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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二十章:辺境の雪祭り編
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第五百三十六話:大所帯の旅

 その後、色々な人を誘ってみたが、来ると言ってくれたのはカムイくらいなものである。

 サクさんは道場が忙しいと言っていたし、キーリエさんは急な休みを取ることが難しいと言っていた。アルトはそもそもいなかったし、ミスティアさんはすでに里帰りすることが決まっているという。

 他にも色々な理由で来れないらしく、結局来たのはカムイだけ。

 いや、カムイが来てくれただけでもありがたいけどね。

 アリシアも誘えたし、サリアも恐らく来るだろうから、十分と言えなくもない。


「というわけで、今回のメンバーが決まったね」


「ええ。馬車は余裕をもって準備していたので、問題ありませんわ」


 今回行くメンバーは、私が誘ったアリシアとカムイ、それにお兄ちゃんとお姉ちゃん、ユーリとエル。シルヴィア達が誘ったのは、サリアと、出版社からステラさんとマーテルさんが一緒に来るらしい。

 ステラさんとマーテルさんは、学園の時からの付き合いで、共にハクサリ本を広めようと誓い合った仲らしい。

 出版社創設当時からのメンバーで、今回は仕事のためについて行くことになったようだ。

 全部で12人。精霊組のアリアとミホさんも加えれば、14人である。

 かなりの大所帯だな。


「ハクさん、また一緒に旅行ができて嬉しいです!」


「ついに私にも春が来たわ!」


 マーテルさんとステラさんは、私と旅行できるのが嬉しいらしく、かなりテンションが高い。

 確か、マーテルさんとは、卒業旅行の時にも一緒に行ったんだったよね。

 学園時代は、シルヴィア達の部屋と同室で、その流れで一緒に行くことになったらしい。

 あともう一人、ローズマリーさんという人もいたんだけど、その人は実家に呼び戻されてしまったらしく、現在は王都にはいないようだ。

 おかげで、誘うことができなかったと残念そうだったけど、まあ、こればっかりは仕方ない。


「今回は、御者は自分達でやる感じ?」


「ええ。雇ってもよかったですけど、皆さん御者はお手の物でしょう?」


「まあ……」


 この中で、御者ができないのは、私とユーリくらいだろうか。

 いや、やり方は知っているし、無理をすればできないことはないけど、視界の問題でやりにくいという形。

 馬の扱いは、貴族にとっては必須のスキルと言ってもいい。

 時には、裸馬に乗って駆けることもあるため、令嬢と言えど、扱いには一定の信頼がある。

 別に、御者を雇って行っても構わないけど、それだと、その分気を使うことになるから、旅行というのを考慮して、あえて雇わなかったのかもしれないね。

 最悪、このメンバーなら、私の竜姿を見せても問題ないというのもある。気兼ねなく発散できるのはいいことだ。


「なら、御者は俺達がやろう。旧交を温める場に俺達が混ざってたら、話しにくいだろうしな」


 そう言って、お兄ちゃんとお姉ちゃんが名乗り出る。

 確かに、今回の旅行は、言うなれば学園時代のクラスメイトによる旅行。アリシアは学年が違うけど、お兄ちゃん達は、そもそもクラスメイトですらなかった。

 本人達も、どちらかというと護衛という考えらしく、もっと言うなら保護者という立場である。

 だから、あえて名乗り出てくれたのだろう。

 私としては、そう言うのはあまり気にしなくてもいいとは思うけどね。卒業旅行の時も、一緒に来てくれたし。


「それなら、お言葉に甘えさせてもらいますわ」


「なら、皆さん準備はよろしくて?」


 それぞれ、身支度を整えて、馬車に乗り込む。

 今回、馬車は二台で行くことになった。

 大型の馬車を借りたので、それぞれに6人ずつ乗り込んでも、余裕はある。

 荷物に関しては、私が【ストレージ】にまとめているので、スペースも取らないしね。

 全員乗り込んだのを確認し、さっそく出発することにした。


「ふふ、こうして旅行に行くのも久しぶりですわ」


「楽しみですわね」


「一応仕事で行くんだから、気を抜いちゃだめじゃない?」


「わかってますわ。取材は手を抜きませんことよ」


 時刻はまだ早朝。早い時間ということもあって、街道に馬車は見当たらない。

 すでに、何度か雪が降ったのか、街道周辺には雪がうっすらと積もっているところもあるけど、このくらいなら、まだ進行に支障はないだろう。

 ちなみに、私が乗り込んだ馬車は、シルヴィア、アーシェ、ステラさん、アリシア、そして御者にお兄ちゃんである。

 本当は、エルが乗りたがっていたけど、ユーリが諭して、このような配分になったのだ。

 まあ、帰りは入れ替わると思うけどね。

 なんか、私を巡って席の取り合いが発生するのも久しぶりの感覚だ。

 学園時代から、その熱量が未だに冷めないのも凄いよね。


「そう言えば、アリシアさんは今度結婚するって話を聞きましたけど、本当なんですの?」


「えっ? ま、まあ、はい、そうですね」


「おめでとうございますわ! もうそんな時期なんですのね」


「時の流れは早いですわ」


 話題はアリシアの結婚の話になった。

 そんなに大々的に報じていないとはいえ、流石にシルヴィアもそれくらいのことは把握しているらしい。

 それにしても、みんな結婚はしないんだろうか?

 私は一応結婚しているし、アリシアも不本意とはいえ結婚することになったけど、シルヴィア達からそう言った話を聞いたことがないような気がする。

 そこのところどうなんだろうか?


「一応、すでに結婚はしてますわよ?」


「え、ほんと?」


「ええ。まあ、領地にこもりっきりで、接触はあまりありませんけど」


 どうやら、結婚自体はしているが、それよりも出版社のことを優先して、半分家を飛び出す形で王都に留まったらしい。

 本来なら、領地を持つような貴族と結婚できるなんて結構凄いことだけど、格としては、シルヴィア達の方が上らしく、相手も逆らえなかったらしい。

 忘れがちだけど、シルヴィア達って侯爵家なんだよね。そりゃ並大抵の相手は太刀打ちできない。


「最低限の仕送りはしていますし、私が対処せざるを得ないような状況もありませんからね。こうして王都で好きなことしていた方がいいんですわ」


「あっちも、王都でのパイプは持っておきたいでしょうし、そこまで不満はないと思います」


 そう言って、くすくすと笑う。

 確かに、シルヴィア達は一応出版社の代表であり、王都のニュースを取り扱うという立場でもある。

 主なものは私の本だけど、観光本にも手を出しているし、その気になれば、領地のことを紹介することも可能だ。

 広い影響力を持っている以上、下手に連れ戻せば、自分の領地に不利益が出ると考えれば、相手もそうそう手出しはできないんだろう。

 元は研究員になれるほど優秀な人材だしね。可哀そうな気もするけど、これがお互いにとって幸せな形だろう。

 その後も、お互いに話題を出しながら、話に花を咲かせる。

 旅は、和やかな雰囲気で進んでいった。

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― 新着の感想 ―
みんな割と既婚者だった( ˘ω˘ )
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