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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十九章:流行病編
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第五百十二話:流行病?

 カムイの話によると、今、聖教勇者連盟では、病気が蔓延しているらしい。

 症状としては、風邪と似たような症状らしいのだけど、かなり長引いているらしく、一部の業務が滞っているのだとか。

 本来なら、治癒が得意な転生者が治すところなのだけど、今回に限っては、治してもすぐに再発してしまうらしく、あまり意味がないらしい。

 このままでは、聖教勇者連盟の存続にも関わるということで、私に原因の調査をお願いしたいようだった。


「なるほどね。今年は寒いけど、そのせいなのかな?」


「さあ? でも、ただの風邪だったら、患者を隔離するなりしてすぐに対策できているだろうに、わざわざヘルプを頼むってことは、割とやばい状況なのかもしれないわね」


 確かに、神代さんやコノハさんあたりなら、すぐにでも対策をしていそうな気がする。

 対策のしようがないくらい重い症状ってことなんだろうか? あるいは、その二人が病気にかかっていて指示できない状況にあるのか。

 いずれにしても、早めになんとかした方がよさそうだ。


「私としては、それくらい自分達で何とかしろって言いたいんだけどね。ハクが病気にかかっても困るし」


「まあまあ、せっかく助けを求めてきてるんだから、助けてあげないと」


 でも、このまま無策で突っ込むのは確かに怖い。

 軽度の病気くらいだったら、治癒魔法でも治せるかもしれないけど、聞いた限り、そんな単純なものではなさそうだし、下手に訪れれば、私も病気にかかる可能性が高い。

 一応、竜の血があるおかげか、病気にはそれなりに強いとは思うんだけど、それも絶対とは言えないからね。

 差し当たっては、結界で空気の流れをシャットアウトするのがいいだろうか。

 ウイルスなどを防ぐことができれば、病気にかかる可能性は低くなるし。


「まあ、ハクならそう言うわよね。私は行けないけど、何とか助けてあげて」


「わかった。カムイも、風邪とか引かないように気をつけてね」


 さて、さっそく向かうことにしよう。

 とりあえず、私とエルに結界を張ってから、転移魔法で聖教勇者連盟の聖庭へと向かう。

 相変わらず、美しい庭ではあるけど、今日は人通りが少ない。

 やっぱり、病気でダウンしてるってことなんだろうか。

 ひとまず、事情を聞くためにも、神代さんの場所を把握する。


「神代さん、いますか?」


「あ、ハクちゃん、来てくれたんだね!」


 建物の中に入ると、会議室に神代さんの姿はあった。

 他にも、コノハさんの姿もあり、今後の対策を考えていたらしい。

 即席で作ったのか、マスクらしきものもつけているし、一応対策はしているっぽいけど、どの程度のものなんだろうか?


「病気が流行ってるらしいですけど、どんなもんなんです?」


「うん、それがね……」


 神代さんがちらりとコノハさんの方を見ると、コノハさんはいくつかの資料を渡してくる。

 まず、病気にかかっている人数だけど、聖教勇者連盟に所属する転生者の、実に四割以上がかかっているらしい。

 いずれも、症状は咳、発熱、倦怠感などで、風邪に似た症状。

 当初は、エミさんを始めとした治癒担当が治していたんだけど、それでも拡大は収まらず、わずか数週間でこのありさまなんだという。

 薬も飲ませてみたが、多少症状が落ち着きはするけど、完全に治るまではいかず、結局、それぞれの部屋で寝かせておくという対処をしているようだ。

 ここだけ聞くと、新種のウイルスでも出てきたのかと思うところだけど……。


「治してもすぐにかかるって言ってましたけど、そんなに酷いんですか?」


「酷いなんてもんじゃないよ。確かに、一時的に治すことはできるんだけど、一日もしたらすぐにまた病気になってしまうし、それでも楽になりたいがためにみんな治してくれとせがむものだから、治癒担当は疲労困憊で、そこから病気にかかってダウンって言うのが続いてる。正直、今の聖教勇者連盟に、まともに動ける治癒担当はいないよ」


「それは深刻ですね……」


 いくら転生者が特別な力を持っているとはいっても、全く病気にかからないなんてことはありえない。

 もしかしたら、絶対的な健康、みたいな能力を持っている人もいるかもしれないけど、そんなの稀だろう。

 だから、患者と接触する機会が多い治癒担当は、病気にかかりやすく、結果的に壊滅状態というわけだ。

 一応、マスクを作ったりして、対策はしているようだけど、焼け石に水状態らしい。

 今、こうして神代さんやコノハさんが無事でいられるのも、奇跡みたいなものだとか。


「原因はわからないんですか?」


「鑑定能力がある人が調べてみたけど、未知のウイルスによる病気、という風に出たらしい」


「未知のウイルスですか……」


 病原体がいることは間違いなさそうだけど、それが何なのかはわからないと。

 うーん、普通、病気が蔓延するとなったら、何かしらの原因があるよね。

 例えば、汚れた川の水を飲んだとか、不潔な場所に長時間いたとか。

 でも、この世界の人達ならともかく、仮にも転生者がそう言うことを注意しないとは考えにくい。

 実際、聖庭などは綺麗に手入れされているし、建物内にもゴミなどは落ちていない。きちんと毎日清掃している証拠だ。

 まあ、今となっては人手不足で多少汚れてきているかもしれないけど、それでもまだ見てわかるような変化はない。

 原因がわかれば、それを潰せば根本的な解決はできそうだ。

 とりあえず、病気にかかった人達に、事情を聞いてみるのがいいかもしれないね。


「とりあえず、原因を調査しましょう。最初にかかったのは誰ですか?」


「確か、シュピネルちゃんだったかな。大体半月くらい前の話だよ」


「わかりました。話を聞いてみましょう」


「あ、待って」


 私は、さっそくシュピネルさんの家に向かおうとしたが、そこをコノハさんに止められる。

 というのも、未だに原因がはっきりしない以上、下手に会うのは危険だとのこと。

 確かに、わかっているのは、未知のウイルスが原因ということだけ。どのような性質があるのかもわからないし、一度かかったら治してもすぐに再発してしまう以上、下手に近寄って移されても困る。

 だから、通信魔道具を使って会話することを勧められた。

 なるほど、確かにそれなら直接会わなくても話すことはできるか。


「出てくれますかね」


「寝ていたらわからないけど、基本的には出てくれるはずよ。あんまり長時間話すわけにはいかないけどね」


 そう言って、通信魔道具を渡してくれる。

 まあ、辛そうなら、会話を中断するのも考えておこう。

 私は、さっそく呼び出しをしてみる。すると、しばらくして、応答があった。


『……もしもし?』


「お休みのところ申し訳ありません。ハクです」


『ああ、来てくれたのね……ゴホゴホッ!』


 通信越しのシュピネルさんの声は、かなり苦しそうだった。

 一瞬、誰だかわからないくらいには声が枯れていたし、明らかに元気がないのがわかる。

 要点だけ聞いて、早めに通信を終わった方がよさそうだ。


「辛いと思いますが、事情を聞きたく。何か、病気にかかったことに心当たりはありませんか?」


『特にない、と思うけど……』


 シュピネルさんは、何とか絞り出すように事情を話してくれる。

 一体何が原因なのか、これで分かるといいのだけど。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ウイルスの発生源は大概野生動物との接触だからなぁ
異世界の風邪かな?
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