表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十四章:夢と猫の世界編
1263/1584

第三百八十二話:誰の願いか

 今年もありがとうございました。よいお年を。

 図書室は複数あるので、手分けして探そうとも考えたが、今の状況を考えると、私を一人にするのは危険だと判断して、三人で移動することにした。

 今の私は、図書室の管理をするメイドであり、頼まれごとは基本的に断れない状況になってしまっている。

 今は学生の数が減ったとはいえ、もしかしたらまた何か頼まれごとをしてしまうかもしれないし、一人になるのは危険だと考えた。

 同じように、アリアも厳しい可能性がある。

 メイドではないけど、アリアも本の管理をするオペレーターであり、図書館のスタッフと考えられないこともない。

 実際に、何か頼まれごとをしたわけではないが、同じように断れない可能性も存在するわけだ。

 幸い、カムイはそう言ったこととは無縁で、頼まれごとをしても特に衝動に駆られる心配はない。

 恐らく、カムイは管理者側だろうし、カムイと一緒にいれば、ひとまずは安心だろう。

 そう言うわけで、三人で移動するのが好ましいと考えたわけだ。


「しかし、広すぎないかな、この図書館」


 一応、中央の図書館に行くまでに、すべての図書室を回ったけど、それぞれをくまなく探そうとなると、相当な時間がかかる。

 図書室の数は、10を余裕で越える上、それぞれが結構広い。

 しかも、同じような造りというのも相まって、ここは調べたっけと混乱することもある。

 一応、よく見れば違う部分もあると言えばあるのだけど、迷路にでも潜り込んでしまったかのような危うさがあった。


「なんで図書館なんだろうね?」


「カムイ、アンナちゃんは図書館と何か関係があるの?」


「いや、そんなことはないと思うけど」


 カムイの知る限り、アンナちゃんの行動範囲は、あの屋敷の敷地内までだったらしい。

 恐らく、やろうと思えば他の場所にも行けるのかもしれないけど、それでも、アンナちゃんにとって、あの屋敷は特別なもののようだから、好んで離れたいとは思わないんだろう。

 一応、屋敷の中にはいくつかの本はあったけど、ここまで広い図書館と関係があるかと言われたら、そんなことはない。

 もちろん、本の内容を逐一見ていたわけではないから、中には巨大な図書館の記述があった可能性はなくはないけど、だからと言って、アンナちゃんがそれに執着しているかと言われたら、そんなことはないとのこと。


「何か図書館について話してたりは?」


「ないと思うけどなぁ。話すことと言ったら、この人の夢がこうだったとか、そんな話くらい」


 アンナちゃんは、人々が見る夢の内容を把握できるらしい。

 アンナちゃん自身は、夢を見ることによって、その人が幸せになってくれることを望んでいるらしく、夢の内容自体にそこまで興味はないみたいだけど、カムイとの話題の一環として、話すことは割とあったようだ。

 時たま、庭に花が咲いたとか、猫がやって来たとか、そう言う話もあったようだけど、どれもたわいのない話だったらしい。

 図書館との繋がりが全然見えないけど、どういうことなんだろうか。


「考えられる可能性としては、誰かが図書館を望んだかってところだけど」


 ここが夢の世界である以上、誰かの願いが具現化したということになる。

 実際、私はカムイの願いによってこんな姿になったようだし、アリアも背が高くなったのは願った結果だろう。

 それと同じように、誰かの願いで、図書館に行きたいというものがあり、それが具現化した結果、こんな場所になっているんじゃないかってことだ。

 しかし、私はもちろん、他の二人も、そんな願いを持つとは考えにくい。

 別に、図書館に対して大した思い入れがあるわけではないし、あったとしても、こんな巨大図書館を思い浮かべるとは思えない。

 本が読みた過ぎて、本に囲まれたいとでも思っていたなら別だが、少なくとも、私達三人にその願いはないはず。

 となると、一体誰の願いだというのだろうか。

 考えられる可能性としては、アンナちゃんだろうか?

 アンナちゃんに会いたいと願って夢の世界に来たのだから、登場人物として、アンナちゃんがいる可能性は高い。それでいて、アンナちゃんが図書館を願ったなら、それが具現化される可能性はある。

 しかし、さっきも言ったように、アンナちゃんと図書館に繋がりはないはず。  

 となると、第三者の願いということになるんだけど、そんなことありえるんだろうか。

 こうして夢の世界に来れている以上、アンナちゃんの能力は健在のはず。それが、他の人の願いを具現化するとは考えにくい。

 今の私達のように、同じ夢を見ているって言うならわかるけど、そんな人物、いるはずがないのだが。


「うーん、よくわからない」


 なぜ図書館なのか、今の情報だけでは、わかりそうもない。

 まあ、案外アンナちゃんが本でも見つけて、図書館みたいな大きな場所で本を読みたいと願った、という可能性もなくはないし、考えるよりも、アンナちゃんを探す方に注力した方がいいのかもしれない。

 どうせ、考えたところで現状は変わらないわけだし。


「あっ、そろそろ帰らないといけないかも」


「どうして?」


「なんだか、そんな気がするの」


 気が付くと、図書館から学生はいなくなっていた。

 カムイの発言に、違和感を覚えたが、その直後に、私も同じように、帰らなければという感覚が生まれた。

 恐らく、閉館の時間が来たんだろう。長居をするにしても、もう時間切れってことだ。

 でも、どこに帰ればいいんだろう? この世界には、私の家とかはないはずだけど。


「ひとまず、みんな私の部屋に来たらいいと思う。あそこなら、みんなで寝れるだろうし」


「そう、だね。他に行く場所もないし」


 もしかしたら、メイド用の部屋もあるかもしれないけど、できれば三人で固まっていたいし、カムイの部屋に集まった方がいいだろう。

 幸い、決められた場所に帰らなければならないという感覚はしない。

 私達は、カムイの部屋へと戻る。

 さて、結局アンナちゃんは見つからなかったけど、どうしたものか。


「これからどうする?」


「まあ、引き続き探すってことになるんでしょうけど、手掛かりが全くないのがねぇ」


 今日のところは、3つほどの図書室を重点的に探したわけだけど、それらしき人物はいなかった。

 というか、探すのに時間がかかりすぎるため、アンナちゃんが一か所に留まってでもいない限り、見つけるのは大変そうである。

 何か手っ取り早く探す方法があればいいのだけど、何かないだろうか。


「地道に頑張っていくしかないでしょう。望んだ以上は、この世界にきっとアンナちゃんはいるはずだし」


「まあ、それもそうか」


 絶対にいるって確信があるのが今のところの救いである。

 今日はダメだったけど、明日は気合を入れて探してみるとしよう。


「夢の中でも寝るってなんだか変だね」


「確かに。どっちが夢かわからなくなりそう」


「そう言えば、元の世界に戻るにはどうすればいいの?」


「そう念じればいいわ。そうでなくても、一日経てば戻れるようになってるはず」


「一日って、寝ちゃったらすぐじゃない?」


「夢の中の時間は現実とは違うから」


「なるほど」


 確かに、夢の中の時間って曖昧だけど、夢の世界で一日経ったからと言って、現実でも一日経つとは限らないらしい。

 まあ、そう言うことならあんまり気にしなくてもいいか。

 もし、見つける前に戻ってしまったら、その時はまた寝ればいいだけの話だし。


「それじゃあ、寝ようか」


「ベッド一つしかないから、三人で寝ることになるわね」


「ハクは真ん中ね」


「なんで……」


 幸い、ベッドがでかいから、三人でも寝れそうではある。

 私は、二人に挟まれながら、眠りにつくことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アリアと添い寝ってレアケース
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ