表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十四章:夢と猫の世界編
1283/1583

幕間:一緒に探検

 エンシェントドラゴン、ホムラの視点です。

 世界には、人が立ち入れない未知の場所がごまんとある。

 深い森、切り立った山、絶海の孤島。人々も、開拓を進めて自分達の領域を広げてはいるが、世界から見れば、そんなのは一握りである。

 俺は、そんな場所を探検するのが好きだ。

 未知の場所にはロマンがある。わかりやすく、お宝があるってことばかりでもないが、その場所でしか見られない景色なんかは、お宝と言っても差し支えないだろう。

 そう言った経験を、ハクに話してやるのが、俺の楽しみの一つである。

 ハクは、長い間竜の谷から出られなかった時期があるから、せめて外の世界のことを教えてやろうと、始めたのがきっかけだったか。

 今では、すっかり立派になって、自分で外の世界を回ることも容易になったが、それでも俺の話に耳を傾けてくれるのは、本当に嬉しいことである。


「こっちに何かあるの?」


〈おう、以前見繕っておいたんだけどな。せっかくだから一緒に行こうと思って〉


 普段は、ハクは忙しい身であり、竜の谷に訪れるのもそんな高頻度じゃない。

 だから、俺の話を聞かせるのも、少し頻度が落ちてきたのだが、今回は違う。

 なんと、ハクと一緒に冒険することになったのだ。

 どうやら、ハクが住む町で、獣人の秘薬とか言うのが必要な奴が現れ、それを取ってきたお礼をしたいというから、一緒に冒険しないかと誘った次第である。

 どこの誰だかは知らないが、こうした機会を作ってくれたことには感謝したい。

 ハクと冒険なんていつ以来だろうか。以前は、ミスリルの洞窟なんかに行ったこともあったが、最近はご無沙汰だったよな。


「楽しみにしてるよ」


〈損はさせないから安心しとけ〉


 今、俺とハクが向かっているのは、とある滝である。

 以前、飛び回っていた時に偶然見つけた場所なのだが、滝の水が空中で消えているように見える、不思議な滝だった。

 景色としてもなかなかのものだと思うし、何より、滝の裏には洞窟があるのを確認している。

 何があるのかは知らないが、まあ、最悪何もなかったとしても、景色を楽しめるというだけでも価値はあるだろう。


〈着いたぜ〉


「おー」


 しばらく飛んで、ようやくたどり着く。

 相変わらず、不思議な滝だ。一体、落ちた水はどこに行っているのだろうか?


「凄い滝だね」


 ハクも、この景色に感動しているのか、嬉しそうな声を上げている。

 相変わらず、表情は全然変わらないのが玉に瑕だが、とりあえず喜んでくれて何よりだ。


〈実は、あの裏に洞窟があるんだ。行ってみようぜ〉


「へぇ。なんか、いかにもって感じだね」


 俺は、速度を落としながら、滝に近づいていく。

 近づくとわかるが、結構な落差がある。勢いも凄いし、このまま入ったら俺はともかく、ハクは体がバラバラになりそうだ。

 面倒なので、結界を張って、強引に滝を突っ切る。

 洞窟の入り口に辿り着くと、【擬人化】で人の姿になる。

 流石に、竜の姿では奥まで進めないだろうからな。


「見た感じ、天然の洞窟なのかな?」


「中には入ってないからわからんが、多分そうだな」


 見た限り、結構奥に続いていそうな気はする。

 果たして、何があるのかわからないが、冒険って言うのはそう言うもんだ。

 ハクも、それは理解しているだろう。心なしか、目を輝かせているようにも見えた。


「それじゃあ、進んでいこうか」


「おう」


 そこまで狭いわけでもないので、二人並んで先に進んでみる。

 洞窟は薄暗かったが、そこはハクの光魔法でどうとでもなる。

 何があるのかと見ていると、すぐに景色が変わっていくのが見えた。


「これは、崖か?」


「滝の中に滝があるって珍しいね」


 洞窟を進んですぐに、巨大な絶壁が広がっていた。

 壁には、どこからか水が流れており、冷えた風が吹いている。

 滝、というほどの勢いはないにしろ、滝の中の洞窟にこんなものがあると考えると、ちょっと珍しい場所かもしれない。


「これはこれで神秘的な場所かもね」


「上に何かありそうだが、行ってみるか?」


「まあ、せっかくだから?」


 この水がどこから来ているのかも気になるし、ひとまず上に向かってみることにする。

 背中から翼を出し、飛んでいく。

 と思ったんだが、ここは結構狭い。人の姿ならともかく、翼まで出すとなると、流石に無理がある。

 この状態で飛ぶのは流石に難しいか。


「よっと。ここから登れそうだよ」


「ジャンプして登っていく感じか」


 ハクは、手近なでっぱりに手をかけると、勢いをつけてジャンプして登っていく。

 あんまり水が流れてる場所に手をつけたくないんだが……まあ、仕方ないか。

 俺も、ハクの後を追って、登っていく。

 案外、天然の場所でも次々に登って行けるようで、あっという間に上まで辿り着くことができた。


「おおー……」


「これはなかなか……」


 上まで登ってみると、そこには広い空間が広がっていた。

 木の根がここまで降りてきているのか、辺りには巨大な根っこが飛び出しており、自然の脅威を感じる。

 しかし、それよりも目を引くのは、中央にある泉だ。

 淡く光り輝く、美しい泉。どうやら、壁に流れていた水は、ここから流れているようだった。

 辺りには蝶が飛び交い、とても神聖な感じがする場所である。

 今まで、いろんな絶景を見てきたが、これはなかなかのものだと思った。


『ここ、かなり魔力が濃いね』


「ああ、確かに。魔力溜まり程じゃないけど」


 確かに、言われてみれば魔力が濃い気もする。

 もしかしたら、近くに竜脈が通っているのかもしれない。

 ただ、その割には、精霊や妖精の姿がないな。こんな好条件なら、いてもおかしくはないと思うんだが。


『こんな場所始めて見た。多分、他の精霊も知らないんじゃないかな?』


「秘密の場所ってことだね」


「秘密の場所、いい響きじゃねぇか」


 秘密の場所は誰もが憧れる場所である。

 妖精達も、フェアリーサークルって言う秘密基地を持っているし、俺もそう言った秘密基地の一つや二つ欲しいと思っていた。

 まあ、あんまり行く機会はないだろうが。


「ねぇ、写真撮ってもいい?」


「しゃしん? なんだそりゃ」


「えっと、この風景を保存した絵みたいなものかな」


 どうやら、ハクの元居た世界では、そう言ったものがあるらしい。

 確かに、昔そんなものがあったような? よく覚えていないが。

 まあ、この風景を保存できるって言うなら、いいことだろう。

 いつでも来れる場所とはいえ、流石に移動が面倒くさいし。


「それじゃあ、一枚」


 ハクは、【ストレージ】から板状の何かを取り出し、それを泉の方に向ける。

 パシャリと音がしたと思うと、もう保存は完了したとのことだった。

 随分と便利なことだ。


「今回の冒険はどうだった?」


「楽しかったよ。こんな素敵な場所も見つけられたしね」


 上機嫌な様子のハクに、俺も嬉しくなってくる。

 この調子で、もっと冒険に連れて行ってあげたい。また、よさげな場所を見つけておかないとな。

 そんなことを思いながら、ハクの様子を眺めていた。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
異世界でもスマホは便利だねぇ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ