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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十一章:開拓村編
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第五百六十九話:歩き旅

 それからあっという間に時間は経ち、出発の日となった。

 この二日間、キャンプの人達とそれなりにコミュニケーションを取ってきたけど、そこまで悪い印象はない。

 みんな、私のことを気にかけてくれたし、気さくに話しかけてくれる人もたくさんいた。

 テルミーさんによると、最初は結構衝突もあったようなのだけど、国からの支援が厚く、キャンプ生活という不便な暮らしの中でも、十分な食事やお金などを手に入れることができたため、だんだん不満も減っていったようだ。

 まとめ役であるテルミーさんが優秀だったというのもあるかもしれない。

 元々は盗賊だったらしいのだけど、なんやかんやで釈放され、それからは真面目に生きてきたということらしい。

 元盗賊とは思えないほどしっかりしているし、読み書きも算術もできるから、細かなトラブルに対応することができる。

 ちょっと過去が気になるけど、このメンバーなら、まだ何とかなりそうだ。


「それでは、気を付けて行ってらっしゃいませ」


「はい。でも、なるべく早く他の冒険者も送ってくださいね」


「ええ、もちろん! 離れ離れになるのは寂しいですが、すぐに後を追いますので!」


 出発の日には、フィズさんとタグルさんが見送りに来てくれた。

 相変わらず、護衛をつける気はないようだけど、仕事をする気はあるようで、他の冒険者のことがまとまり次第、一緒に来ると言っていた。

 城勤めの文官がわざわざ未開拓の場所に行くのは相当危険な気もするけど、フィズさん自身、冒険者の活躍を間近で見たいというのもあるらしく、迷わず手を上げたらしい。

 目的が開拓が進むことではなく、冒険者の活躍を見たいなのが気になるけど、でも、直に来てくれるだけありがたいかもしれない。

 まあ、しばらくの間は私とエルだけで何とかしなくちゃいけないのは変わらないけどね。


「よーし、んじゃ出発だ」


 テルミーさんの合図によって、みんな出発する。

 今回、移動は徒歩になるらしい。

 一応、物資を運ぶための荷馬車はあるけど、流石にこの規模の人達を全員乗せるだけの馬車を用意するのは難しいらしく、基本的には歩き旅になるようだ。

 だったら分けて行けばいいのにと思ったけど、歩きでもそこまで遠くはないらしいので、だったら一気に運んだ方がいいと考えたらしい。

 まあ、確かにすでに開拓予定地には第一陣として向かっている人達がいるようだし、その人達を早く助けるという意味では、人手は重要かもしれない。

 どちらかというと、問題なのは、住居と食料な気がしないでもないけどね。

 人出が増えれば作業効率は上がるが、その分維持費がかかることになる。

 住む場所は当分テントで何とかするとしても、すぐ近くに王都という大きな町があった先程までとは違い、開拓予定地の食料は近くの町から供給する手はずとなっている。

 でも、近くと言っても馬車で数日の距離らしいし、これだけの規模の食料を用意する町側も大変だろう。

 いくら国からの支援があるにしてもね。

 本当に大丈夫かなぁ。やる気があるのはいいことだけど、あまりに急ぎすぎて失敗しなきゃいいんだけど……。


「さて、もう王都は見えないな。これでようやく気が抜ける」


 荷馬車を動かしていたテルミーさんは、そう言って脱力する。

 テルミーさんも、この人数のまとめ役という立場になって、結構気を使っていたようだ。

 特に、最初の頃はトラブルも絶えなかったようで、その度に仲裁をしていたようである。

 本当なら投げ出したかったけど、王都の近くということもあって、常にフィズさんに見張られていたということもあって、なかなか気が抜けなかったようで、ここにきてようやく監視の目がなくなったことで、少し気が楽になったようだ。

 まあ、期待されるとなかなか気を抜けないよね。

 期待される分には、いいことかもしれないけど、その期待に応えられなかった時、期待は失望に変わる。

 勝手に期待しておいて何様だと思うけど、期待されたからには、応え続けないと居場所がなくなるのも事実だ。

 テルミーさんも、そんな息苦しさを感じていたのかもしれない。

 そう考えると、後々フィズさんが開拓予定地に来るのはテルミーさんとしてはあまり歓迎できないことなのかな。


「おっと、こんな態度取ってたことはフィズさんには内緒にしといてくださいよ、先生」


「言いませんよ。私も気持ちはわかりますから」


 天気は快晴。雨の匂いも感じないし、しばらくはのんびりと進むことができそうである。

 開拓予定地までは、そう遠くはないとは言ったけど、それでも徒歩なら三週間くらいかかるらしい。

 道中、町はいくつかあるようだけど、この人数が泊れるほどの宿はないだろうから、基本的には野宿で過ごすことになる。

 そのあたりを考えても、やっぱり分けて運べばと思うけど、まあ、今更言っても仕方ない。


「そういえば、開拓予定地って、どんなところなんです?」


「ありゃ、フィズさんから聞いてないので?」


「はい。冒険者を育ててほしいとしか」


「あー、まあ、あの人冒険者にしか興味なさそうだしな」


 そう言って、テルミーさんは苦笑しながら軽く開拓予定地のことについて教えてくれた。

 ここ、トーラス王国は、国土の半分以上を森林地帯に覆われている。

 今回のプロジェクトは、そんな森林地帯の一部を切り開き、新たな町を作ろうという話だ。

 その場所はいくつか候補があるらしいが、今回このメンバーが担当するのは、国の東側。

 未だに未開拓の地域が多く、隣国との間はほとんどが未開拓だ。

 一応、現在は森を迂回するルートで取引がされているらしいのだけど、流石に時間がかかりすぎるため、森を突っ切る形で、新たなルートを確保したいということになったらしい。

 このルートが開拓されれば、隣国との貿易もスムーズになり、国の利益となる。

 今作ろうとしているのは、その中継地点となる町というわけだね。


「第一陣の調査では、水質の綺麗な川と、採石場に適した岩場が見つかってるらしい。魔物の分布に関しては、まだ調査中みたいだが、ランクとしては、すでにBランク相当も見つかってるらしいですぜ」


「その川とか岩場にも魔物は出現するんですか?」


「そりゃもちろん。だから、使うにしても安全を確保できないことにはどうしようもないみたいだな」


 現在は、まだ調査段階であり、森の端にテントを張っているだけみたいだけど、ここから森を切り開くとなれば、必ず魔物の目を引くことになる。

 Bランク相当って、本来なら結構強力な魔物で、町に攻められようものなら、その町は放棄する可能性もあるレベルのものである。

 まあ、一応Cランクの冒険者が何人も集まれば狩れるくらいだから、十分戦力があれば退けられるけど、これから冒険者を育てようって言うこのメンバーでは到底太刀打ちできないと思う。

 魔物さえどうにかできれば住めそうではあるとはいえ、ちゃんと開拓できるんだろうか。

 ちょっと不安に思いながらも、テルミーさんの話を聞くのだった。


 感想、誤字報告ありがとうございます。

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明らかに計画が悪すぎる……
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