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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十四章:夢と猫の世界編
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幕間:猫を飼おう

 主人公、ハクの視点です。

 今まで、猫を飼ったことは一応ある。子供の頃、実家で二匹ほど飼っていた。

 猫を飼うことになった経緯は、一夜ひよなが捨て猫を拾ってきたところから始まる。

 実家は、都会から若干離れているせいもあって、地域に猫が根付いていた。

 それ故に、人々も猫と共生することに抵抗はなく、時には親切な人が餌を上げたりしながら、地域全体で面倒を見ていた。

 しかし、一夜ひよなが拾ってきた猫は、そう言った地域の猫とは少し違う様子だった。

 明らかに、捨てられたであろう段ボールの中に閉じ込められていた上、どちらもカラスか何かに襲われていたのか、傷が目立った。

 本来なら、捨て猫なんて拾ってくるべきではないんだろうけど、お母さんは猫のことを心配し、病院に連れて行って、治療を施してもらった。

 そして、その後なし崩し的に飼うことになり、という感じである。

 どちらも子猫だったため、一夜ひよなも可愛がっていたのだが、それから数年ほど経ったある日、旅立ってしまった。

 元々、体がそんなに強くなかったようで、医者からも、そう長くはないと言われていた。

 それでも、数年も生きていられたのだから、長生きした方なのかもしれないけど、それでも、猫を失った悲しみは深く、一夜ひよなも、お母さんも、もう二度と動物は飼わないと決めたほどだった。

 それを考えると、私が猫を飼おうとしているのは、ある意味無謀なことなのかもしれない。世話のノウハウなども知らず、飼おうとしているわけだからね。


「でも、猫が癒しなのは間違いないよね」


 それでも飼おうと思ったのは、保護する目的もあるが、癒しを求めていたというのもある。

 ただその場にいるだけで愛らしく、時にはこちらを振り回してくる存在。

 そこまでストレスが溜まっているというわけではないが、いるのといないのとでは、いた方が断然いいよねって話である。

 まあ、最悪何とかならなかったら、ローリスさんという猫の言葉がわかる人がいるわけだし、不満点を聞きだすことくらいはできるだろう。

 保険があるっていいことだよね。


「それで、来てくれたのは君か」


「にゃーん」


 その気になれば、数匹くらいなら飼うことも可能ではあるが、やはり、ノウハウがあまりないので、ひとまず一匹だけということになった。

 そして、裏路地の広場で、誰かうちに来るかと聞いたところ、真っ先に名乗りを上げたのが、この猫である。

 薄青色の毛並みに、深海のような青い瞳。あの時、私を裏路地まで案内してくれた、あの賢い猫である。

 まさか、そんな賢い猫が来てくれるとは思わなかったが、あちらにも考えがあるのか、何かを訴えるように見つめてきたので、そのまま飼うことにしたのである。


「うまく要望に応えられるかわからないけど、よろしくね」


「にゃー」


 猫を飼うにあたって、まず用意したのは、トイレだ。

 流石に、家の中に無差別にされたら堪ったものではないので、そこらへんは最優先だ。

 本来なら、ここがトイレだと教え込むために、少し時間がかかるのかもしれないけど、この猫は、本当に賢くて、一回教えただけですぐに理解したようだった。

 その他にも、餌の場所や入ってはいけない部屋など、教えればすぐに実行してくれるので、猫の世話とはこんなにも簡単なものだったかとちょっと困惑する。

 この猫、本当にただの猫なんだろうか? 中に人間入ってたりしない?


「ま、まあ、教えることはこのくらいかな。基本的には自由にしてていいけど、あんまり外には出ちゃだめだよ」


「にゃーん」


 一応、首輪をつけていれば、外出していても駆除の対象にはならないが、それでも万が一ということもある。

 一番いいのは、家から出さないことなんだろうけどね。別に、家が狭いわけではないし、外に出て散歩しなくても、そこまでストレスはかからなそうではあるし。


「後は、名前を付けないとか」


 ここまで、家の中を案内してきたけど、そろそろ名前を考えないといけない。

 名前、あんまり考えるの得意じゃないんだよなぁ……。

 ゲームで主人公に名前を付けるってだけなら簡単だけど、某ポケットに入るモンスターのゲームでは、それぞれに名前を付けるだけで、相当な時間がかかったのを覚えている。

 何かモチーフがあればいいんだけど……。


「うーん……」


 青色の猫ってだけなら、いくつか心当たりがあるけど、その中から決めてしまうか?

 いや、そのままつけるとあれだから、少しくらいは変えた方がいいのかな。

 私は、どれがいいかと思考を巡らせる。そして、考えるより、ぱっと思いついたものをつける方がまだましな気がしてきた。


「……よし、君の名前は、ルークだ」


 チェスのルークのことではない。ただ、同じ青色の毛並みの猫で、それに近い名前を持った子がいたから、ちょっとだけ変えてルークってことにした。

 この名前がいいのかはよくわからないけど、ルークは承知したと言わんばかりに返事をしたし、多分大丈夫だろう。

 猫のルーク。どうか、この家の癒しとなって欲しい。

 そんなことを考えながら、頭を撫でた。


 それから数日。ルークは、元気よく家の中を駆けまわっていた。

 あの時の凛々しい雰囲気はどこへやら、無邪気に走り回って、私の前では、お腹まで見せて構ってアピールをしてくるほどである。

 どちらかというと、裏路地の猫のまとめ役って感じで、落ち着きのある子だと思っていたし、実際、家のことを教えている最中は、そんな感じの雰囲気だったのに、どうしてここまで変わったのやら。

 猫じゃらしにじゃれたり、物を落としたり、猫らしい猫と言った一面が見えてきている気がする。

 この数日で慣れたんだろうか?

 確かに、お兄ちゃん達もルークのことはめちゃくちゃ可愛がっているし、裏路地と違って、危険な人物が入り込んでくる心配もない。

 野良猫として警戒しなくてはならないことがなくなって、少しはっちゃけているように見えているのかもしれない。

 あるいは、私が癒しとなってくれと望んだから、そうあろうとあえて猫らしい行動をしているんだろうか?

 もしそうだとしたら、どれだけ律儀なんだと言いたいが。


「まあ、よかったのかな」


 あれから、バレットさんも、ヒノモト帝国に何匹かの猫を譲渡した。

 一緒に様子を見に行ったけど、すでにいくつかの建物が建てられていて、中は猫達のための遊び道具がたくさん置いてあった。

 仕事が早すぎると思わなくもないが、ローリスさんのことだから、あらかじめ作らせておいたんだろう。

 猫達も、新しい環境に少しおっかなびっくりと言った感じだったが、しばらくすれば、元気よく遊んでいたので、恐らく大丈夫だと思う。

 後は、様子を見ながら、残りの猫達も送り届ければ、駆除の問題は解決するだろう。

 バレットさんには、転移魔法陣を渡してあるし、魔石に関してもある程度の量を渡してある。

 後々は魔石は自分で何とかしてほしいけど、これで会いに行けなくて寂しいとはならないだろうし、万事解決と言っていいだろう。

 それぞれの居場所を得て、猫達を救うことができた。

 まあ、世界中に視点を広げれば、まだまだそう言った猫はいるかもしれないけど、流石にそこまでは手が届かないのでどうしようもない。

 せめて、自分達の手が届く範囲くらいは、幸せでいてほしいね。

 はしゃぎまわるルークの姿を見ながら、そんなことを思っていた。

 感想ありがとうございます。


 前回、章終わりの報告をしていなかったので、あとがきを追記しました。

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