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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十一章:開拓村編
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第五百六十五話:友好国からの依頼

 第二部第二十一章、開始です。

 季節は変わり、春。辺りもすっかり雪解けをして、暖かい風が吹いてきた頃。

 温泉も堪能し、疲れも癒えたことで、多少ましになったのか、少しはやる気が戻ってきた。

 やっぱり、気分転換って大事なのかもしれない。温泉も最高だったし、また行きたいところだ。

 シルヴィア達は、帰ってそうそう、あの村のことを観光本に載せるべく、行動を開始したようだ。

 すぐさま発行とまではいかないが、街道の修理もまだ進めている途中だろうし、そこまで急がなくても大丈夫だろう。

 他のみんなも、リラックスできたのか、かなり好評な様子で、またみんなで温泉に行きたいねと話していた。

 そんな思い出に浸りながら過ごしていたある日、私は、王様に呼ばれて、城を訪れていた。

 王様の方から私に頼み事をするのはそう珍しいことじゃない。

 今までにも、厄介な依頼を押し付けられることはよくあったし、今回もそんな感じだろうと行ってみたんだけど、そうしたら、今回はちょっと毛色の違う依頼だった。


「冒険者の育成、ですか?」


「うむ。相手方から、直接指名があってな」


 城の応接室で、王様はそう言って依頼の説明を始める。

 今回の依頼は、友好国の一つである、トーラス王国という場所からの依頼らしい。

 トーラス王国は、オルフェス王国に比べると領土が小さく、それ故に国力も低い。しかし、その理由の大半は、国の半分以上を占める、森林地帯に原因があるという。

 豊富な森林地帯があるおかげで、木材などの生産はかなり好調のようなのだけど、あまりに広すぎて、ただでさえ狭い領地がさらに小さくなっており、このままでは発展は難しいとされていた。

 そこで、広大な森林地帯を開拓し、新たに領土を広げるべく町を作ろうという計画が発足し、それに向けて国も多額の支援をしていたのだけど、ここで問題になったのは、町に置くギルドである。

 ギルドは、正確には国の機関ではないけれど、その町において、魔物の討伐から町のお手伝いまで何でもこなす便利屋という見方がされている。

 これは、ある程度大きな町にはなくてはならない存在であり、もしこれをギルドではなく、国が戦力を出して運用しようものなら、維持費がかかりすぎて、とてもじゃないけど町を存続させることができないのだとか。

 開拓しなければならない場所もたくさんあるし、町が増えればその分維持費も増える。

 それらすべてを賄うのは無理なので、やはりギルドは必要になるという。

 しかし、ギルドの支部を置くことはできても、肝心の冒険者がいない。

 ギルドが新たに作られる場合、そこに所属する冒険者はその町から選出される者だけど、新たに町を作る関係上、そもそも人が集まらない。

 だったら、どこか別の町から冒険者達に移籍してもらうという手もあるけど、未知の場所を開拓する関係上、ある程度実力のある冒険者が欲しい。

 しかし、そう言った冒険者は、今の場所ですでに安定した生活をできていることが多く、わざわざ移動するのは、拠点をころころ変える旅冒険者くらいなもの。

 条件として、その町のギルドに所属し、町を守って行って欲しいというものがあるので、旅冒険者では困ることを考えると、条件に会う人がかなり少ないのだ。

 そこで考えたのが、冒険者を一から育成するというもの。

 幸いにも、この開発事業のおかげで、外から入ってくる人も多くいるため、彼らを労働力として使おうという案が出ているらしい。

 だから、その一部を冒険者として訓練し、ギルドに所属させれば、問題を一気に解決できる。

 だが、育成するにしても、指導する役は必要なので、高名な冒険者を雇って、教えてもらいたい。

 そこで選ばれたのが、私というわけだ。


「話はわかりましたけど、なんで私なんですか?」


「ハクは有名だからな。高名な冒険者と聞いて、真っ先に思い浮かべられるほどには名が売れている」


 ただ単に、高名な冒険者というだけなら、他にもたくさんいるが、今回は、オルフェス王国ではかなり有名である私に白羽の矢が立ったというわけだ。

 私より、お兄ちゃんとかお姉ちゃんとかの方がよっぽど冒険者らしいと思うけど、まあ、有名なのは過去のやんちゃが原因なので仕方ない。


「どうだ、やってくれないか?」


「私は構いませんけど、いいんですか?」


 私は、過去の出来事を思い出して、少し苦笑する。

 というのも、私は過去に、学園で教師として生徒を指導する機会があった。

 その時は、張り切っていたけれど、結果的には、生徒の腕を切り飛ばしたり、色々とトラウマを与える結果を招いたことがある。

 もちろん、それを繰り返すつもりはないけれど、私は教えるのがそんなにうまくないというのは明らかだろう。

 今回は冒険者が相手だから、学園の生徒とはまた違うかもしれないけど、そんな私を選出していいんだろうか?


「相手たっての指名だからな。ハクさえよければ、ぜひともやってもらいたい」


「まあ、そう言うことならば」


 王様がそう言うなら、気にすることはないか。

 別に、また同じ過ちを繰り返すつもりはないし、仮に繰り返してしまったとしても、今回は別の国のお話だ。

 失敗しないに越したことはないが、まだ融通は利く方だと思う。

 まあ、あんまり失敗しすぎて、オルフェス王国の名声を下げるような真似はしたくないけど。


「感謝する。次の満月の日に、さっそく向かってくれると嬉しい」


「わかりました。準備しておきますね」


 それにしても、森の開拓か。随分と思い切ったことをしたものである。

 この世界において、未知の場所の開拓というのは、かなりリスクが高い。

 なにせ、魔物の存在があるからね。下手に藪を突けば、多大な犠牲が出る可能性がある。

 そのせいもあって、この世界では未開拓の地域というのはかなり多い。

 この大陸だけで見ても、半分くらいは未開拓なんじゃないだろうか。

 もちろん、危険だからと言って開拓を進めなければ、発展は見込めないし、元々領土が狭いというのなら、開拓して少しでも国力を上げようとするのは間違っていないけど、運が悪ければ、国が亡ぶ可能性すらあることだ。

 友好国という話だし、そんな未来は辿って欲しくない。


「次の満月って、いつだろう?」


「五日後くらいですね」


 私の疑問に、エルが答える。

 五日後、かなり早くない?

 あらかじめ相手から話が持ち込まれていたのだとしても、こちらが頷くかどうかはわかっていないはずだし、準備に色々時間がかかると思うんだけど。

 それとも、私が頷くことを前提に、あらかじめ準備を進められていたんだろうか。

 王様がそんなことするとも思えないけど……。


「まあ、いいや。準備だけしておこうね」


 準備と言っても、あちらで何をするのかわかってないから、結局【ストレージ】に適当に突っ込んでおくだけになるんだけど。

 果たして、冒険者候補となる人たちはどんな人達なんだろうか。

 少し楽しみにしながら、城を後にするのだった。

 感想ありがとうございます。

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