいれば、姿を現してくれますかな?」


「頼めば姿くらいは見せてくれると思いますよ。友好的なので」


「それは何よりです。しかし、精霊をこの目で見るのは初めてでして、一体どんな姿なのか……」


「なら、さっそく見て見ましょうか」


 最後に教会へとやって来て、エウリラさんにフィズさん達を紹介する。

 私が呼び掛けると、石の中にエウリラさんの姿が現れた。

 冒険者達を含め、皆驚いた様子だったけど、エウリラさんは動じることなく、私に話を振ってきた。


『新しい住人かしら?』


「いえ、彼らは冒険者で、この町の守りを担う人々を育成する人達です」


『なるほどね。初めまして、私はエウリラ。雨の精霊よ』


「……はっ! は、初めまして、麗しき精霊よ。私はフィズ、こうしてお目にかかれたことを光栄に思いまする!」


 フィズさんは、初めて出会った精霊に対して、敬意を表したようだ。

 冒険者にしか興味ないと思っていたけど、流石にエルフが信仰する精霊に対して、不敬な態度は取れないよね。

 まあ、精霊について詳しく知っている人なんてそうそういないけど、冒険者達も、フィズさんに習って丁寧な口調で挨拶をする。

 エウリラさんも、その態度に満足したのか、特に不機嫌になることもなく、挨拶を終えた。


「エウリラさん、しばらくの間滞在すると思いますが、よろしくお願いしますね」


『ええ』


 エウリラさんへの挨拶を終えた後、最後に向かうのは、今回の仕事のメインである、冒険者候補達の下である。

 エウリラさんの雨の影響なのか、今や冒険者候補達はかなりの筋力をつけている。

 後は、きちんと剣術をものにすれば、戦うことも難しくはないだろう。

 この辺りにいる魔物は強いけど、そこらへんは経験を積んでもらって、頑張るしかない。

 さっそく、訓練場で模擬戦をしてもらったけど、冒険者達も、ここまでとは思っていなかったのか、少しびっくりしていた様子である。

 まあ、全くの素人と聞かされていたらしいからね。

 実際には、傭兵経験があったり、キャンプ中に訓練もしていたようだから、全くの素人ではないと思うけど、それでも力が弱かったのは事実だし、割と使い物になりそうなことに驚いていたのかもしれない。


「流石はハク様! ハク様にかかれば、素人も短期間でこの通り!」


「みんなの頑張りと、エウリラさんのおかげですよ」


「それでも、ハク様は素晴らしい! 叶うなら、このままこの国に居ついてほしいくらいです!」


「いや、流石にそれはちょっと……」


 私とて家族がいるし、この国に対しては別に思い入れもないから、滞在する理由が薄すぎる。

 今回は、王様の頼みということもあって引き受けたけど、成長するなら自力でやって欲しい。

 私がいなくても、これだけ高名な冒険者が揃っているなら、十分可能だと思うしね。

 興奮した様子のフィズさんに呆れつつ、今後のことも考慮して、これまでのことを話していく。

 さて、育成が終わり、帰れるのはいつになることやら。

 開拓村がどう発展していくのか楽しみな反面、長らく帰れていないことに不安を覚えた。

 感想ありがとうございます。


 今回で第二部第二十一章は終了です。数話の幕間を挟んだ後、第二十二章に続きます。

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― 新着の感想 ―
定期的に雨降らして貰うだけで成長するし水に困らないしですごく便利な町よな
成長バフなんてかなりチートなのでは。 精神と時の部屋じゃなくて名前忘れたけど、百年間神修行したときに使えれば、もっと最強になれたかも?
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