表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十九章:流行病編
1418/1549

第五百二十二話:武器のコレクター

 ひとまず、この短剣を差し出したという人物に会ってみようと思う。

 さっきコノハさんに聞いたけれど、その人はどうやら、自宅を持っていて、そこで療養しているようだ。

 本人から、絶対に近づくなと言われていたので、事情聴取は通信魔道具越しに行ったようだけど、その時は、特に嘘を言っているようには聞こえなかったという。

 本当なら、近づいては行けないと思うけど、今は緊急事態だし、これが偽物とあっては、問い詰めないわけにもいかない。

 というわけで、コノハさんからも許可を貰い、突撃することにしたわけである。


「ここがその家っぽいね」


 聖教勇者連盟には、特に高い功績を上げた人物には、家が支給されることがある。

 通常なら、寮で暮らすことになるのだけど、住み心地自体は悪くないが、やはり、多少なりとも他人に気を使う場所ではあるので、自宅を持っているというのは転生者にとっての憧れみたいなものらしい。

 まあ、やろうと思えば、下町に土地を買って、家を造ることくらいたやすいとは思うけどね。

 以前は、転生者の力を外に出さないために、隔離していた部分もあったけど、今はそう言うのはないはずだし。

 まあ、その風習が今も残っていたおかげで、感染があまり広がらなかったって言うのはあるかもしれないけどね。

 もし、下町にも感染が広がっていたら、かなり厄介だったことだろう。


「鍵がかかってる」


 扉に手をかけてみるが、やはり開かない。

 まあ、自分から近づくなと言っていたようだし、当然と言えば当然なのかな?

 しかし、この程度の鍵、ないも同然である。

 私は、解錠魔法でちゃちゃっと扉の鍵を開ける。

 さて、例の人はどこにいるかな?


「……あっちか」


 探知魔法で調べつつ、家に入っていく。

 やがて、寝室と思われる扉に辿り着くと、私はそっとノックをした。


「だ、誰だ!?」


「突然の訪問すいません。ハクです」


「は、ハクだって!? こ、この家には近づくなって言われなかったか!?」


「言われましたが、確認したいことがあったので、コノハさんに許可を得て、訪問させていただくことにしました。この扉を開けても大丈夫でしょうか?」


「ま、待って! 今着替えるから待って!」


 そう言って、ごそごそと動く音が聞こえてきた。

 確か、病気になっていたはずだけど、もう動けるまでに回復したってことなんだろうか?

 というか、この家には世話人などはいないんだろうか。

 確かに、そこまで広い家というわけではないようだけど、病気の人間一人を置いていくのはちょっと危ない気もする。

 通信魔道具で無事は確認できるだろうけど、この辺りはちょっと気にした方がいい気がするけどね。


「は、入っていいよ」


「では、失礼します」


 しばらくして、着替え終わったのか、許可が下りたので、扉を開ける。

 ベッドの上には、ラフな格好をした男性が一人。しかし、それ以上に気になったのは、部屋に飾ってある、武器の数々である。

 主に剣が多いだろうか。壁には結構な数の剣が並べられている。

 つい先ほどまで手にしていたのか、ベッドの傍らにも剣が置いてあり、かなり物騒な部屋だ。

 観賞用の宝剣や実用的な剣、どちらもあるようだけど、これがコレクションとやらなんだろうか。

 寝室に武器を置くのは、この世界でもよくあるけど、この数は流石に危なくないだろうか?


「えっと、初めまして?」


「初めまして。ガラルさんですね」


「う、うん」


「少しお話を聞きたいのですが、お体の調子は大丈夫そうですか?」


「あ、ああ、うん、大丈夫。この通り、少しはましになってきたからさ」


 確かに、顔も赤くないし、咳もしていない様子。

 最悪、話ができない状態かもしれないと思っていたけど、杞憂に終わって何よりだ。


「それでは、この短剣のことなのですが」


 私は、【ストレージ】にしまっていた短剣を取り出す。

 この短剣、コノハさんの話では、ガラルさんが遺跡から持ち出したものであり、素直に引き渡すから、他のコレクションは奪わないでほしいと懇願してきたらしい。

 別に、コレクションに興味はないし、ちゃんと渡してくれるならそれで解決した話なのだけど、どうやらこの短剣には、リクがいない様子。つまり、遺跡から持ち出されたものではない可能性が高い。

 可能性として、他に隠し持っている可能性があったため、こうして話を聞きに来たわけだが、何か心当たりはないんだろうか?

 そう問い詰めると、ガラルさんは若干顔を青くしながら、首を横に振った。


「し、知らない! 遺跡から持ち出した短剣はそれだけだ!」


「本当ですか? 他に隠し持っていたりはしませんか?」


「し、しない! ほんとに知らないって!」


 かなり慌てたような口調である。

 傍から見ると、何かを隠しているようにしか聞こえないのだけど……どうなんだろうか。


「詳しくは話せませんが、今回の病気の原因は、恐らくは遺跡から持ち出された短剣なのです。その短剣に住まう病原体をどうにかしなければ、このパンデミックは収まりません」


「な、なんだって? そうか、それで……」


「何か心当たりでも?」


「い、いや、その……」


 ガラルさんは、さらに顔を青くしながら、手を振っている。

 何か知っているのは間違いなさそうだ。


「ガラルさん。もし何か知っているのなら、すぐに白状してください。これは、聖教勇者連盟全体の問題ですので」


「し、知らないってば! 何か証拠でもあるの!?」


「証拠はないですが……おや?」


 と、そんなことを話していると、通信魔道具に着信があった。

 出てみると、相手はどうやらコノハさんのようである。

 何かわかったんだろうか?


「もしもし、コノハさんですか?」


『うん。さっき調べてた件だけど、わかったことがあってね』


 そう言って、コノハさんは説明を始める。

 遺跡に調査に行ったメンバーの中で、短剣を持ちだしたのは、やはりガラルさんで間違いないようだ。

 他のメンバーの中にも、目撃した人がいたらしく、しかし、いつものことだと思って、特に追及はしなかったらしい。

 他人の家から物を盗み出すのはともかく、遺跡から盗むのはこの世界では特に珍しくもないらしいからね。

 もちろん、本来はだめだけど、そこまで気にすることではなかったようだ。

 しかし、最近になって、ガラルさんの方から、そのメンバーに通信があったらしい。

 内容は、短剣を誰も知られない場所で破壊してほしいというもの。

 なんでも、この短剣はそれを望んでいるとか言っていたらしいのだけど、武器コレクションをしているガラルからそんな言葉が出てくるとは思わず、びっくりしたのを覚えているようだ。


「では、短剣はその人が?」


『いえ、自分では壊せなかったらしくて、より火力が出せる人物に頼んだそうよ。今は、その人の行方を追っているところ』


「そうでしたか。なら、後はその人が見つかればってところですね」


 ガラルさんが託している可能性はあると思っていたけど、予想外の方向に転がったな。

 私は、コノハさんを労いつつ、通信を切る。

 さて、これでガラルさんの関与は明白となったわけだけど、どう出るだろうか?

 私は、ガラルさんの目を見ながら、静かに問いかけた。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
さあ、キリキリと吐いて貰おうか~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ