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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十一章:開拓村編
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第五百七十七話:移動計画

 拠点に戻り、テルミーさんに報告する。

 当初、雨の原因を探りに先行部隊として出ていたはずなのに、まさかの町を見つけ、しかもそこを再利用できるかもしれないと聞かされて、テルミーさんも度肝を抜かれたようで、ぽかんと口を開けていた。

 まあ、未開拓の地域に、まさか町が、しかも放棄されたものがあるだなんて思わないよね。

 雨の原因に関しても、エウリラさんの仕業ということがわかったし、後は魔物を排除して、町を再利用できれば、雨問題も解決しそうである。

 テルミーさんは、開拓には十数年の時間がかかると思っていたようだけど、それが一気に進みそうで困惑していたが、逆にこれはチャンスでもある。

 ここを諦めるくらいなら、その魔物を退治した方がいいという考えになったようだ。


「話はわかりました。んじゃあ、まずはその町に移動ですかい?」


「はい。行けそうですか?」


「うーん、話を聞く限り、一人ですいすい進んで一日かからないくらいの距離でしょ? 道もないし、正確に案内するには先生の協力が必要だ。となると、魔物の脅威や迷子防止のためにも、少数のグループを複数作って、順番に移動していくことになりそうだが……」


 テルミーさんは、色々と計算しているようだった。

 確かに、現状は道もないし、そもそも結界もあるから、私が案内しないことには誰も辿り着けない。

 どうやら、結界はエウリラさんが張っているようだけど、あれがないと町が魔物に襲われる可能性もあるし、解除するのは憚られる。

 まあ、今後外部との取引をしようってなると、人避けの結界は邪魔になりそうだけど、その辺は後でゆっくり考えればいいだろう。

 私が引率するにしても、全員一気に運べば見きれないし、テルミーさんの計算は正しい。

 いっそのこと、上級魔法でも使って森をぶち抜く手もあるけど、流石にそれはまずいだろう。いろんな意味で。

 まだ食料も届いていないようだし、移動するにしても、それらが届いてからってことになるかな。


「先生が嘘を吐くとも思わねぇが、できれば町の存在は確認しておきたい。何人か連れて行って、その町を見せてくれないか?」


「わかりました。それなら、案内しましょう」


 確かに、私が化かされていたとかで町の存在そのものがなかったら終わりだからね。

 リスクヘッジという意味では、複数の部隊に分かれて移動することになるから、仮に一番手が迷子になって帰ってこなかったとしても、被害は少ないかもしれないが、そう言うことではないだろう。

 慎重なのはいいことだ。

 そう言うわけで、さっそく何人かを案内することになった。

 雨はすでに止んでいる。私が約束したおかげもあって、少しは気が晴れたようだった。

 だけど、そうなると、移動にあまり時間はかけていられない。その魔物が、いつ襲い掛かってくるかもわからないからね。

 少し急ぎ目で森を突破し、町を確認してもらう。

 町は、私の幻なんかではなく、きちんと存在していた。

 せっかくだから、エウリラさんに会わせようと思ったんだけど、そう言えば普通の人は精霊が見えないのだった。

 なんか、私が精霊が見えることに関しては誰も突っ込んでこないんだけど、嘘だと思われているのか、私ならありえると思われているのか、どっちなんだろうか。

 まあ、町の存在自体は確認できたので、仮に精霊がいなくても問題はない。

 できれば、一部だけでもいいから見えてほしいけどね。もし、移住ができた暁には、エウリラさんに頼んで、姿を見せてもらうのもありかもしれない。


「おお、戻ったか。町はどうだった?」


「ばっちり確認したぜ! かなり大きな町だった」


「ほう、そりゃ期待が持てるな」


 確認も済んだので、町で一泊してから拠点へと戻る。

 連れて行った人達がみんなに報告すると、みんなは期待に満ちた目で盛り上がっていた。

 開拓作業をしていると、先が見えない。

 特に、この辺りは雨が多く、作業がちっとも進まない日も多かった。

 そんな中で、まさかの放棄された町の発見である。

 今まで作業していた分は無駄になるかもしれないが、労せずしてそこそこ状態の整った町が手に入ると考えれば、今までの苦労も報われるというものだ。

 もちろん、きちんと修繕しないとまずいかもしれないけど、拠点にするには、今のままでも十分使えるくらいには建物がたくさんある。

 テンションが上がるのも仕方ないよね。


「編成は整えておいた。10回に分けて進もうと思う」


 少数のグループに分かれて進むという話だったけど、結局約十人ずつに分かれて進むことにしたらしい。

 つまり、約十往復。結構しんどい作業になりそうだ。

 進む間は食料調達も難しいし、途中で町からの食料が届かない限りは、現地調達しながら進むことになりそうである。

 特に、拠点と町で分かれる関係上、食料は分散しないといけないからね。そこらへんも注意しないといけない。


「ひとまず、食料が届くのを待ってからだな」


「そうですね」


 まあ、焦る必要はない。

 エウリラさんには、人の移動が完了するまでは、また雨を降らせてほしいと言っておいた。

 以前は厄介だと思っていた雨だけど、それが魔物の脅威を退けてくれていると考えると、あった方が安心できる。

 まあ、他の魔物は普通に来るから、全くの安全とは言えないんだけどね。むしろ、雨の音のせいで接近に気づくのが遅れる可能性もあるから、危険性は増すかもしれない。

 でも、件の魔物がどれほど強力かわからないし、普通の魔物なら、私がついていれば、探知魔法と合わせて後れを取ることは少ない。

 どちらにしろ、私が案内しないと始まらないし、特に問題はないだろう。


「そういえば、これって報告した方がいいですよね?」


「まあ、だろうな。町からの支援がある以上、ここの拠点を放棄するわけにもいかないし、簡単でもいいから、早めに道は作りたいところだな」


 今のところ、開拓団の食料事情は近隣の町に依存している。

 いずれは、畑を作ったり、狩りをしたりで賄う必要はあるけれど、それが落ち着くまでは、国の支援を頼りにするしかないのだ。

 あの廃都は、住みやすさという意味ではいいところだけど、いかんせんアクセスが悪すぎる。というか、人避けの結界を解除しないと、普通の人は来られない。

 食料を運んでくる人に、わざわざ森の中を通ってあの町まで来てくださいと言うわけにもいかないし、受け取りはこの拠点で行うことになると思う。

 まあ、今まで作業してきた分が無駄にはならないのはいいんじゃないかな。

 交易するにしても、中継地点は必要になるし。


「移動が終わったら、いよいよ魔物探しだね」


 果たして、どんな魔物なのか。私一人でも狩れるだろうか?

 わずかな不安を抱えつつ、ひとまず食料が来るのを待つのだった。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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道の整備が急がれる
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