表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十三章:夏のバカンス編
1242/1583

第三百六十四話:石柱の中にいたのは

 まず、周りをぐるぐる回っている二人の人物。

 人かどうかすらわからないけど、見た目のイメージ的には、悪魔に似ているだろうか?

 以前に出会った、悪魔であるベルやニグさんは、もう少し人間に近い姿をしていたけど、あれが悪魔本来の姿と言われたら、なんとなく納得はできる。

 あれが悪魔だとして、問題は石柱の方。

 円状に広がっている石柱の中心には、どうやら誰かがいるようだ。

 恐らく、これが探知魔法で見た、動かない一つの反応だろう。

 助けを呼んだとしたら、この三人のうちの誰かってことになると思う。

 話しかけたら、ちゃんと話ができるだろうか? もし本当に悪魔なら、一応は話はできそうだけど。


「とりあえず、近づいてみようか」


「大丈夫? 明らかにやばそうな奴だけど」


「わかんないけど、ここまで来て引き返すわけにはいかないでしょ」


 お姉ちゃんの心配はもっともだが、今更何もせずに帰るわけにはいかない。

 最悪、私が神様もどきの力を解放して何とかすればいいだろう。

 そう思って、私は足を進めた。


「ぎぃ!」


「ぎぃぎぃ!」


 近づくと、周りにいた二人がこちらに気づく。

 二人は、こちらの姿を確認すると、威嚇するように奇妙な声を上げた。

 悪魔であるなら、普通に喋るくらいはできそうなものだけど、違うんだろうか?

 となると、こいつらは悪魔に似ているだけの魔物ってところだろうか。

 こんな魔物見たことないけど。

 一瞬、メリッサちゃんの世界から来た魔物かなとも思ったけど、あの世界から来た魔物は、もれなく駆除しているはずなので、それはないはず。

 いったい、こいつらは何者なんだろうか。


「ええと、助けを求める声を聞いてきました。あなた達は、何か知っていますか?」


「ぎぃ?」


 私がそう話しかけると、二人は顔のない顔を見合わせながら、なにやら話している様子である。

 言葉は通じているんだろうか? それとも理解できないから相談しているんだろうか。

 何となく人間臭さを感じるが、まさか元々は人間だったとか言わないよね?


『下がれ。そちらは、わしの客だ』


「この声は……」


 突如響いた謎の声に、二人は跪くようにしてその場に留まる。

 この声は、聞き覚えがある。夢の中で、私に話しかけてきた、謎の声だ。


『よくぞ来てくれた、異界の旅人よ。そなたを呼んだのは、わしだ』


「えっと、石柱の中にいる人で合ってます?」


『いかにも』


 円状の石柱の中に目を通すと、そこには一人の人物が立っていた。

 身長180センチはあるだろうか。私からするとかなりの高身長であり、ぼろのような白い布を纏っている。

 ただ、それは生身の状態ではなく、石像だ。

 ただ者ではないと思っていたけど、まさか石像が話しかけてくるとは思わなかった。

 ちょっと驚きながらも、私は質問を繰り返す。


「あなたは誰なんですか?」


『わしは深淵の国を治める者、名をノームという。わけあって、この世界に迷い込んでしまった上、この地に封印されてしまったのだ』


「封印、ですか」


 そう言われてよく見てみると、確かに周りにある石柱は、魔力が繋がっているように見える。

 恐らく、この中にいる者を封じる魔法陣のような役割をしているんだろう。

 となると、元から石像なのではなく、石にされてしまった人ってことなのかもしれないね。


「あなたは、何か悪いことをしたんですか?」


『誓って、そのようなことはしていない。これは、わしをこの世界に連れてきた者の策略であり、わし自身はこの世界に害を成す存在ではない』


「なるほど……」


 聞いている限り、この人は別の世界から迷い込んできたらしい。で、その理由は、誰かに連れてこられたからであり、連れてこられた挙句、その人に封印されてしまったと。

 話だけ聞いていると、なんだか可哀そうな人に聞こえてくるけど、考え方によっては、本当に悪い人って可能性もある。

 例えば、異世界で悪事を働いて、そこで捕まり、こちらの世界に島流しみたいなことをされたって考えれば、善人とは限らないよね。

 いやまあ、そんな世界を超えるようなことをできるのかって話はあるけど、異世界だし、何があっても不思議じゃない。

 実際、メリッサちゃんみたいに、複合神という形で神様になってる人もいるみたいだし。

 この言葉だけじゃ、信用できるかどうかはまだわからないな。


『そなたを呼んだのは他でもない。わしを助けてほしいのだ』


「どうすればいいんですか?」


『周りにある石柱を破壊してくれればよい。さすれば、封印は解かれるだろう』


 まあ、この石柱が内部の物を封印する装置なのだとするなら、それを壊せば解放されるのは道理か。

 壊すこと自体は簡単だけど、本当に助けていいんだろうか?

 確かに可哀そうといえば可哀そうだけど、例えば周りにいる二人の悪魔っぽい奴。

 この人の言葉に跪いたってことは、恐らく配下か何かだろう。石柱を破壊したいなら、彼らに任せればいいのではないだろうか?

 それができない理由でもあるんだろうか。石柱が硬すぎるとか?

 よくわからないけど、もう少し質問したい。


「その前に、少し質問してもいいですか?」


『助けてくれるのなら、なんでも答えよう』


「なら、この人達は何なんですか?」


『そ奴らはわしの配下だ。使い勝手はいいが、そこまで力は強くなくてな。そ奴らでは石柱が破壊できんのだ』


 予想通りと言えば予想通りだろうか?

 まあ、結界みたいなものがあるっぽいし、普通に攻撃しただけでは壊せないかもしれない。


「じゃあ、あなたをここに連れてきた人は誰なんですか?」


『奴はわしの大敵であり、滅ぼすべき邪神である。姿をころころ変える故、正体を絞ることはできないが、わしをここに連れてきた時の個体で言うならば、クイーンであろう』


「え、クイーン?」


 ここにきて、クイーンの名が出て来て少しびっくりしてしまった。

 クイーンと言えば、異世界から様々な神を連れてきて、この世界で何かしようと目論んでいる異世界の神様である。

 以前出会ったタクワも、クイーンに無理矢理連れてこられたと言っていたし、もしそのクイーンだとしたら、この人は完全な被害者で間違いない。

 でもそうなると、この人も神様なんだろうか?

 確かに、石像でありながらも、威厳のようなものは感じられるけど、タクワのような、人々を恐怖で支配しようという風には感じられない。

 まあ、今は封印されているから、その力が抑えられているって言う可能性もあるけど、そうなってくると、ますます封印を解いていいかがわからなくなる。

 クイーンが封印したってことは、この人は相当厄介な神様なんだろう。

 タクワですら、私では手も足も出ないほど強かったのに、それより強いと言われているクイーンが、厄介と感じる神様なんて、私の手に負えるんだろうか?

 今のところ、殺気のようなものは感じないけど、それは封印を解いてほしいからだと言われたらそれまでだし、封印を解いた瞬間、襲い掛かってくるという可能性も全然ある。

 この人の言葉、どこまで信じていいんだろうか。

 私は、腕を組んで、悩むしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もしもし天使さん!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ