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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十一章:開拓村編
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第五百七十話:開拓予定地へ

 この大所帯での旅。最初はどうなることかと思ったが、案外何とか進めていた。

 徒歩旅ということもあって、移動は遅いけど、その分着実に進めている。

 この調子なら、特に問題もなく辿り着くことができるだろう。


「この町を過ぎたら、後は開拓予定地までまっすぐですか」


「そうだな」


 開拓予定地まで残り数日の距離。

 ここまでくると、もう街道もないけど、方角を頼りに進んでいく。

 話によれば、第一陣の人達はそろそろ撤収する予定らしい。

 元々、調査が目的だったので、それが終わればもう用はないからね。

 後の調査に関しても、今回のメンバーに調査要員が含まれているし、第一陣の役目は終わったと言っていいようだ。

 まあ、人手は欲しいから、できれば残って欲しいとは思うけどね。


「先生は、Bランクの魔物でも倒せるんですかい?」


「ずっと思ってましたけど、その先生って何です?」


「そりゃ、冒険者の先生として呼ばれたんでしょ? なら、そう呼ぶのは間違ってないと思いますがね」


「まあ、それもそうですね」


 先生なんて、学園で教師をした時も言われたことなかったから、少し新鮮である。

 いや、道場では呼ばれていたこともあったから、そう言う意味では呼ばれ慣れているのかな?

 まあ、どっちでもいいや。


「それで、どうなんです?」


「一応、狩れますよ。公式記録だと、Aランクの魔物も狩ったことはあります」


「ほう、そりゃ凄い」


 その気になれば、Sランクだろうが何だろうが狩れるとは思うけど、表向きだと、一応Aランクが限界ということになっている。

 まあ、Aランクなんてそうそういないし、それが狩れるだけでも、Bランク冒険者の実力じゃないとは思うけどね。

 私が未だにBランクなのは、昇格依頼を断り続けているから。

 Bランク以上になるためには、特別な依頼をクリアしなくてはいけないのだけど、逆に言えば、それをクリアしなければ、いつまでも昇格することはない。

 私が冒険者になったのは、当初はお金を稼ぐためであって、そう言う意味では昇格した方が稼ぎは増えるけど、色々やらかしたせいもあって、有名税が鬱陶しくなってきた。

 元々、Bランクの時点でも相当に稼げていたし、今に至ってはホムラのおかげもあってお金は十分すぎるほど手に入れることができている。

 だから、あえて昇格する意味がないんだよね。


「なら安心だわね。魔物の脅威を退けない限り、開拓は進まない。俺達も頑張りますが、先生が頼りだ」


「後々は自分達だけで狩れるようになってほしいですけどね。そうなれるように、しっかり教えるつもりではありますよ」


 開拓予定地に着いたら、さっそく教える予定ではあるけど、そもそもどういう風に教えようかな。

 冒険者の心得的なものは教えられると思うけど、みんなどういう戦い方をするのかをまだ把握していない。

 何人かは、それとなく教えてもらったけど、全員となるとね。

 私の得意武器は魔法である。だから、魔法に関しては教えられるけど、それ以外となると、剣がそれなりに使えるくらい。

 他の武器を使う人がいたらどうしようかな。


「おーい、テルミー!」


「お、どうした?」


「天候が悪くなりそうだ。少し急いだほうがいいんじゃないか?」


「ん? あー、確かに少し曇ってるわな」


 空を見上げてみると、確かに少し曇り始めている。

 ここまで全然雨に降られなかったけど、流石にこれだけの時間が経過すれば、そう言う日もあるだろう。

 道中で降られると面倒だから、さっさと目的地に辿り着きたいところである。


「よし、少しペースを上げるぞ」


「おうよ」


 テルミーさんの指示で、移動を少し早める。

 このまま、降られる前に辿り着けるといいのだけど。


 そうして数日が経過した。

 降られる前に辿り着くという思いは届かず、結局降られてしまったけど、どうにか目的地に着くことには成功した。

 開拓予定地には、いくつかのテントが張られており、第一陣の人達が到着した私達を出迎えてくれる。

 規模としては結構小規模なようだけど、これだけの人数で調査していたのか。

 護衛も少ないし、よく無事に調査できたものである。


「おお、ようやく来てくれたか」


「無事到着しましたよっと。そっちの状況は?」


「調査自体は順調に進んだ。レポートにまとめているから、後で目を通しておいて欲しい」


 未だに雨が降りしきる中、ようやく辿り着いたということもあって、少し休憩しながら、話を聞く。

 町として機能するために必要な川もちゃんとあったようなので、住むこと自体は可能そうだけど、やはり、ネックになるのは魔物の存在だ。

 この辺りは、まだ森の浅瀬であり、調査の手も、そこまで奥までは伸ばしていないらしい。

 魔物は、人のいない未開拓地域だと強力になりやすい。特に、魔力が濃い場所はより一層強力になる。

 今回は、魔力に関してはそこまで濃いわけではないようだけど、それでも、今まで誰も近寄らなかった場所だから、浅瀬でもBランク級の魔物が目撃されている。

 もし、もっと奥地に行ったなら、Aランクとかも出てくるかもしれない。

 ここに町を作るなら、それらを排除することは確実に必要であり、かなりの手間がかかることになるけど、果たしてどうなるだろうか。

 狩れと言われたら狩るけど、ちょっと心配だね。


「予定通り、我々は引継ぎをした後、撤収する。後のことは任せたぞ」


「了解。ま、何とかして見せますよ」


 少し休憩した後、新たにテントを張っていく。

 相変わらず雨が降り続けていることもあって、地面がぐちゃぐちゃになっており、テントを張るにも結構苦労するけど、流石に、第一陣が張ったテントだけでは、この人数は収容しきれない。

 いずれは家も建てなくてはいけないし、先は長そうだね。


「ふぅ、最初っから雨とは幸先が悪いが、大丈夫かねぇ」


 少し苦戦しながらも、ある程度テントを張り終え、一息つく。

 雨はしばらくやみそうにない。開拓をするにしても、もうしばらく時間がかかりそうだ。


「確か、レポートがあるって言ってましたよね。私にも読ませてもらっていいですか?」


「もちろん。俺もまだ詳しくは見てないんで、一緒に見ましょうや」


 指揮所となっていたテントに入り、第一陣がまとめたというレポートを読む。

 魔物に関しては、聞かされたとおりだけど、他にも色々とまとめられているようだ。

 調査はきちんとされていたらしい。頼もしい限りである。

 レポートによると、森を少し進んだところに川があるらしい。

 この川は、近くの町で使われている川とはまた別ものらしく、水源の調査に関しては、森の奥地にあるようで、断念しているようだ。

 しかし、水質に問題はなく、飲み水としても使えるくらいには澄んでいるらしい。

 植生に関しては、多くのキノコが見つかったようだ。

 元々、水分が多い土壌なのか、湿気が高く、キノコが育ちやすいようである。

 森の倒木を見かけたら、キノコが鈴なりになっているのも珍しくないようで、うまく栽培できれば、主要産業にもできそうだ。

 まあ、食べられるキノコばかりではないようだから、それらを採取して食料にするのはちょっと難しいかもしれないけどね。

 言っていた岩場に関しては、ところどころに岩がむき出しになっている場所があるらしく、採掘に適しているとのこと。

 ただ、明らかに何者かがいた形跡があったようで、もしかしたら魔物の縄張りかもしれないらしい。

 石も家を建てるのに必要だから、できれば確保したいけど、どうなるかな。

 その後も、レポートを読み進めながら、今後の開拓計画を練る。

 まあ、私の仕事は冒険者の育成だけだから、あえて手助けする必要もないんだけどね。

 果たして、この先どうなるだろうか。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
やっぱり明らかに計画が早すぎる……
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