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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十五章:退魔士協会編
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第四百八話:建設的な話

 結界の中に入ると、いくつかの建物が目に入った。

 いずれも、かなり大きく、学校の体育館かと見まがうような大きさばかりである。

 こんな山の中に、こんな建物を建てる面積があるのかと思いたいけど、いったいどうやって補強したんだろうか。

 整地だけでも大変そうである。

 いやまあ、そんなことはどうでもいいんだよ。それよりも、これはどこに向かえばいいんだろうか?


「おい、お前達、一体何者だ?」


 きょろきょろと辺りを見回していると、不意に一人の男性から声をかけられた。

 全身を黒の衣装で身を包んだその男性は、手をポケットに突っ込みながら、ぶっきらぼうにこちらを見ている。

 なんか、いかにもな不良なんだけど、この人は退魔士協会の人なんだろうか?

 勝手なイメージだけど、それこそ陰陽師みたいな人がたくさんいるものかと思っていた。


「ここの方ですか? 私達、カガリ様の紹介でここに来たのですが……」



「カガリ、ってことは神の気まぐれって奴か? 全く、余計な仕事を増やさないでほしいね」


 そう言って、ため息を吐く男性。

 明らかに面倒がられているけど、本当に大丈夫だろうか。


「わかった。カガリの紹介だな。書状か何かあるか?」


「あ、はい、こちらに」


「あるならいい。とりあえず応接間に案内するから、そこで担当者に話をしてやってくれ」


 こっちだ、と言って男性は歩きだす。

 どこに行ったらいいかもわからないので、ひとまず後をついて行くことにした。

 案内されたのは、割と豪華な部屋だった。

 まるで、あちらの世界で言う貴族の部屋のように煌びやかで、少し落ち着かない。

 男性は、ここで待ってろと言ってすぐにどこかに行ってしまった

 とりあえず、歓迎はされてるっぽいけど、まだ油断はできない。

 担当者というのが、話が通じる人だといいのだけど。


「お待たせいたしました」


 しばらくして、応接室の扉が開く。

 やってきたのは、初老の男性だった。傍らには、秘書と思しき女性が立っている。

 二人は、対面のソファに腰を掛けると、恭しく頭を下げてきた。


「この度は、退魔士協会に御足労いただきありがとうございます。カガリ様のご紹介ということですが、まずは書状を見せていただけますかな?」


「はい、こちらです」


 私は、懐から書状を取り出し、老人に渡す。

 老人は、書状の中身を読むと、やはりと確信めいた言葉を発していた。


「いや、失礼。これは確かにカガリ様の書状です。あなた方に協力してほしいと書かれておりました」


「こちらも色々問題を抱えていまして……もし協力してくださるのならありがたいです」


「もちろん、カガリ様の紹介とあっては、我々も無碍にはできませぬ。しかし、無条件に協力しろ、と言われても面白い話ではありません。なので、まずはお互いに話をし、信頼を築くのはどうでしょう?」


「まあ、一理ありますね」


 正直、ファーストコンタクトはそこまでいい気分ではなかった。

 門前払いされなかっただけましだけど、明らかに面倒がられていたからね。

 お互いのことをよく知らないし、まずは話をしようというのは建設的な話だ。


「では、まず自己紹介から始めましょう。私はマツ。この退魔士協会の会長をしております」


「か、会長さんでしたか」


「実務はほとんど、ここにいる椿姫君がやってくれてますがね」


「山野椿姫と申します。以後お見知りおきを」


 そう言って、頭を下げる椿姫さん。

 だいぶ若そうに見えるけど、有能そうな雰囲気をひしひしと感じる。

 若干雰囲気に流されながらも、私達も自己紹介を済ませ、ひとまずお互いに話をしてみることにした。


「さて、まずは退魔士協会というのがどういうものかを説明しましょう」


 マツさんがそう言うと、椿姫さんがいくつかの資料をこちらに手渡してくれる。

 退魔士協会というのは、日常に潜む魔なる者を退治し、世界の平穏を保つのが仕事であるらしい。

 現代において、妖怪の存在など物語の中だけのものだと信じている人も多いが、現実には、割と近くに存在しているのだとか。

 その多くは、ちょっとしたいたずらをする程度であり、そこまで脅威となるものではないのだけど、時には、人を食うような凶悪な妖怪も存在するため、そうした存在が人々を襲わないように、秘密裏に処理しているのである。


「昔に比べれば、だいぶ数は少なくなりましたが、それでも時には隠蔽が難しい事例も存在します。たまに、テレビなどでUFOを見たとか、心霊写真特集とか、そういうものを見たことはありませんか?」


「まあ、何度かは」


「すべてとは言いませんが、そのうちのいくつかは妖怪が関わっています。隠蔽にも限度というものがあるので、時にはああやって偽物と一緒に世に出して、関心が集まり過ぎないようにしているのですよ」


 世にいう心霊現象のほとんどは、妖怪の仕業であると結論が出ているらしい。

 見つからないように処理するって言うのは、なかなか難しそうではあるよね。


「大変なお仕事なんですね」


「ええ。ですが、我々なくして日常の安全は守られない。ただ、人手が年々減って行っているというのも事実なんですよね」


 退魔士となれるのは、霊力を持った人間に限られるらしい。

 霊力というのは、言うなれば魔力みたいなもので、それを込めて作られた呪符や数珠などを使い、魔物を封じ込めることができるらしい。

 一応、物理的にも倒せるため、中には刀を使ったり、時には銃などを使って排除することもあるらしいが、それでも霊力は必須であり、単なる武力だけでは解決しないようだ。

 霊力を持つ人物は、昔からそう言った役職についてきた家柄の人ばかりであり、大抵は先祖代々退魔士を続けているって言う人が多いらしい。

 ただ、ここ最近は、退魔士なんて誰にも感謝されない仕事よりも、きちんと勉強して新しい職に就きたいと思う人も多いらしく、年々人は減って行っているらしい。

 人手が少なくなれば、その分妖怪を退治できなくなる。しかし、人を増やそうにも、霊力を持つ人間は稀であり、仮に見つけられたとしても、協力してくれるかはわからない。

 この問題をどうにかしないと、いずれ退魔士がいなくなり、世に妖怪が解き放たれることになる。

 それだけは、どうにか止めなくてはならなかった。


「聞くところによると、ハクさん達はとある問題を抱えているらしいですね。魔石が足りないとか」


「はい。ここにいる転生者達は、いわゆる魔物に転生した人ばかりです。なので、魔石の供給がないと、衝動を抑えられなくなって、暴れ出してしまう可能性があるんです」


「それで、魔石が妖怪から取れるかもしれないと聞き、ここを訪れたと」


「そうです。妖怪から、魔石と似たようなものは取れるんですか?」


「確かに、妖怪にも核となる石のようなものは存在します。それ使えば、あるいは魔石の代用になるやもしれません」


 全く同じものかはわからないけど、一応そういうものがあるのは確かなようだ。

 後は、それが転生者達の肌に合うかどうか。

 果たして、どうなるだろうか。

 感想ありがとうございます。

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