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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十四章:夢と猫の世界編
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第三百七十七話:夢を見せる仕事

 第二部第十四章、開始です。

 クイーンが家にやってくるという、心臓に悪いイベントを終えてからしばらく。私は、ひとまず当初の目的を果たそうと、知り合いに印を配っていくことにした。

 シルヴィアやアーシェ、アルトにアリシアなど、主要な人物を始めとして、ギルドの冒険者や元クラスメイト、よく会う王都の住人など、渡せる限りは渡すことにした。

 おかげで、王都では、ハクちゃんがまた妙なことをやりだしたと噂されることになったけど、逆にそのおかげで、印を貰っていない人も私の下に貰いに来るということが起きたので、逆にありがたかったかもしれない。

 確かに、ただの知り合いと友人だったら、友人の方が大切だが、だからと言って、知り合いがどうなっても構わないというわけではない。

 単に印を預けるだけで、寄生を防ぐことができるのなら、渡しておいて損はないだろう。

 まあ、おかげで追加でかなりの量を作る羽目になったが、私の安心へ繋がると考えれば、そこまでの手間でもない。

 おかげで、大体渡し終わるまでに結構な時間がかかったが、少なくとも、これで王都周辺は大丈夫だろう。


「これで一段落かな」


 クイーンの目的を考えると、あんまり悠長にしている時間はないのかもしれない。

 しかし、この件に関して、ルーシーさんから、私は動かなくていいと言われてしまった。

 いや、正確には、いざという時のために、私も修行する時が来るかもしれないけど、今のところは大丈夫と言った内容で、ルーシーさんとしては、私に神様の対処をしてもらいたいんだと思う。

 恐らく、創造神様が何かしら言っているんだろう。どういう意図かはわからないが、修行には苦い思い出があるので、やりたくないと言えばそうなんだよね。

 もちろん、世界の危機だというのなら、最終的にはやるべきなのかもしれないけど、元々は神様が対処すべき案件だし、私が苦労する必要はどこにもない。

 私が力が欲しいのは、あくまでみんなを守るためであって、異世界の神様と戦いたいわけじゃないからね。

 とにかく、神様が必要ないというのなら、今は必要ないんだろう。せめて、もう少し詳しい情報がわかるまでは、私も自由に動いていいとは思う。


「まあでも、多少訓練するくらいはいいのかな」


 神様に対抗するとなると、絶対に必要になるのが、竜神モードである。

 いくら私が精霊やら竜やらが混ざっているとはいっても、それだけで神様に対抗するのは難しい。

 神様の力の一端である、竜神モードがなければ、手も足も出ないのは確かだ。

 今までは、あの姿にあまりなりたくないという理由から、そこまで手を出してこなかったけど、これを機に、少しは慣れる練習をした方がいいのかもしれない。


「ハク、お客さんだよ」


「あ、うん、今行く」


 そんなことを考えていると、ユーリが来客を知らせてきた。

 ここ最近は、しばらく会ってなかった人とも会う機会があったので、そこで結構話していたりはしたんだけど、このタイミングで来客となると、誰だろうか。

 玄関先に向かうと、そこには、見知った顔がいる。

 夕焼け色の髪から、立派な狼の耳を覗かせた獣人。先日も、会って話したばかりである、カムイである。


「カムイ、どうしたの?」


「ああ、いや、ちょっと相談事があってね……」


 いつもの威勢はどこに行ったのか、ちょっとしおらしい態度を見せるカムイ。

 先日会いに行った時は、そんなに元気がないという風には見えなかったんだけど、あれから何かあったんだろうか。

 ひとまず、玄関先ではなんだということで、応接室へと通す。

 お茶をふるまい、若干空気が和んだところで、カムイは改めて切り出した。


「ハクには話してたっけ、私のビジネスの話」


「ああ、確か、夢を見せる仕事とかなんとか」


 学園卒業後も、カムイとは定期的に会う間柄だった。

 カムイは、元々聖教勇者連盟の所属であり、私を倒すべく遣わされた刺客だった。

 結局、和解して、今では私の様子を聖教勇者連盟に報告する連絡役として王都に滞在している。

 そして、いつだったか、新しいビジネスを始めたと話していたことがあり、それが、人々に夢を見せる仕事という話だったはずである。

 具体的に、どういう仕事をしているのかとかは聞いたことがなかったんだけど、改めて考えると、夢を見せるってどんな仕事なんだろうね?


「詳しいことは省くけど、私は夢の妖精と出会ったのよ」


 以前、まだ学園に在籍していた時に、カムイはキーリエさんに頼まれて、ネタ探しをしていたことがあった。

 その時に調べた、よくない噂がある屋敷を調べた際に、夢の妖精、アンナと出会ったらしい。

 アンナちゃんは、屋敷に入ってくる人々を眠らせ、延々と夢を見させることで幽閉していた。しかし、カムイはアンナちゃんを説得し、そう言った人達を解放したのだ。

 アンナちゃんと友人関係になったカムイは、アンナちゃんの能力を使って、人々に心地の良い夢を見せることによって、癒しを与えようと、ビジネスを起こした。

 それが、言っていた、夢を見せる仕事なんだという。

 まさか、夢を見せる(物理)だったとは。


「アンナちゃんは人に夢を見せるのが好きで、その内容も望んだとおりにすることができる。ずっと幽閉するのはだめだけど、少しの間だけだったら、いいリラックスになるんじゃないかと思って、提案したら、乗ってくれたってわけ」


「なるほど。儲かってるんですか?」


「まあ、ぼちぼちね。日常に疲れた人って言うのは結構いるものだけど、立地がね……」


 アンナちゃんは、屋敷を人に奪われたくないがために、侵入した人々を眠らせていた。

 アンナちゃんの居場所は、その屋敷だけであり、今更別の場所に移るとは考えたくないらしい。

 しかし、その屋敷は、王都でも噂になっている曰く付きの屋敷。いくら、人々が解放されたというニュースがあったとしても、おいそれと近づきたいと思う人はそこまでいないらしい。

 現在は、一部のもの好きが利用している程度であり、彼らには好評だが、なかなか広まってはいないとのこと。


「まあ、別に売り上げを気にしているわけじゃないから、いいんだけどね。問題なのはそこじゃなくて、最近のアンナちゃんについてよ」


 そう言って、カムイは最近の様子について語りだす。

 アンナちゃんは、妖精であるが故に、あまり人前に姿を現さないらしい。それでも、友人であるカムイの前には頻繁に姿を現し、甘えたりしていたらしいのだけど、ここ最近、全く姿が見えないのだという。

 呼びかけてみても、反応はなく、心配になってきたんだとか。

 一応、夢を見せる能力は健在なのか、お客さんが入っても特に問題はないらしいんだけど、今まで当たり前にいたものがいなくなるって言うのは、不安の材料になっているのだという。


「夢を見せる能力がそのままってことは、いなくなったわけではないと思うけど」


「それはわかってるんだけど、やっぱり心配じゃない? もしかしたら、具合が悪いのかもしれないし……」


「まあ、確かにね」


 妖精でも、病気にかかる時はかかる。それに、毒などには人一倍敏感だし、何かしらトラブルがあって、出てこれない状況に陥っている可能性はあるだろう。

 一体、何があったのか気になるし、これは調べてみる必要があるかもしれない。

 心配そうなカムイの表情を見ながら、そう思った。

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