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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十三章:夏のバカンス編
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第三百七十四話:やるべきこと

 ひとまず、クイーンの問題は置いておくことにする。

 現状、クイーンの目的は不明だし、動きらしい動きもない。天使達ですら、容易に見つけられない相手を、私達が探そうとしたって、そんなすぐ見つかるわけないだろう。

 そもそも、本来であれば、こうした問題は私ではなく、神様の問題であり、私は手伝っているに過ぎない。

 神様が手伝ってほしいというなら手伝うけど、私が積極的に動く必要はどこにもないわけだ。

 わざわざ探しに行く必要も、探す方法もないのなら、いつも通りに過ごしているのが一番いい。

 いつまでも気を張ってたら疲れちゃうし、今回のようなイレギュラーはあれだけど、バカンスにしゃれ込めばいいと思うのだ。


「ところで、ノームさんは力は戻りそうですか?」


『うむ。幸い、この地は海に囲まれている。数ヶ月もすれば、万全の状態まで回復できるだろう』


 化け物と戦った時、ノームさんもそれなりに負傷していたが、それを含めても、数ヶ月もあれば完全回復できるらしい。

 まあ、傷に関しては私が治癒魔法で治しておいたけど、このまま完全に力がなくなるわけじゃなくてよかった。


「ノームさんは、これからどうするつもりですか?」


『このまま引き下がるわけにもいかん。クイーンを見つけ次第、叩くつもりだ』


「一人で勝てるんですか?」


『単純な力比べならば、大抵は勝つ自信がある。だが、奴は狡猾だ。決して真正面からは戦わないだろう。下手をすれば、再び封印される結果になるやもしれん』


「大変じゃないですか」


 クイーンにとって、ノームさんはそれなりに厄介な相手と認識しているっぽいし、また封印されることになったら、かなり面倒なことになる。

 今の私の力では、クイーンには勝てない以上、協力者は必須となる。ノームさんは、同じ神様な上に、クイーンにも一目置かれている存在。協力者としては申し分ない。

 それなのに、勝手に突っ込んで勝手に封印されたんじゃ堪ったものじゃない。

 まあ、私がノームさんの行動を縛る権利もないんだけども。


「私も、いつかはクイーンを倒したいと考えています。同じ志を持つ者同士、ここは協力しませんか?」


『ありがたい言葉だが、そなたは確かに強いが、人の身であることに違いはないだろう? 未熟な心では、戦う以前に、見ただけで戦意を喪失する結果になりかねんと思うが』


「ああ、そう言えば言ってませんでしたね」


 私は、一度服を脱ぎ、竜珠から神力を解放する。

 見る見るうちに巨大化した私の体は、人の姿ではなく、竜の神としての姿、竜神モードとなっていた。


『なんと……そなたは神であったか』


〈もどきですけどね。でも、ただの人間じゃないことは伝わりましたか?〉


『うむ。そなたならば、クイーンを打倒することもできるやもしれん』


 納得してくれたようなので、すぐに元の姿に戻る。

 あの姿は、あんまりなっていたいと思わないからね。そわそわするから。


『そなたがただの人ではないことはわかった。だが、もどきと言ったな? まだ力は未熟なのではないか?』


「まあ、そうですね。実際、タクワには勝てませんでしたし」


『タクワと戦ったのか。よく無事でいたものよ』


 神様としての力が弱いわけではない。神剣ティターノマキアも含めて、この世界においてはかなり上位に位置する力を持っているだろう。

 ただ、それはあくまで神様を除いてだ。

 本物の神様を相手にするには、私は未熟すぎる。マキア様に勝ったのだって、不意打ちしたようなものだから。

 うまく使えば、もしかしたら対等に渡り合えるかもしれないが、闇雲に振るうだけでは到底かなわない。

 実際、タクワには遊ばれていたしね。相手がこちらのことを気に入ってくれなければ、あのままやられていたかもしれない。


『強くなるために、鍛えてやるのも吝かではないが、興味はあるか?』


「鍛えるって、ノームさんが教えてくれるんですか?」


『うむ。そう悪い話ではないと思うが』


 確かに、今後クイーンと戦うなら、強くなっておいて損はない。

 別に、私が戦う必要は全くないのだけど、タクワの時のように、私が戦わざるを得ない状態に陥ることは容易に想像できる。

 神様の責務だからと、逃げるのは簡単だけど、それではいざという時に大切な人を守れないかもしれない。

 であるなら、少しでも鍛えておいた方がいいのは確か。その術を、クイーンのことをよく知るノームさんが教えてくれるなら、かなりの適役と言えるだろう。


「ちょーっと待ってくださいね」


「うわ、びっくりした」


 そんな話をしていると、不意に背後からルーシーさんが現れた。

 ノームさんに鍛えてもらうという件は、ルーシーさん的にはあまりいいものではないらしい。

 というのも、私は別に神の末席に加わっているというわけではないが、創造神のお気に入りの一人である。

 特別な加護を与えているわけではないが、それでも私の神様の力に関する事柄は、この世界の神様が管理すべきことであり、別世界の神様に任せるようなことではないと言いたいらしい。

 別に、私は神様になりたくてなったわけではないし、神様の力がどういうものかを正確に把握しているわけではないけど、やっぱり、よそ者にいじられるよりは、自分達で育てていきたいようだった。

 私としては、いきなり100年も修行させられるよりは、ここでまったり教えてもらった方がいいけど、でも確かに、ノームさんもまったり教えるなんて一言も言ってないしね。

 いずれにしても、私にとっては苦痛になる可能性が高いし、だったら、初対面のノームさんよりは、この世界の神様達の方がましという見方もできる。


「ハク様は、地上における希望のような存在です。下手に外部の力を入れるべきではありません」


「そんな変わるものなんですか?」


「変わります」


「まあ、そういうことなら……」


 正直、そっちが勝手にやったんじゃんと思わなくもないけど、この選択をしたからこそ、今の世界があるわけで、地上に降りれない神様の代わりに、私が地上で活動するのは確かに神様にとっての希望と呼べる事柄なのかもしれない。

 せっかくのお誘いだけど、ここは断るしかないかな。


「すいません、そう言うわけらしいので……」


『ふむ、まあ、世界にはその世界なりのルールがある。そなたがどういう立ち位置なのかはよくわからないが、神の愛し子というなら、下手に介入するわけにもいかん。惑わせてすまなかった』


「い、いえ、こちらこそ、せっかく誘っていただいたのにすいません」


 いつの日か、また神界に連れて行かれそうな雰囲気を感じたが、できればそっちも遠慮したいけどね。

 いやまあ、力が必要なのは違いないから、我儘ばかり言ってもいられないんだけど。

 私は、今後来るかもしれない修行のことを考えて、静かにため息をついた。

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