表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第四章:ドワーフの国編
126/1545

第百十三話:魔道具店

 まず最初に訪れたのは魔道具屋だ。求めているのはすり鉢で、別にすり鉢は魔道具でもなんでもないものだけど、もしかしたら何かあるかもしれない。それに、なんだかんだで魔道具をじっくり見る機会なんてなかったからちょうどいいと思ったのだ。

 店に入ると、恰幅のいい女性が挨拶をしてくれる。やはり身長が低く、品物が置かれている棚もそれに合わせて低く作られているようだった。

 低いと言っても私よりは高いけどね。

 おかげでだいぶ見やすい。お姉ちゃんはちょっと腰を曲げなければならないから大変そうだけど。

 魔道具屋というだけあって様々な魔道具が並んでいる。また、その素材である魔石も多く取り扱っているようだった。基本属性である火、水、風、土はもちろん、特殊属性の魔石も揃えているようだ。

 魔石の主な入手手段は魔物を狩ることと鉱山で魔石を採掘することの二つ。魔物を狩って入手する場合はその魔物の属性がそのまま魔石の属性となる。だから、火の魔石が欲しければ火属性を使う魔物を倒せば手に入るし、水の魔石が欲しければ水属性を使う魔物を倒せば手に入るというわけだ。

 しかし、魔石の大きさは魔物の強さに応じて変わる。強ければ強いほど魔石の大きさも大きくなり、弱くなればなるほど小さくなっていく。小振りなものならともかく、大型のものになると入手は難しい。

 逆に鉱山で魔石を採取する場合は比較的大きな魔石が取りやすい。ただし、そうして採取した魔石には属性が付与されておらず、後から属性を付与する必要がある。

 一応、属性がない状態でも魔法の触媒にするなど、魔力のリソースとして使う方法もあるけど効率が悪いし、魔道具として利用する場合も属性を付与した方が使い勝手がいいらしい。

 詳しい過程は知らないけど、属性付与は難しいらしく、手間がかかるため大型の魔石は高くなる。それも特殊な属性ともなればそもそも付与することが出来る人自体が少なく、さらに高価になるのだとか。

 特殊属性の魔石に関してはそれを司る魔物があまり存在せず、小振りなものでも高い。だから、こうして品揃えに並んでいるだけでも凄いことらしい。

 魔物が存在しなければ鉱山で取れた魔石から作るしかないわけで、そのためにはその属性の適性が必要となる。特殊属性は滅多に現れない属性であり、必然的に作れる人も少なくなるというわけだ。

 でも、そんなに難しいのかな? 私がやった時は割と簡単に魔石の属性は変えられたけど。

 私が全属性を使えるから簡単に感じるだけであって、本来は難しいってことなのだろうか。確かに、一個作るだけでも割と魔力を消費した気がする。魔力が少ない人がやるには少し難しいかもしれない。それに私が使ったのは小さな魔石だったし、その分簡単だったのかもしれないしね。

 改めて魔石を見てみる。置いてあるのは指先ほどの大きさの小振りなものから拳大のものまで幅広く揃っている。

 特殊属性になると大きいものはかなり少なくなり、光と氷の魔石に至ってはほとんどない。

 光の魔石は魔石のままでも明りとして使用できるし、氷の魔石も物を冷やすのに使える。もちろん、それを使ったちゃんとした魔道具もあるにはあるけど、贅沢を言わないのであれば魔石だけでも十分に機能する。

 まあ、小さいものはふとした拍子に割れてしまいやすいとか魔力が少ないとか色々欠点はあるけど、使い捨て目的だったりお金が貯まるまでの繋ぎとして買うなら十分に候補に入るだろう。

 ただ、長く使いたいというのであればちゃんとした魔道具を買った方がいい。今度は魔道具の方を見てみる。

 光の魔石が使われているランタン、水の魔石が使われている水飲み袋、火の魔石が使われている着火道具。用途を考えるのであれば魔石のままでも十分に使うことが出来るが、魔道具に加工されているものは使用魔力の最適化が行われていて長持ちする。

 同じ大きさのただの魔石とそれを使った魔道具なら魔道具の方が長く使うことが出来るというわけだ。もちろん魔道具の方が値段は高いが、長い目で見れば魔道具の方が得となる。長旅で使うのであれば断然魔道具の方がお勧めだろう。

 とまあ、そのようなことを店員の女性が教えてくれる。話慣れているのか、特にうるさいというわけもなく商品を見ながら聞くことが出来た。


「ハクは何か欲しいものあるの?」


「すり鉢が欲しいとは思ってるけど……」


 ざっと見て回ってみたけど、すり鉢のようなものはなかった。

 まあ、ただのすり鉢だし魔道具ではないのだからなくて当然なんだけど、何か変わり種がないかと見に来ただけだから別に構わない。

 面白いなと思ったのは土の魔石だろうか。土の魔石は魔力を流すと土を生み出す。その形はある程度コントロールすることが出来、壁にしたり棒状にしたりと様々だ。

 簡易的な武器や盾にできたりするといった用途に使われているが、面白いのはその種類の多さだ。

 他の魔石も魔力の保有量などによって多少の色の差こそあるが、効果自体はあまり変わらない。しかし、土の魔石に関しては色によって生成される土の性質が変わり、金属のようなものだったり宝石のようなものだったりと様々な種類があるらしい。

 色が綺麗なものはそのまま宝石として扱われ、宝石商が扱っているとのこと。その宝石の魔石で作られたアクセサリーは見た目にも華やかで、且ついざとなれば武器にもなることから貴族の護身アイテムとして注目されているらしい。

 残念ながらここにあるのは茶色っぽい黒ずんだ色のものばかりだが、もし珍しい色の土の魔石を手に入れられれば一財産が築けることもあるのだとか。

 これ、自力で土の魔石を作ったらどうなるんだろう。そう思って聞いてみたら、その場合は最低ランクの土を生成するらしい。稀に鉄を生成することもあるらしいが、そんなことはほとんどないそうだ。

 鉱山で魔石を掘って土の魔石にして大儲け、って言うのはできないんだね。残念。

 さて、すり鉢が目的だったとはいえ、ここには冒険に必要な道具が揃っている。一応、お姉ちゃんもランタンとか着火道具とか必要なものはあらかた持ってるらしいんだけど、水飲み袋くらいは買っておいて損はないだろう。

 代金を払い、商品を受け取る。とりあえず、【ストレージ】にしまっておくか。偽装のためのポーチを開き、その中に入れるふりをする。

 さて、どんな魔道具を売ってるかも見れたしそろそろ行こうか。

 そう思って店を後にしようとした時、店に小さな少年が飛び込んできた。


「おばちゃん、あの魔石入ってないか?」


 私の横をすり抜け、カウンターに身を乗り出すようにして店員さんに話しかけている。

 店員さんは困ったように笑いながら言い聞かせるように腰を下げた。


「ごめんね。入荷してないよ」


「そっか……」


 それを聞いた途端、しょんぼりと肩を落とした。そして、トボトボと店を出ていく。その後姿はとても哀愁漂っていて、あんな子供がそんな思いをしているのかと思うと少し複雑な気分だ。


「……今のは?」


「ザックって言うんだけどね。この先にある魔道具工房の子供さ。なんでも、無理難題の依頼を吹っ掛けられて店が潰れる瀬戸際なんだって」


 店員さんの話では、大きな権力を持っている有力者から依頼を受けたが、材料が足りなくてとても期限までに完成できそうにないらしい。ならば初めから受けなければいいのではと思うが、相手は貴族の有力者。断るわけにもいかず受けたが、いい案も浮かばずピンチに。今更依頼を断るわけにもいかず、必死に材料を求めて駆けずり回っているらしい。しかし、材料の魔石もなかなかの大きさを要求されているらしく、集まらない、というわけだ。

 うん、なんというか、運が悪かったとしか言いようがない。どんな魔石を要求されているのかは知らないけど、そもそも材料がなければ魔道具は作れない。特に、一番の要である魔石がなければ話にならない。

 ならば取りに行こうとしても、なぜか今は鉱山が封鎖されているらしく行こうにも行けないのだとか。近くに都合よく目当ての属性を持つ魔物がいるわけもなく、完全に八方塞がり。

 あの子も可愛そうに……。

 小さな子供ということもあって、変に同情してしまう。

 出ていった店の入口を見ながら彼のことを想った。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この世界の魔石の扱われ方の考察。 [気になる点] ハクさんはたいしたことないと自分の魔石属性改変術を軽く見ておられるが、魔道具屋のおばちゃんとの認識の差がすごい事になっているような?多分現…
[気になる点] そういえばハクさんの魔力ってどのくらいまで増えたんだろう? [一言] その子がどう関わってくるか気になりますね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ