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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十四章:夢と猫の世界編
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第三百八十八話:夢の終わり

「伝えたいことはそれだけです。わざわざ呼び込んで申し訳ありませんでした」


「いえいえ、協力者が増えるのはありがたいですし、わざわざ助けに来ていただいてありがとうございます」


 話したいことは全部話したのか、ウルさんはこちらに頭を下げる。

 神様との協力については、夢から覚めた後にルーシーさんを通じて行えばいいだろう。

 ウルさんも、高い戦闘力を持っているというわけではなさそうだけど、猫を用いた情報収集能力は高そうだし、今後の対応にかなり役に立つはずである。

 こうしてみると、神様も十人十色なんだね。今のところ、話が通じている人ばかりなのが奇跡かもしれない。


「今後も、何かあったら夢の中で落ち合うとしましょう。ここならば、クイーンも手は出せないはずです」


「わかりました。その時は、よろしくお願いします」


 夢の中なら、誰も邪魔できないだろうし、確かに密談にはもってこいの場所かもしれない。

 アンナちゃんがいたのはかなり運がよかったかもしれないね。


「アンナ、皆さんを現実世界に帰してあげてください」


「夢の終わり、夢の終わり、猫に囲まれた幸せな夢。みんな楽しんでくれたかしら?」


「まあ、猫に囲まれたのは素直に嬉しかったよ」


 転生する前は、実家で猫を飼ったりしたこともあったが、すぐに亡くなってしまったし、そもそも飼っていたのは一匹だけ。

 こんな風に、何匹もの猫に囲まれて、って言うのは、体験したことがなかった。

 しかも、その誰もが逃げることなく、甘えるように喉を鳴らしながら近寄ってきてくれるのだから、それだけで幸せな夢と言ってもいいだろう。

 アリアやカムイがどう思っているかはわからないけど、私としては、とても満足いく夢だった。


「よかったのだわ、よかったのだわ、夢は幸せでなければならないの。辛くなったら、いつでも来るといいのだわ」


「その時はよろしくお願いしますね」


 アンナちゃんも満足したようなので、さっそく夢から覚める時だ。

 スゥッと意識が薄れていき、やがて浮上する。

 気が付くと、そこはベッドの上だった。

 目をこすりながら起き上がってみると、夢の世界に行くために寝ていた、あの部屋である。

 どうやら、無事に帰ってくることができたようだ。

 心なしか、体も軽いし、寝たことで疲れが取れたのかもしれない。

 まあ、夢の中であれだけ動いていたのだから、寝たという気はあんまりしないんだが。


「お目覚めですか?」


「あ、エル。うん、ただいま」


 ふと、隣を見ると、エルが立っていた。

 どうやら、ずっと待っていてくれたらしい。

 何かあったら起こしてほしいと頼んではいたけど、ずっと立たせていたとしたらちょっと申し訳ないな。

 せめて、椅子にでも座っていればよかったのに。


「うーん……戻って来たかしら?」


「ふわぁ……」


「あ、みんなも起きたみたいだね」


 隣を見れば、カムイもアリアも目を覚ました様子である。

 そして、カムイの隣には、アンナちゃんの姿もあった。

 若干色が薄く、宙に浮いていることから、なんだか幽霊みたいな印象を受けるけど、やはり、夢の中が本来の場所なんだろうか。

 まあ、無事に見つかったようで何よりである。


「探し人は見つかったようですね」


「うん。それより、重要なことがわかってね」


「重要なこと?」


「詳しくは話せないけど、手掛かりを見つけたってところかな」


 今回、ウルさんは夢の中で接触を試みたわけだが、それは邪魔が入らないようにというのと同時に、自分の存在を隠す意味もあるらしい。

 ウルさんは、猫がいる場所ならどこでも行くことができ、また、猫は夢の世界の住人でもあるらしい。

 故に、夢の世界にも自由に現れることができ、だからこそ、まだクイーンにも気づかれていない可能性が高かった。

 ウルさんは、ノームさんと同じく、クイーンと敵対しており、自分の存在がばれるのは、あまりよろしくないことである。

 だから、現実世界では、あまりウルさんのことを話さないように頼まれたのだ。

 神様との橋渡しをする以上、どこかのタイミングで現実世界に現れる必要はあるだろうが、その気になれば、猫を介して会話することも可能だとのことなので、最低限神様に伝えることができれば、後はどうにかしてくれるだろう。

 幸い、今はクイーンは別のことに注力しているらしいし、今話す分にはそこまでリスクはないはず。

 だから、さっさとルーシーさんに伝えることにした。


「ルーシーさん、いますか?」


「はい、こちらに」


 声をかけると、ルーシーさんはすぐに現れてくれた。

 私は、夢であった出来事を少しぼかしながら簡単に話す。

 異世界の神様による接触。それは、クイーンに手を焼いていた天使達にとっては願ってもないことであり、また、あれだけ見つけられなかったクイーンの居場所がわかるのも大きいことだった。

 話はすぐにつけるとのことで、ルーシーさんはそうそうに姿を消す。

 さて、これであとはウルさんが接触するのを待てばいいだろう。

 こちらでするべきことは、これで全部だろうか?


「夢の中でも忙しいですね」


「なんでこうなるんだろうね」


 まさか、アンナちゃんを探しに行っただけなのに、異世界の神様に会うことになるとは思っていなかったからね。

 最近は、クイーンが家に来たというのもあったし、ちょっとずつ、日常が侵食されていっているのかもしれない。

 流石に、これ以上接触してくるとは思えないけど、覚悟はしておけという話だったし、気は抜かないでおこう。


「ハク、今回はありがとうね」


「ううん、無事に見つかって何よりだよ」


 無事にアンナちゃんが見つかったということもあり、カムイに礼を言われた。

 まあ、今回の件は、ウルさんによる策略があったから、というのもあるけど、変な事件に巻き込まれて、身動き取れないとかじゃなくて本当によかったと思う。

 アンナちゃんも、久しぶりにカムイに出会えたのが嬉しいのか、ニコニコと笑顔を浮かべているし、無事に見つかってよかった。


「また夢の中で話し合うようなことを言っていたけど、そうじゃなくても、いつでも来ていいからね」


「カムイのお友達、カムイのお友達。夢の世界にご案内。私はいつでも大歓迎なのだわ」


「まあ、そのうち寄るかもね」


 夢を見せる仕事というのが、まさか本当にそのままの意味だとは思わなかったが、幸せな夢を確実に見れるというのは、確かにありがたいことなのかもしれない。

 一夜ひよなとかに体験させて上げたいと思わないこともないが、そう言えば、今度はこちらの世界に連れて行くようなことを言ってしまったし、その対策も考えないといけないな。

 まだ時間はあるけど、気が付いたらやってきそうで怖いところ。


「それじゃあ、帰ろうか」


 やるべきことは終わったので、家に帰るとしよう。

 そう言えば、今は何時くらいなんだろうか?

 夢の中と現実世界では、時の流れが違うようなことを話していたけど、あれだけの時間夢の中にいたのだから、一日くらいは経っているんだろうか。

 外に出て、空を確認してみる。

 そろそろ夕方ってところだろうか? 一日経っているのか、それともその日なのか、よくわからないけど、早いところ帰らないと、ここに泊まることになりそうだ。

 私達は、カムイに別れを告げて、屋敷を出る。

 さて、明日はどうしようか。そんなことを考えながら、帰路につくのだった。

 感想ありがとうございます。

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クイーンの動きはどうなるかねぇ
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