表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十五章:退魔士協会編
1285/1586

第四百一話:魔物特有の問題

 第二部第十五章、開始です。

 ひとまず、猫の件は終息を見せた。

 裏路地に集まっていた猫はもちろん、王都に存在する大半の野良猫達は、ヒノモト帝国に移され、王都から野良猫はほぼいなくなったと言っていいだろう。

 果たして、これでよかったのかと思わなくもないが、少なくとも、猫達の幸せを考えるなら、これでよかったんだと思う。

 もしこれで、何か問題が起こるのだとしたら、その対応は国が考えるべきことであり、私達には関係ない。

 まあ、もし王様に相談されたら協力はするけどね。実際、どんな問題が起こるかは未知数だし。


「しかしまあ、よくこんな場所が作れたもんだね」


 私は現在、ヒノモト帝国にある、猫の村へと訪れている。

 王都の野良猫達を保護する目的で作られた村であり、まだ一か月ほどしか経ってないにもかかわらず、すでに多くの家々が立ち並んでいる。

 家の中には、猫達のための遊び道具や、寝床、餌場など、様々なものが完備されており、小さな王国のようになっている。

 現在はまだ無人だが、そのうち猫のための世話人をつけるという話も上がっているようなので、まだまだ快適さは上がっていくだろう。

 自由に外に出ることができるため、未開拓の場所に迷い込んで魔物に襲われたら、という心配もあるが、そこらへんは結界魔道具で対策しているらしい。

 これは、町と完全に区切るためのものでもあり、先に住んでいた転生者達にも配慮しているようである。

 まあ、そこらへんは猫が苦手な人もいるかもしれないからね。皇帝として、配慮しないわけにはいかないか。


「みんなおいでー」


「「「にゃー」」」


 私が呼び掛けると、猫達が寄ってくる。

 どうにも、バレットさんの件を解決したことが評価されているらしく、猫達は警戒もなくすり寄ってきてくれる。

 まあ、元々人懐っこかったって可能性もあるけど、私としては、猫に嫌われないで何よりである。

 今回は連れてきていないけど、そのうちルークも連れてきたらいいかもしれない。

 元々、この猫達をまとめるまとめ役みたいな子だったし、一匹だけ離されて会えないんじゃ可哀そうだしね。


「あら、ハクじゃない。来てたのね」


「ローリスさん。はい、ちょっと様子を見に」


 猫達と戯れていると、ローリスさんがやってきた。

 猫のために、ここまでの設備を用意するのは入れ込みようが凄いけど、ローリスさんは元々猫だし、仲間のために何かしてあげたいって気持ちはわかる。

 一か月くらいで、どうやってこんなに建てたのかはわからないが、やはり、魔法で作ったのかな。

 その気になれば、私も似たようなことはできるし。


「猫は寂しがり屋だからね。そうして会いに来てくれるのは嬉しいわ」


「この様子だと、受け入れは大丈夫そうですかね?」


「ええ。今までは、自分のことで精いっぱいだったけど、今なら、頼りになる仲間もいるし、猫達に回せる余力もある。もっと早く気づくべきだったわね」


 元々、ヒノモト帝国は、魔物に転生した転生者を保護する目的で作られた国だ。

 ローリスさん自身、人外に転生した一人であり、それ故に、そう言った転生者達を助けたいと考えた。

 元は人間ではあるけど、今は猫。同じ世界にいた元人間を救うのも大切だけど、仲間である猫を救うこともまた、大事であると気づいたようである。

 確かに、ローリスさんにしては気づくのが遅かったかもしれないね。まあ、規模が規模だから、仕方ないと言えばそうだけど。


「それはいいとして、ちょうどよかったわ。ハクに相談したいことがあったのよ」


「相談ですか?」


「ええ。前に、あっちの世界で魔石が必要って話があったじゃない? あれについてよ」


 現在、ローリスさんは、転生する前に生きていた元の世界に行ける転移魔法陣を発見し、それを使うことで元の世界に転生者を移住させる計画を進めている。

 元々、転移魔法陣は、起動に莫大な魔力を必要としていたが、神力を使うことによって、その問題を解決。厳しい修行によって、転生者達に神力を身につけさせ、ようやく安定して起動できるまでに至った。

 今のところ、10人ほどの転生者が、あちらの世界に行っており、ローリスさんの元々の父親である正則さんの手を借りて、居住場所や仕事の斡旋などをしてもらい、何とか生活できるように頑張っている

 ただ、以前、転生者達に問題がないかを聞いた時、魔石が欲しいという要望が上がった。

 転生者は、みんな魔物に転生しており、魔物は、本能として魔石を欲する性質がある。

 魔石は、魔物が食らうとその力を吸収することができ、生き残るために、強くなるために、魔石を欲するのはある意味当然と言える。

 しかし、魔物とは言っても転生者。元は人間であり、そのような欲求は薄いはずだった。

 実際、ヒノモト帝国にいた際は、そう言った要望は上がって来ておらず、特に問題視していなかった。

 しかし、ある程度あちらの世界で過ごした転生者からは、そう言った要望が出ている。

 恐らくは、あちらの世界には魔力が全くないから、生活する上での最低限の魔力すら確保できず、それで体が欲している、という感じなんだろう。

 魔石は、魔物が持つものであり、魔物がいないあちらの世界では調達することができない。

 このままでは、移住計画に支障が出るため、応急処置として魔石を送ってはいたようだけど、根本的な解決にはなっていなかった。

 だからこそ、魔石について、ローリスさんも、正則さんも、色々研究しているようである。


「あれから何度かあっちの世界に行って、魔石をどうにか調達できないか考えていたんだけど、一つ、もしかしたらどうにかできるんじゃないかって言うのを思いついてね」


「そんな方法あるんですか?」


「ええ。と言っても、まだ確認したわけじゃないから、本当にうまくいくかどうかはわからないけど」


 転生者達が欲しているのは魔石だが、魔石とは、言うなれば魔力の塊のようなもの。つまり、もっと細かく言うなら、魔力が欲しいわけである。

 だから、あちらの世界に、どうにかして魔力が生まれる場所があれば、それを用いて何とかすることも可能になるわけだ。

 だが、あちらの世界には、魔力がないというのはすでに何度も行って確認済みである。

 魔力に反応する探知魔法でも、全然反応がないし、そんな場所があるとは到底思えないんだけど。


「それを確認するために、ハクの力が必要なのよ。協力してくれないかしら?」


「まあ、そう言うことなら構いませんけど」


 ローリスさんも、まだ確信を持っているわけではなさそうだが、一応、希望はあるようである。

 一体何をする気かは知らないけど、私としても、あちらの世界で転生者達が暮らすことができるというのは重要な課題だし、解決の手助けになれるのなら、協力しない理由はない。

 ひとまず、何をするのかを聞いてみようか。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どんな方法かねぇ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ