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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十章:辺境の雪祭り編
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第五百三十七話:荒れた道

 出発から約二週間ほど。そろそろ目的の村に着こうかという頃合いになった。

 ここら辺だけど、かなり町が少ない。それどころか、村すらない。

 街道自体は続いているけど、だんだんと整備状況も悪くなっていき、不意に馬車が跳ねるなんてこともよくあった。

 やっぱり、地方に行くほど、整備は甘くなるんだろうか。

 大きな町が近くにあるなら、往来も激しく、その分整備の手も入るけど、あまり馬車が通らない場所となると、整備も疎かになってしまうのかもしれない。

 町がある以上、必要がないということは絶対にないけど、この辺はもうちょっと何とかしてほしいところだよね。


「ここから先は街道すらないか」


「本当に辺境なのね」


 しばらく進んでいくと、もはや街道すらなく、ただのあぜ道である。

 こうなってくると、馬車での移動は結構難しい。

 行けないことはないけど、街道以上に整備がされていないものだから、草は生え放題だし、雪が積もっているからぬかるんでもいる。

 その上、今は結構気温が低いのか、霧も発生していて視界も悪い。

 こんなんじゃ、この時期に村に来る人が少ないのも納得である。


「確か、その村って、雪祭りを宣伝してもらって、人を集めようって話だったよね?」


「そうですわね」


「まずは道を整備すべきでは?」


「それはそうなんでしょうけど、ここらの領主はなにをしているのかしら」


 本来なら、街道の整備などはその土地の領主が指示して行うものである。

 実際、町に至るまでの街道は、整備が甘いとはいえきちんと整っていたし、全くやっていないというわけではないだろう。

 この村だけ道を通していないのは、単に面倒くさいからなのか、それともお金が足りないからなのか。

 いずれにしても、わざわざこんな苦労してこの先の村に行く必要はないように思えてしまう。


「道は合ってるんだよな?」


「そのはずですわ。さっきの町でも、きちんと確認しましたし」


「そうか。まあ、何とかするしかねぇな」


 お兄ちゃんも、この霧の中馬車を進めるのは少しためらっている様子。

 しばらくすれば霧も晴れるかもしれないけど、あんまり時間をかけすぎると、雪祭りが終わってしまうかもしれないし、なるべく急ぎたいところである。

 結局、慎重に進むことになった。


「その村って、何か名産でもあるの?」


「元々は、温泉が湧いていたことから、それを中心に発展していった村らしいですわ」


「当時は、結構賑わっていて、温泉村として躍進を続けていたらしいですが、今はどうなんでしょう」


 シルヴィア達が調べた限りでは、温泉が有名で、それを中心に観光村として発展していたが、ここ最近は全然人が集まらず、雪祭りを開催するなどしてどうにか人を集めようと躍起になっている様子である。

 そんなに発展していたなら、街道の一つくらいあってもよさそうなものだけど、どうしてなくなってしまったんだろうか。

 仮に元々は街道があったのだとしたら、撤去するにもお金がかかるし、わざわざ撤去しようとするとも思えないけど。


「……ん? 何かいるっぽいね」


「魔物か?」


「多分。数体近寄ってきてるよ」


 霧の中ということもあって、警戒していたんだけど、そうしたら早速引っかかった。

 反応としては、そこまで大きくはないけど、そこそこ数がいるな。

 私は、後ろをついてきているお姉ちゃんに合図を送り、一時停車する。

 その気になれば、進みながらでも排除できるかもしれないけど、霧のせいで相手の姿が見えないからね。

 一応、念には念を入れて対処しようというわけだ。

 それぞれ迎撃態勢を整えつつ、相手が来るのを待つ。

 すると、しばらくして、その姿があらわになった。


「これは、蜘蛛?」


 現れたのは、巨大な蜘蛛である。

 蜘蛛型の魔物はよくいるけど、こいつの特徴は、背中に巨大な岩を背負っているということ。

 よく見れば、体も結晶質で、堅そうな見た目をしている。

 見たことない魔物だけど、なんなんだろうか。


「とりあえず、セオリー通りに」


 私は、水の刃を放ち、攻撃を仕掛ける。

 蜘蛛は、その見た目とは裏腹に、素早い動きで避けようとしていたけど、私の方が早い。

 数秒もすれば、水の刃が蜘蛛の体を切り刻み、細切れにしてしまった。

 うん、魔法に耐性があるとかではなさそう。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、お願い」


「任せとけ」


「物理でもなんとかなるかしら」


 倒すだけなら問題なさそうだけど、今後のために、少し情報を集めておく。

 お兄ちゃん達が切りかかると、蜘蛛はその手を巧みに操り、攻撃を受け止めていた。

 よく見れば、前足は刃のように鋭くなっているのがわかる。

 さっきの回避行動からして、割と戦い慣れている雰囲気があるね。


「硬い、が、これくらいなら……!」


「何とかなるわね」


 何度か防がれたが、隙をついて胴体を攻撃し、貫くことに成功する。

 割と硬かったけど、物理でも倒すことはできそうだ。

 ただ、お兄ちゃん達の武器は、ミスリルで作られた一級品。それを何度も防ぐとなると、相当防御力が高い感じがする。

 動きからしても、少なくともCランク以上の魔物ではないだろうか。


「お疲れ様」


「ああ、索敵サンキューな」


「まあ、これくらいはね」


 しばらくして、やってきた魔物をすべて倒すことに成功する。

 残された死体を見てみたけど、黒曜石のような黒い体に、背中に背負った大きな岩。

 恐らくだけど、通常の蜘蛛型の魔物が、この場の環境に適応した姿ってところだろうか。

 よくある亜種系の魔物は、そうして地域ごとに環境に適応した姿も多いし、恐らくはその類だろう。

 ただ、なんでこんな形なんだろうか。

 ゴーレムのように、その地域にある鉱石から生まれるのであれば、このような形になっても不思議はないけど、ここらへんはただの平原。

 一応、村があるこの先には、近くに山があるらしいけど、その関係なのか?

 素材の価値としては、それなりに高そう。

 ミスリルと同等レベルの硬さを持つ素材だし、優秀な武器や防具になってくれると思うから、狩りがいはあるかも。

 まあ、私はそんなに興味ないけどね。


「これ、村は大丈夫なのかなぁ」


「結界魔道具があるなら大丈夫だろうが、おちおち外にも出られなさそうだな」


 道も悪く、凶悪な魔物が出るとあっては、本当に来る人が少なそうだ。

 私達は、一抹の不安を抱えながら、魔物を回収して先に進むのだった。

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