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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十一章:開拓村編
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第五百七十一話:冒険者の心得

 それからしばらくして、雨が止んだ。

 結構な日数降り続けていたけど、レポートによると、元々この辺りは雨が降りやすいらしい。

 なぜそうなっているのかはわからないけど、滞在している間、結構な頻度で雨が降り、調査に行けない日も多かったようだ。

 この辺りが水分が多い土壌なのは、そう言う理由もあるのかな?

 何か原因がありそうだけど、今のところはわからないし、これから調査するしかないね。


「さて、それでは、教えていきますよ」


「「「おー!」」」


 とりあえず、拠点を作らなければならないわけだけど、私の仕事はそれではない。

 なので、ひとまず当初の予定通り、冒険者の育成を開始することにした。

 冒険者候補となるのは、三十人ほど。年齢も性別もばらばらで、正直不安しかないけど、今のところ、私を子供と思って侮ってくるような人はいない。

 テルミーさんが言い聞かせてくれたというのもあるけど、元から、いい人ばかりだったからね。

 そう言う意味では、不安の種は一つ少ない状態である。


「まず聞きたいのですが、皆さんは戦闘の経験はおありですか?」


 私の質問に、大半の人はあると答えた。

 元々、開拓団として集まった人達は、国の外からやってきた人々である。

 移民と言えば聞こえはいいけど、その大半は、元居た場所で居場所を失った人達だ。

 その人の性格に難があったのか、それとも単純に力がなかったのか、とにかく元の場所でやっていけなかった人達が、今回の開拓プロジェクトを聞きつけて、やってきたわけである。

 そう言った人達は、まともな職に就けることも少なく、唯一できるのは、傭兵や冒険者となって肉体で稼ぐこと。

 まあ、中にはそういうこと関係なく、新たな土地で暮らしたいと思って参加した人もいるとは思うけど、そう言う理由もあって、戦闘経験がある人は多いわけだ。

 元々冒険者の人もいるなら、そんなに教えなくてもいいかもしれないけど、ほとんどは新米のFランク冒険者ばかり。

 ここに新たに作られる町を守っていくためには、それ相応の力が必要になるし、やはり、最初から教えるべきだろう。


「ありがとうございます。それでは、まずは冒険者とは何か、心得を教えていきましょうね」


 冒険者には、いくつかの掟というか、暗黙のルールがある。

 例えば、冒険者同士で深く詮索しないとか、殺し合いをしてはならないとかね。

 他にも、依頼を受けた際のルールや他の冒険者とバッティングしてしまった時の対処など、教えることは多い。

 まあ、心得なんて、当たり前のことを言っているだけだから、常識のある人だったら、自然に守れているものだけどね。

 こういうのがあるのは、たまに現れる常識外れの奴らへの牽制の意味もある。

 以前に聞いた話だと、とある商人が、採取依頼を出し、冒険者がそれを受けた。しかし、冒険者が望みの品を持ってきたにもかかわらず、商人は提示していた報酬を払わず、何かと理由をつけて値切ろうとしてきた。

 それ自体は、商人ならたまにあることだし、まだましなんだけど、その商人は、冒険者が頷かないとわかると、他の冒険者を雇って、殺し合わせようとした。最初に依頼を受けた冒険者を、交渉に応じない悪人と偽ってね。

 幸い、その冒険者は、どちらも冒険者のルールを理解していて、冒険者同士で殺し合いをしてはならないことをわかっていたから、すぐに異変に気付き、商人をギルドへ告発した。

 結果として、商人はギルドから出禁を食らい、さらに、その噂が広まって取引先からも悪評を流され、その後、取引が続けられなくなった商人は夜逃げしたという話である。

 常識として、自分の意にそわないからと言って、殺し合わせる奴はいない。しかも、自分の手を汚さず、何も知らない冒険者同士を争わせようとした。

 これは冒険者に対する冒涜であり、ギルドとしては、絶対に許しておけない事件だ。

 だからこそ、すべてのギルドで出禁になったのは当然の措置である。

 このように、時折普通の人ならわかりそうなことをあえて破る奴がいるから、トラブルを避ける意味も込めて、心得的なものがあるのだ。

 まあ、これに関してはギルドの規定としてもあるものだけどね。


「さて、次は戦闘に関してです。皆さんは、戦闘の経験がある人が多いようですが、どんな武器を使ってきましたか?」


 心得はさておき、次は戦い方についてだ。

 冒険者は、何でも屋という側面もあるため、子供でもなることができ、必ずしも戦闘力がある必要はないけど、今回は、未開の地の町を守るという大役があるため、戦闘力は必須である。

 幸い、戦闘経験はあるようだけど、どこまで戦えるのか。


「俺は剣だな」


「俺も」


「俺もだ」


「皆さん剣を良く使っているんですね」


 様々な武器種を使われると、私も教えられないと思っていたんだけど、どうやら、大半の人は剣を使っていたようだ。

 次点で多いのがこん棒と槍。魔法が使える人は一人もいなかった。

 まあ、剣はオーソドックスな武器だし、武器屋に行ったら、店の隅に樽の中に大量に並べられていることもある。

 安価で手に入れられて、それなりに扱いやすいとなれば、使い手が多いのも納得か。

 こん棒や槍は、即席で入手しやすいという利点もある。

 究極的なことを言えば、その辺の棒を拾って、先を鋭くしてやれば、槍の完成だからね。

 こん棒なら、ある程度丈夫なら、削る必要すらないわけだし。

 やっぱり、安いというのは重要なことなのかもしれない。特に、ここにいる人達は、お金も少なかっただろうしね。


「それなら、剣について、重点的に教えましょうか」


 剣ならば、私も多少の心得がある。

 お姉ちゃんとサクさん仕込みの剣技だけど、魔物にもある程度は通用するだろう。

 とは言っても、これは剣の扱いというよりは、相手を観察する観察眼の方が重要な気がするけどね。

 いや、それも含めて剣技なのかな? ある程度応用は利くというだけで。


「あ、その前に、皆さん武器は持っていますか?」


「それなら大丈夫だ。国が支給してくれたのがある」


 どうやら、今回の開拓に際して、国側から剣の支給があったらしい。

 恐らくは量産品だろうけど、それでもそこら辺の安物よりは丈夫なそれなりの剣のようだ。

 これだけの剣を用意するとなると、それなりにかかりそうだけど、やっぱり支援は手厚いようである。

 できれば予備も用意してほしかったけど、まあ、人数分あるだけましか。

 あんまり多くても、一回じゃ運びきれなかっただろうしね。

 とにかく、まずは戦闘の技術を教えていくとしよう。

 私は、エルに頼んで実演して見せながら、教え込んでいく。

 さて、使い物になるのはいつになるだろうか。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
人材の育成は時間がかかるからなぁ
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