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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十九章:流行病編
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第五百二十九話:砂漠の町

 その町は、砂漠の中にあった。

 オアシスに作られた町なのだろう、砂漠ではあるが、水は豊富で、人々も活気が溢れている。

 もっと寂れているのを想像していたけど、これは考えを改める必要がありそうだった。


「リク、ここで間違いないんですか?」


『前見た時はこのあたりだったはずだよ。まあ、どこにでも現れるからあんまり当てにならないかもしれないけど」


「ちょっと」


 リクの目撃証言を基に来たわけだけど、どうにもいい加減である。

 確かに、相手は鏡の中に潜む神様。鏡がある場所ならどこでも現れることができ、その行動範囲は、実質世界中と言っても過言ではない。

 もちろん、鏡という制限があるから、人がいる場所の近くってことにはなりそうだけどね。

 この世界で、鏡はそこそこ高価なものである。

 手鏡のような小さなものならともかく、姿見ともなると、貴族くらいしか持っていないだろう。

 そう考えると、鏡がある場所も限られる。

 見たってことは、現れているのを見たってことなんだろうけど、この町の貴族の家ってことなんだろうか?


「とりあえず、話を聞いてみようか」


 そもそも、ここに貴族がいるのかどうかもわからないし、とりあえず聞いてみるとしよう。

 私は、適当に歩いて、その辺の人に話しかける。


「すいません、少しお話いいですか?」


「なんだい?」


「この町のことについて教えてほしいのですが」


「なんだ、旅人さんかい? 珍しいね」


 相手は、少し目を丸くしながらも、快く答えてくれた。

 この町は、砂漠を渡る際に、中継地点として利用される町らしい。

 砂漠の先には大きな町があり、そこから来る行商人や冒険者などを迎え入れるために作られた町であり、オアシスの豊富な水や、砂漠特有の魔物の肉など、珍しいものもあるので、割と栄えているようだ。

 ただ、ここ最近は、それらとは別に、ある人々が入ってきているらしい。

 それが、トレジャーハンターだ。

 トレジャーハンターとは、遺跡などを巡り、そこにあるお宝を持ち帰って生計を立てるロマン溢れる職業である。

 つい最近、この町の近くに遺跡が発見され、そこのお宝を求めて集まってきているようだ。

 だから、それ目的でこの町を訪れる人は多いけど、何も知らずにこの町を訪れる人は珍しいってことらしい。

 遺跡って言うと、やはり例のあの遺跡だろうか?

 砂漠にあるという話だし、リクが広まっている範囲を考えても、間違いないだろう。

 あそこには、多くの副葬品があったという話だし、お宝もあるかもしれないね。

 まあ、私としては、そう言うのはあまり盗らない方がいいんじゃないかとも思うけど。


「俺としては、面白いものを持ち帰ってくれるならそれでいいと思うんだけど、町長はこれに反対のようでね。今も揉めているらしいよ」


「揉めてるって、遺跡に行くなってことですか?」


「そう言うこと。なんで反対しているかは知らないけどね」


 町長は、この町の創設の頃から代々続く家系の人らしく、この町の最高権力者らしい。

 一応、上には領主がいるらしいのだけど、領主も、わざわざこんな砂漠の町まで視察に来ることはないらしいので、事実上のトップってことだね。

 と言っても、目が届かないからと言って、圧政を敷いているとか、そう言うわけではないようだ。

 行商人や冒険者とは良好な関係を築けているし、町も計画的に広げていて、砂漠の町とは思えないほどに活気に溢れている。

 町の人からは、かなり評価が高い町長らしいのだけど、そんな人が反対しているものだから、この町でのトレジャーハンターの評価はかなり低い。

 人によっては、盗掘集団だという人もいるようで、町の人達と、反発を生んでいるようだ。

 

「単純に、危険だからって言うのもあるかもしれないけどね。砂漠にはワームやスコーピオンと言った凶悪な魔物がわんさかいる。毎年、それで多くの人が犠牲になってるし、遺跡ともなれば、滅多に人が行かない場所だ。その分、危険も多いだろう。だからこそ、止めてるのかもしれないね」


「なるほど」


 この町に来るのは、大抵決まった人物らしい。

 砂漠であるが故に、道を敷くことも難しく、目印も少ないので、土地勘がない人が足を踏み入れれば、そのまま迷子になって、魔物の餌食となったり、暑さによって倒れるのことになる。

 トレジャーハンターは、どこからか噂を聞きつけてやってきたようだけど、命知らずで、絶対に犠牲が出ることがわかり切っている。

 もちろん、トレジャーハンターは、そう言う危険を承知でやってきているわけだから、それで倒れるようなことになれば、それは自己責任だとは思うけど、この町に来た人が、何人も犠牲になったとあれば、確かに気分は悪いだろう。

 それが理由で止めているとしても、不思議はないね。


「まあ、気になるなら町長の家に行ってみるといい」


「わかりました。ありがとうございます」


 その後、この町の名産とか、色々と教えてもらい、話を切り上げた。

 さて、今のところ、特に気になるところはない。

 トレジャーハンターと揉めているって言うのは確かに気になるけど、理由を考えれば、そこまで不自然ではないしね。

 というか、すでに聖教勇者連盟が入っているわけだし、恐らくはきちんと実力を持っている人なら、通すことも考えているのかもしれない。

 無鉄砲に突っ込んでいくのが許せないだけかもしれないね。


「どうしますか?」


「ひとまず、その町長の家に行ってみようかな。あっちにあるらしいし」


 砂漠特有の魔物の肉を使った料理も気になるが、まずは目先の問題を見てみようと思う。

 通りを進み、しばらくすると、それらしい家が見えてくる。

 なんだか、家の前に人だかりができているけど、何かやっているんだろうか?


「なぜ止めるんだ!」


「遺跡のお宝を独り占めにする気か!」


「遺跡は誰のものでもないだろう!」


「町から出せー!」


 近づいてみると、そんな声が聞こえてくる。

 恐らくは、トレジャーハンターの人達だろうか? 格好もそれっぽいし。

 そんな言葉を浴びせられているのは、初老の男性。

 男性は、そんな言葉をやんわりと受け止めつつ、説得を続けている。


「落ち着きなされ。あの遺跡は呪われている。下手に手を出せば、この町も呪われてしまうかもしれない。どうか、遺跡のことは諦めてほしい」


 男性の言い分はそんな感じだ。

 確かに、遺跡と言えば呪いみたいなところはあるけど、それだけで止めるには弱い気もする。

 それとも、実際の呪いを目の当たりにしたんだろうか? それなら、まだわからなくもないけど。

 しばらく眺めていたけど、そう言った押し問答が続き、やがてトレジャーハンター達は去っていった。

 別に、町長が止めたところで、勝手に行けばいいだけの話な気はするけど、そうはいかない理由でもあるんだろうか。

 残された男性は、はぁとため息をつきながら、家の中へと戻っていく。

 多分、あの人が町長だと思うし、話を聞いてみようかな。

 私は、その背を追いかけるように、小走りで近寄って行った。

 感想ありがとうございます。

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