第三百六十八話:宝探し
次なる楔を求めて、私達は地図を頼りに進む。
バツ印があるのは、島の外周であることもあれば、森の中であることもある。
最初に見つけた印のことを考えると、特に罠の類はなさそうだけど、まだわからないので、ひとまず見つけたら私が取り出すという形になった。
同じように埋まっているかはわからないけどね。
「次の印は、このあたりだと思うけど」
次に来たのは、お兄ちゃん達が進んだ方向にある海岸沿い。
まずは外堀から埋めて行こうということで、こちらに来たわけだ。
さっきと同じなら、また地面が光っていると思うんだけど。
「この辺りは岩場が多いね」
「ああ。転ばないように気をつけろよ」
もし、この場所に埋まっているんだとしたら、岩をどけなければならないから凄く面倒くさそうだけど、楔だというなら、そうやって隠れている可能性もあるんだよね。
まあ、最悪土魔法を使えば掘るのは簡単だけど、果たしてどうなるか。
「見た感じ、それっぽい地面はないけど」
ざっと見まわしてみた限り、光っている地面は見当たらない。
最初がわかりやすかっただけで、常に光っているわけではないのかとも思ったけど、それだったら、最初の場所だって光らせる必要はないだろう。
楔は結界を守るためのものっぽいし、破壊されたら困る以上、普通は隠しておくと思うし。
恐らくだけど、他の場所も同じように光っている場所があるはず。
見逃しているだけだろうか?
「ハク、ここ魚がいるぞ!」
「あ、うん、よかったね」
海水が入り込んでいるせいか、岩場の隙間にはカニみたいな生き物や小魚が割といるようだ。
まあ、食べるにはちょっと小さいけど、サリアは楽しそうにはしゃいでいる。
人を助けようとしている自覚はあるんだろうか。いや、いつでも楽しめる心は大切だと思うけども。
私も、試しにそこらの岩をひっくり返してみる。すると、何匹かの小魚が逃げ出していった。
「ここに来れば、釣り竿がなくても魚が取れそうだね」
素手で捕まえるのは少し大変かもしれないが、それでも海に潜ったりするよりはましだろう。
ちょっと感心しながらも、私はもう一度周りを見回してみる。
大きな岩に小さな岩。様々入り乱れた場所ではあるが、やはり光る場所は見つからない。
考えられる可能性としては、岩の下にあるから光っていることに気づいていない、あるいは、海の中にある可能性だろうか。
岩をひっくり返した時に思ったけど、最初の場所は、目で見える場所だった。しかし、ここは岩場だらけで、地面がそのまま露出している場所は少ない。
であるなら、岩の下に光っている地面があっても不思議はない。
海の中も同様だろう。水面からでは、水中のことはわからない。
まあ、よほど浅瀬なら見えるかもしれないけど、ちゃんと潜って見ないとわからないかもしれない。
楽なのは、海の中だけど、あるだろうか。
「一応着替えるか」
別に、服が濡れてもそこまで気にしないが、せっかく水着を持ってきたのだから、有効活用すべきだろう。
【ストレージ】から水着を取り出し、手早く着替えて、海の中を探ってみる。
この辺りは、割と浅瀬ではあるが、ある一定距離まで進むと急に深くなっているようだ。
私の身長では水面に顔が出ないけど、まあ、溺れる心配はない。
とりあえず、一通りこの辺りを泳いで回ってみるが、光っている地面は見当たらなかった。
やはり、岩場の方だろうか。私は水面から顔を出し、岸の方を見る。
そこでは、相変わらずサリアが岩をひっくり返していた。
「あ、ハク、泳ぎたくなったのか?」
「いや、そう言うわけじゃないけど……」
暢気なサリアに少し呆れながらも、岸に上がる。
風魔法で軽く水気を飛ばして、元の服に着替えた。
「そういえば、さっき光る地面を見つけたぞ」
「え、ほんと?」
「うん、あそこだ」
そう言って、サリアが示す場所には、確かに光る地面があった。
まさか、私が海の中を探している間に見つけてしまうとは……。
最初の場所を見つけたのもサリアだし、何か持っているのかもしれない。
「ここを掘ったら、また出てくるのかな」
一応、みんなに少し離れるように言った後、その場所を掘ってみる。
すると、しばらくしてまた石が出てきた。
表面には同じような印が刻まれており、楔であることがわかる。
「これで二つ目だね」
光る地面が隠れているパターンもあるのかと学び、探す難易度は少し上がったように見える。
でも、そもそも光っていること自体が異常なわけで、そう考えると、十分簡単な部類なのだろう。
これを隠した人物は、見つけてほしいのか隠したいのかよくわからないが、まあ、見つけられる分には特に困らないので気にしないでいいだろう。
「次は……あっちだね」
改めて地図を確認し、次なる印の場所を見定める。
ここから近いのは、森の中にある印だろうか。
距離的にはそこまで遠くないように見えるけど、大雑把な場所だから油断は禁物である。
私達は、地図を頼りに森の中を進む。
こんな森だったら、いつもだったら魔物が出てきても不思議はないんだけど、それを気にしなくていいのは楽でいいね。
「地図によればこの辺り……」
その場所は、何の変哲もない、森の中だった。
特に何か目印があるわけではない。木々が並び、草花が生い茂る場所である。
私も、地図の縮尺から考えた大雑把な予想だから、本当にここかは少し自信がないけれど、多分、そう遠くはないはずである。
「地面ははっきり見えるけど、光っている場所は見当たらないね」
また隠されているパターンだろうか。でも、隠すって言っても、先ほどのように岩がたくさんあるわけではない。
せいぜい、草花によって多少地面が隠れている程度だけど、それはあくまで地面であって、隠せているとは言えないだろう。
時折茂みはあるが、あるとしたらそこが無難だろうか。
まずは、この周辺の茂みを探してみることにする。
「うーん、ないなぁ」
みんなで手分けして探ってみたけど、光る地面は見つからない。
場所が間違っているんだろうか? でも、どれだけ広く見積もっても、ここから大きく離れているとは思えない。
地図を描いた人物が、うっかり間違えているでもない限りは、大きく間違っているわけではないと思う。
となると、何かを見落としている? 一体何を。
「あ、鳥だ」
と、そんなことを思っていると、不意に目の前を鳥が横切った。
魔物の反応はないけど、こういった動物はそれなりにいるんだな。
そう思いながら、鳥を目で追ってみると、木の枝に作られた巣に入っていくのが見えた。
さっきから地面ばかり見ていたから、そこに巣があることに全然気が付かなかったね。
「……ん? 待てよ」
先程から、私達は光る地面を探していたわけだけど、本当に地面だけにあるんだろうか?
確かに、最初の二つは地面に埋まっていたとはいえ、必ずしも地面に埋める必要はないだろう。
見つからなければいいのだから、それこそ、木の上とかでもいいんじゃないだろうか?
そう思って、辺りの木々を見回してみる。すると、それらの一つに、枝の部分が光っている木を見つけることができた。
「まさか、木の上にあるとは」
これは盲点だったかもしれない。探し物をする時は、広い視点を持つことが大事ってことだね。
木の上に登ってみると、枝葉の中に隠れるように、同じ石があった。
これで三つ目。この調子で、最後の印も見つけていきたいね。
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