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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十四章:夢と猫の世界編
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第三百七十九話:夢の世界へ

 夢の世界には、この屋敷でベッドに入って寝ることによって行けるらしい。

 基本的に、姿は寝る時に身に着けていたもので、持ち物もその時持っているものが反映されるようだが、こうありたいと望めば、望んだ姿になったり、望んだものを持ち込むこともできるらしい。

 なんとも便利なことだけど、そもそも何か特別なものを持ち込む必要はないと思う。

 まさか、望んだ世界で戦闘が起こるとも考えにくいし、うまくいけば、すぐにアンナちゃんに会って帰ることも可能だと思う。

 だから、設定すべきなのは、全員が同じ夢の中に入り、そしてアンナちゃんに会いたいということだね。


「カムイ、準備はいい?」


「いつでもいいわ」


 今回、夢の世界に向かうのは、私とカムイ、そしてアリアの三人である。

 エルは、万が一のために、残ってもらうことになった。

 ないとは思うけど、眠ったまま目覚めないってなったら、強引に起こしてもらう予定である。

 それに、今いるお客さんを放置するわけにもいかないからね。

 カムイは、アンナちゃんのことを一番よく知っている人物だから行かなければならない。となると、エルくらいしか残ってもらう人がいなかった。

 エルは若干不満そうだったが、まあ、夢の中で危険な目に遭うことはないだろうと、渋々ながらも頷いてくれた。


「気を付けて行ってらっしゃいませ」


「うん、後はお願いね」


 エルに現実のことを任せ、私達はベッドの中へと入る。

 このベッド、かなりふかふかだ。流石、睡眠に関する仕事をしているだけあって、そのあたりはこだわっているのかもしれない。

 しばらくして、眠気が襲ってくる。

 そこまで眠くなかったはずなんだけど、やはり、アンナちゃんの仕業なんだろうか。

 私は、抗うことなく目をつむる。しばらくすると、意識が途切れた。


 気が付くと、見知らぬ場所に立っていた。

 辺りを見回してみると、いくつもの巨大な本棚が並んでいる。どうやら、図書館らしい。

 辺りには、椅子に座って本を読んでいる人や、カードゲームをしている人がおり、その人達は皆、学生服を着ている。

 学園の図書室? いや、私が行っていた学園の図書室は確かに広かったが、こんな雰囲気じゃなかったことは覚えている。

 制服のデザインも違うし、関係はなさそうだ。


「ここが、夢の中?」


 なんだか、あまり見覚えのない景色で困惑するが、逆に言えば、夢の中だからこそそんな景色なんだと納得できる。

 夢の世界に行く試みは、うまくいったようだ。

 後は、アンナちゃんが見つかればいいんだけど。


「すいません、この本返しておいてくれます?」


 動き出そうとしていたら、不意にそんな風に声をかけられた。

 振り返ってみれば、そこには学生らしき人物が、数冊の本をこちらに差し出している場面だった。

 確かに、図書館っぽいし、本を返すのは間違っていないけど、なんで私に?

 別に、代わりに返してあげるくらいはいいけど、そもそも私はこの図書館のことを全然知らないんだが……。


「かしこまりました」


 しかし、私の体は、そんな思考を無視して、本を受け取ってしまった。

 え、なんで?

 体の自由は、効く。しかし、さっきの頼まれごとをした瞬間だけは、なぜだかこの人の言うことを聞かなければならないと思ってしまった。

 去っていく学生を前に、手渡された本を見ながら違和感を感じる。

 私って、こんな格好だったっけ?


「……え?」


 その格好は、言うなればメイド姿だった。それも、普通のメイド服ではなく、コスプレとかで使いそうなミニスカメイドである。

 しかも、何がおかしいって、お尻からは尻尾が生えていた。

 ピンク色の、うねうねとした尻尾。恐らく、猫の物だろうか、それが、スカートの隙間で小さく揺れている。

 慌てて、頭を触ってみると、そこには柔らかな手触りの耳があった。

 形からして、これも猫の耳。しかも、ちゃんと感触がある。

 これは、一体どういうことだ?


「なんでネコミミメイドになってるの……?」


 確かに、夢ってたまにわけわかんない設定の時があるけど、今見ている夢は、私の望みが具現化しているもののはずだ。

 それが、なんでメイドでネコミミなんだ。少なくとも、私はこんなこと望んでいないぞ。

 だったらカムイか、あるいはアリアの仕業かとも思ったが、そもそもその二人が周りにいない。

 別の夢の世界に行ってしまったのか、それとも離れた場所に降りてしまったのかはわからないが、これでは問い詰めようもない。


「とにかく、みんなを探さないと……」


 私は、みんなを探そうと、足を進める。

 しかし、その前に本を返さなければと思い、本棚に向かって歩き出した。

 いや、こんなことしてる場合じゃないのはわかっているけど、なんとなくこの使命は全うしなければという気持ちがある。

 もしかして、メイドだから主人の言うことは聞かなければならないとかそんな感じかな?

 この場合、主人というよりは、この図書館を利用する人達の手伝いをするって言うのが正しそうだけど。

 とにかく、いつまでもここにいたら、また何か頼まれごとをされてしまうかもしれない。

 早いところ、図書館から出よう。


「お、そこのねーちゃん、ちょっと話し相手になってくれよ」


「かしこまりました」


 と思ってたら、またしても邪魔が……。

 私の意思をは無関係に、足はそちらに向かっていく。

 これ、逆らうことできないのかな。なんか、体がふわふわして落ち着きがない。

 まるで、誰かにラジコンか何かで操作されてるみたいだ。

 いったん夢の世界から脱出するのも手かと思ったけど、恐らく、結果は変わらない気がするし、何とかこの夢で解決策を探さないといけないだろう。

 ため息の一つもつきたくなるが、表情は笑顔で対応する。

 よくよく考えると、私が笑顔を見せられるとか、そこそこ事件だよね。いつも表情変わらないのに。


「あんた、サモナーズウォーは知ってるか?」


「存じております」


「そりゃいいや。最近始めたんだけど、全然勝てなくてな。よかったら、デッキの組み方を教えてくれねぇか?」


「お任せください」


 そう言って、机に誘導する学生。

 というか、サモナーズウォーがあるのか。やっぱり、ある程度は私の記憶も関係しているのだろうか?

 今からデッキを作るというのか、箱からいくつかのカードの束を取り出す。

 イラストも特殊能力も、私が想像した通りのものだ。

 幸い、サモナーズウォーのことなら、よく知っている。あちらの世界のカードゲームを基に、私が作ったんだからね。

 ある程度のコンセプトさえわかれば、デッキを作ることくらい造作もない。


「どのようなデッキが作りたいのですか?」


「そうだなぁ、とりあえず、友達に勝てるなら何でもいいんだが」


 そう言って、からからと笑う学生。

 よく見ると、この学生の顔もどこかで見たことがあるような気がする。

 私の記憶の人物がある程度反映されているんだろうか。それとも偶然か?

 よくわからないけど、早いところ終わらせて、図書館を出なくては。

 私は、カードの束を眺めつつ、デッキづくりをアシストしてあげるのだった。

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