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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十章:辺境の雪祭り編
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第五百五十四話:見届けたい

「それはそうと、領主様への連絡はどうなりましたか?」


「それでしたら、すでに手紙を書き、届けさせました。早ければ、一週間もあれば届くでしょう」


「ああ、なるほど」


 てっきり、もう確認しているかと思ったんだけど、手紙でのやり取りなら、まだまだ時間はかかるか。

 いや、本来ならそれが当たり前だったんだよね。

 私達は、通信魔道具があるから、簡単にやり取りができるけど、通信魔道具って、本来は結構な高額なんだよね。

 いくら過去は観光業で稼いでいたとしても、そもそも緊急で連絡を回さなければいけないことは稀だし、維持費とかも考えると、普通は手紙でやり取りした方がましか。

 というか、仮に通信魔道具を持っていたとしても、領主と直接通信できるわけはないか。色々問題がありそうだし。


「領主様も、この村のことは大層気にかけてくださっておりました。だから、動いてはくれると思いますが……」


「まあ、それは待って見るしかないですね」


 すぐに届かない以上は、待つしかない。

 けど、一週間もかかるとなると、流石にそろそろ帰らなくてはならない。

 元々、取材のために、雪祭りの間だけ滞在する予定だったし、それもそろそろ終わるとなれば、滞在している理由もない。

 温泉にも入れたし、料理もおいしかったから、満喫自体はできているけど、すべてを解決しきる前に帰るというのも、なんだか後味が悪い。

 せめて、領主がどう動くのかを確認できればいいんだけど。


「もし、解決できるようなら、後ほど手紙を送らせていただきます。本当に、こんな村のために動いてくれて、ありがとうございました」


「いえいえ、それだけこの村の温泉が魅力的ってことですよ」


 その後、村長の家を後にし、宿へと戻ってきた。

 宿では、ユーリとカムイが広間でくつろいでいた。

 他のみんなはどこに行ったんだろう? シルヴィア達は見かけたけども。


「あ、ハク、お帰りなさい」


「ただいま。他のみんなは?」


「サリアさんは雪遊びに、ラルドさんとサフィさんは温泉だね」


「そっか。まあ、ずっと調査だけじゃ楽しくないもんね」


 と言っても、本格的に調査を始めたのは昨日だし、そこまで時間をロスしたというわけでもないのだが。

 二人は単にやることもないのでまったりしていたようだ。


「雪も降ってきたし、帰らなかったらどうしようかと思ってたわ」


「え、雪降ってた?」


「ええ。気づかなかった?」


 そう言われて、窓の外を見てみると、確かにちらほらと雪が舞っているのが目に入った。

 どうやら、村に帰ってきた後、少しずつ降り始めたらしい。

 大した量じゃないとはいえ、あとちょっと遅かったら、山の中で雪に降られてたことになるな。危ない危ない。


「調査はどうだった?」


「うん、それがね……」


 とりあえず、私も座り、山での出来事を話す。

 魔物と和解したことや、冒険者と戦ったこと、それに、魔物達と一緒に温泉に入ったこと。

 今思い返してみると、結構ぶっ飛んだ光景ばかりだな。

 魔物と仲良くできるって言うのは本当に稀だし、これはある意味革命的かもしれない。


「ハクがアリシアの従魔として戦った?」


「うん、成り行きでね」


「なにそれ羨ましい!」


「え?」


 なんだか、思わぬところに食いつかれた。

 私が竜神モードになれることは、カムイもユーリも知っている。だから、そう驚くことでもないと思うんだけど、やっぱり形態の問題だろうか。

 普段の竜神モードなら、確かに神様としての威厳のようなものも出ている気がするけど、リクにいじられた結果、それらが霧散して、魔物に近くなっていたっぽいし、想像とかけ離れているのかもしれない。

 いや、口で説明しただけだし、どういう想像をしているのかはわからないけども。

 それにしたって、羨ましいという感想が出るのはおかしいと思うのだが。


「ハクを従魔にできるって言うのは、謎の背徳感がありましたわ」


「ねぇ、何か従魔らしいことしたの?」


「なに、従魔らしいことって」


「頭を擦り付けてくれましたわ」


「はぁ!? ねぇ、ハク、私にもやらせて?」


「いやいや、なんでそんなに食いついてるの?」


 なんか、アリシアも勝ち誇ったような顔をしてマウント気味に喋ってるし、私に何を求めているんだ。

 カムイは興奮しているし、ユーリはユーリでなんか怪しげな笑みを浮かべているのが怖い。

 竜珠の内で、リクがなにやらざわついているのも感じられるし、私これから何されるの? やめてね?


「ハク、今度愛でさせなさい」


「竜姿が見たいならいつでも見せるけど、ペットじゃないからね?」


「それはわかってるわよ。だからこそ、よ」


 なんか、普段は親友として接している相手が、自分に従属しているということに背徳感があるらしい。

 まあ、なんとなくわかるようなわからないような……。

 あんまりつけ上がらせると妙なこと言いかねないし、これに関してはある程度距離を置いておこう。うん。

 それから、外で取材していたシルヴィア達や温泉に入ってたお兄ちゃん達も戻って来て、改めて報告をした。

 お兄ちゃんもお姉ちゃんも動じていなかったけど、シルヴィア達は、新たな本のネタとして使えるかもしれないと、やたら質問してきたのは想定外だった。

 ただでさえ、私がそう言う本になっているのがおかしい状況なのに、さらにこれ以上ややこしくしないでほしい。

 というか、そんなの売れないでしょ。この世界では、魔物は共通の敵として認識されてるんだから。

 あっちの世界なら、まだ受け入れられる可能性もあるけどさ。


「さて、取材も粗方終わりましたし、そろそろ帰ろうと思うのですが」


 変な話で盛り上がった後、落ち着いてから改めて今後のことを話しあうことになった。

 仕事としては、すでに十分すぎるくらい取材したようだ。

 雪祭りもたっぷり堪能したし、村人に取材もして情報はばっちり。後は、これをどう掲載するかという話であり、仕事の部分はもう終わったと言っていい。

 旅行としても、すでに何度も温泉に入ったし、料理も堪能して、満喫はした。

 雪祭りも、雪像づくり体験も参加したし、屋台もたくさん見たしね。

 だから、旅としては十分であり、後は帰るだけなのである。

 問題があるとすれば、村の問題はまだ完全に解決したわけではないということくらい。

 街道の件や、不正に引かれた川、これらをどうにかできないと、おさまりが悪いというのはある。

 もちろん、すでに手は打ってあるし、私達がこれ以上何かする必要はないのかもしれないけどね。


「せっかくなので、きちんと村の問題を解決してから帰りたいですよね?」


「それは確かに」


「なので、まずは領主当ての手紙を、私達が届けてみてはどうかと思うんですが、いかがでしょうか」


 シルヴィア達も、村の問題がそのままなのは気になるのか、できる限り解決させたいようである。

 ここからは、完全にお節介になるけど、私もその意見には賛成だった。

 この村が、何らかのアクシデントで、このまま潰れるのなんて見たくないしね。

 他のみんなもその意見には賛成のようで、反対意見は一つも出なかった。

 そうと決まれば、許可を取って、手紙を届ける役目を変わってもらうとしよう。

 そう考えながら、今日のところは眠りにつくのだった。

 感想ありがとうございます。

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