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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十章:辺境の雪祭り編
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第五百四十三話:山の源泉

 温泉を堪能し、豪華な夕食を楽しんだ後、部屋へと戻る。

 夕食の時に、他の組がどういう状況だったのかを聞いたけど、概ね似たような状況だったようだ。

 すなわち、歩いて、見つけて、倒す。それだけである。

 探知魔法を使わなくとも、それなりの数が見つかったことから、結構な数がこの辺りに生息していることはわかったけど、やはり疑問なのは、なぜ山に留まらず、村の方まで降りてきているかだろう。

 主食が鉱物な以上、山でそれが枯渇するとは思えない。

 いや、主要な場所を食い尽くして、降りてきているって可能性もあるけど、だったらそもそも別の場所に移動すると思うんだよね。

 魔物にとって、街道の敷石がとっても美味だったのかは知らないけど、だとしても、すでに街道の敷石はその大部分がなくなり、もはや今残っているのは欠片くらいなものである。

 そんな状況下で、今もなおこの地に留まっている理由がわからない。

 帰巣本能的なものがあり、生まれ故郷である山から離れたくないとかだろうか。いや、それにしては村まで降りてきているしなぁ。


「これで収まってくれるなら楽でいいんだけど」


 理由が何にしろ、これで村に近づく魔物がいなくなれば、問題は解決と言っていいだろう。

 もちろん、道を通さなきゃいけない以上、完全に解決できるかどうかはわからないけど、魔物にとって、村に近づくことがデメリットの方が大きいと伝われば、近寄らなくなる可能性もある。

 まあ、魔物にそこまでの知恵があるかはわからないけどね。

 一部の魔物は喋れるほど知能が高いのもいるけど、あの蜘蛛はどうだろうか。


「とりあえず、様子見かな」


 これで、祭りが終わるまで滞在して、何事もなかったなら、多分しばらくは近寄っては来ないだろう。

 そうなることを祈るばかりである。

 そんなことを考えながら、眠りについた。


 そんな風に考えながら、数日が経過した。

 毎日、村の周りを見回っていたのだけど、しばらくは確かに姿は見えなかった。

 探知魔法に反応こそあったけど、村に近寄る個体はいなかったから、これは効果があったのではないかと期待していた。

 しかし、そんな期待を打ち砕くように、またしても魔物が近寄ってきたのである。

 以前より数は少し減ったようにも見えるけど、それでも、結構な数だ。

 これは、討伐作戦は失敗したと言っていいかもしれないね。


「そうですか……やはり、根本を絶たないとどうにもならないのでしょうか……」


 そのことを村長に報告すると、とても落胆したように肩を落としていた。

 まあ、期待していた分、ショックも大きいだろうからね。

 根本を絶つと言うと、やはり山に入ることになると思うけど、そもそも山には何があるんだろうか?

 温泉の源泉があるという話は聞いたけど、具体的に何があるかは聞いたことがなかったな。


「山には、源泉を管理するための小屋があります。定期的に、山に赴いてチェックをする決まりになっているのですが、最近は魔物が多くて、行けないことも多く……」


「それって大丈夫なんですの?」


「今のところは問題は起きていませんが、もし何かトラブルが起きて、温泉が途絶えるようなことがあれば、この村はおしまいでしょう」


 どうやら、この村も、結構綱渡りの状況にあるらしい。

 確かに、例の魔物は人を襲わないようだけど、それでも、万が一がある。

 一度戦ってみて、かなり強いということはわかっているから、迂闊に近づいて、襲われる可能性があるなら、初めから近寄らない方が無難だろうという判断のようだ。

 しかし、温泉が途切れれば、この村は真の意味で終わりを迎えることになる。源泉の管理は、是が非でもしなくてはならないだろう。

 どうにか、源泉に至るまでの道のりくらいは、安全を確保したいところだね。


「あれ、でも、宿では山の幸がふるまわれていましたけど、あれはどうやって?」


 ユーリが、ふとした疑問をぶつける。

 確かに、山に行くまでの道が危険なら、山の幸を取ることだって不可能なはずである。

 しかし、宿で出された山菜などは、結構新鮮なように見えた。

 これは一体どういうことだろう?


「山は確かに魔物がたくさんで危険ですが、それでも偏りというものがあるのです。魔物は、その多くが源泉近くに集まっていて、他の場所にはあまりいないのですよ」


「なるほど、それで山菜は取れるんですね」


 一口に山と言っても、魔物の分布には差があるってことか。

 そうなると、源泉に集まっている魔物をどうにかしないといけないわけだけど、なんで源泉に集まっているんだろうか?

 確かに、天然の温泉を見つけて入ったら、魔物が近寄ってきた、なんて話もたまに聞くことはあるけど、それは無防備な人間がいるから近寄っているのであって、温泉自体に近寄っているわけではない。

 人もいないのに、わざわざ集まっているとなると、その源泉に何かがあるってことになると思うんだけど、何か魔物を引き寄せるものでもあるんだろうか。

 もしそうなら、それを取り除きさえすれば、何とかなりそうだけど。


「ハク、やっぱり山にも調査に行くべきじゃない?」


「まあ、そうするしかないかなぁ」


 このまま収まってくれるならよかったけど、そううまくはいかないようだ。

 源泉のことも気になるし、山に調査に行って、原因を取り除くのが一番な気がする。


「山に調査に行ってくれるのですか? 何から何まで、本当にありがとうございます」


「いえ、こちらも気になりますから。ちなみに、その小屋というのは、調べてみても?」


「構いません。できることなら、源泉の調査もお願いできますか? この鍵を使えば、入れると思いますので」


 そう言って、村長は鍵の束を渡してきた。

 鍵に関しては、なくても開けられる気がしないでもないけど、正式に許可を得れるなら、それに越したことはない。

 私は、鍵束を受け取り、原因を突き止めることを約束する。


「どうか、よろしくお願いします」


 村長に見送られ、家を後にする。

 さて、山に行くことになったわけだけど、話を聞いた限り、そこまで危険は多くないように感じた。

 いや、魔物がたくさんいるんだから、危険ではあるんだろうけど、それを除くと、そうでもないって感じ。

 というのも、雪山に挑むのは色々と危険も多いと思っていたんだけど、どうやら、きちんと道が整備されているらしい。

 整備されていると言っても、敷石などは剥がされてしまっているから、道らしきものって感じになるのだけど、それでも、坂には階段が設置されているようだし、源泉の場所までの道は整っているようだ。

 最悪、雪が積もる中、方角だけを頼りに進むことになると思っていたから、それは嬉しい誤算である。

 まあでも、温泉地として発展してるくらいなんだから、そりゃ整備くらいはされているか。


「さて、源泉には何があるんだろうね」


 私の予想では、源泉には魔物を引き付ける何かがあると睨んでいる。

 もし、源泉を求めているなら、山の近くから離れない理由にもなりそうだし、それさえ取り除くことができれば、魔物被害も収まるんじゃないだろうか。

 果たして、そううまく行くかはわからないけど、この調査で、事態が好転してくれるといいのだけど。

 再び二手に分かれて、源泉を目指す。

 さて、何があるのか。



 誤字報告ありがとうございます。

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