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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十二章:転生者の仕事編
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幕間:晩酌配信

 主人公の妹、一夜ひよなの視点です。

 ハク兄が異世界へと帰った後、私は配信を再開した。

 別に、ハク兄がいても、遠慮なくやっても構わないんだけど、やっぱり、普段出てこないことを考えると、ハク兄の配信を優先させた方がいいからね。

 その気になれば、『Vファンタジー』が用意したマンションに行って、そこでやることもできるけど、私としては、やっぱりこっちでやってくれた方がありがたい。

 そうすれば、いつも一緒に寝られるからね。


「月夜の晩にこんばんは、月夜アカリだよー」


(コメント)

・ばんはー

・こんばんは

・きちゃー

・アカリちゃんのターンが来たか


「今日は、まあ、雑談かな。はっちゃんが帰っちゃったから、その愚痴に付き合って」


(コメント)

・ええで

・晩酌配信かな?

・アカリちゃんも苦労してるからね

・俺らでよければ何でも聞くよ


「ありがと。じゃあ、今回のはっちゃんだけどね……」


 そう言って、私は酒を片手に、雑談を始める。

 普段は、幼い声を作って配信しているので、酒を飲むなんて滅多にないんだけど、ここ最近は、少しストレスを感じることもあって、こうして羽目を外すことも多くなった。

 そのストレスというのは、ずばり、ハク兄が異世界に連れて行ってくれないことである。


「はっちゃんは結構しっかりしてるから、約束通りに会いに来てはくれるんだよ。でも、なんか最近雑になってる気がするんだよね」


(コメント)

・雑とは

・確かに、今回はちょっと帰ってくるの遅かったな

・一定期間いなくなるけど、必ず帰ってくるのはいいことでは?

・あのディスリが効いてたのか?


「そう! そりゃ、私ははっちゃんに比べたらめちゃくちゃ弱いと思うよ? でも、だからって異世界に連れて行かない理由にはならなくない?」


 私が異世界に行きたい理由は、単なる好奇心という即物的なものだが、誰だって、異世界に行けるとなったら、行ってみたいと思うだろう。

 特に、私は『Vファンタジー』という、ファンタジー専門のヴァーチャライバーが揃う組織に入っている身だ。

 ファンタジーの知識を身につけたいと常日頃から思っているし、興味も人並み以上にある。

 そんな中、実際に異世界に行ける手段があるのに、行けないなんて、生殺しもいいところだ。


「これでも、異世界でも戦えるように色々習い始めたんだけどなぁ」


(コメント)

・異世界は行ってみたいよね

・まあ、ハクちゃんの気持ちもわかるけど

・面白いこともあるだろうけど、危険なこともあるってなったら、ちょっとしり込みするかも

・ハクちゃんとアカリちゃんでそんなに力の差があるの?

・ハクちゃん曰く、アカリちゃんは弱いらしい

・育った環境の差って言うのは確かにあるだろうけど、そんなに差がつくものかね

・危険な目に合わせたくないからちょっと強く言っただけじゃね?


「スペック差に関しては、圧倒的だと思うよ。みんなよく考えてみて? あっちは竜の血を受け継いでいて、竜の姿になれるんだよ? その時点で勝てるわけないでしょ」


(コメント)

・それはそう

・ドラゴンハクちゃんまだですか?

・ロリなのにドラゴンとか、可愛いとかっこいいが両立する奇跡の生き物

・アカリちゃんはただの妖精だしなぁ

・姉妹なら、アカリちゃんにも竜の血が流れているのでは?


「流れてたらよかったけどね、そんな力はないよ。せめて魔法でも使えたらいいんだけど……」


 ハク兄の強さは、竜のこともそうだけど、主になるのは魔法だと思う。

 実際に、魔法で戦っているところを見たことはないけど、魔法はイメージさえできれば、どんなこともできるみたいな感じだったし、私も魔法が使えれば、多少はましになると思うのだ。

 ただ、私には魔力がないらしい。

 私というか、この世界には魔力がないから、魔力が必要となる魔法は使えないって話なんだとか。

 一応、ハク兄との契約によって、わずかではあるが私の体には魔力があるらしいけど、魔法を使えるほどではないとのこと。

 だから、魔法を使えるようになって無双する、って言うのは無理なわけだ。


「私がはっちゃんに勝てることなんて、料理とコミュ力くらいじゃない?」


(コメント)

・ゲームでは確かに負けてたな

・設定を考えると戦闘力的にも負けてるっぽい

・ほら、姉だから

・姉より勝る妹はいない

・(例外はあります)

・アカリちゃんは細かいところによく気が付くし、同期とも仲いいし、そう言う戦うことを前提に考えなければ十分な強みを持っていると思うよ



「そう? 夜の民のみんな、はっちゃんの方に浮気したりしない?」


(コメント)

・しないしない

・一緒に見るから

・むしろコラボしてください

・姉妹揃ってこそだよな

・少なくともハクちゃんより劣っているとかは思ってない

・これは浮気ではない、はず


 ここ最近は、私のチャンネル登録者も増えてきているが、その大半は、ハク兄の配信から流れてきた人達である。

 もちろん、私のことを純粋に気に入って登録してくれた人もいると思うけど、やっぱり、ハク兄の方が勢いがあるのは間違いないし、私も影の薄い姉として忘れ去られそうで怖い。

 私にも、そう言う設定をつけた方がいいんだろうか。何かこれ、という強みが欲しい。


「んっ……ぷはぁ。力が欲しいなぁ……」


(コメント)

・なんか闇落ち主人公みたいなこと言ってる

・魔法使えたら楽しいだろうな

・ハクちゃんに教えてもらえば?

・ハクちゃんなら喜んで教えてくれそう

・いや、危ないって言って逆に教えないんじゃない?

・異世界にも連れていくの渋ってるしな


「私には魔力がないから魔法は使えないんだってさ。魔力って、どんなものなんだろうね?」


(コメント)

・説明するのは難しい

・なんだっけ、マナだっけ?

・大気中に存在する魔力をマナ、体内に存在する魔力をオドと呼ぶことがあるらしい

・つまり、アカリちゃんはオドがないってことか

・なら、マナを利用すれば行けるんじゃね?


「うーん、どうだろう。確かに、異世界に行ければ、魔力はあるだろうし、使おうと思えば使えるのかな?」


 ハク兄が使う魔法は、基本的に自分の体内にある魔力を使っていると言っていた。

 この世界には魔力がないから、そうせざるを得ないんだと。

 逆に言えば、異世界には魔力がありふれているわけで、そこに行けば、私も魔法が使える可能性はある。

 運が良ければ、なんやかんやで魔力を吸収し、自分のものにできる、みたいな展開になるかもしれない。

 まあ、そんな都合よくは行かないだろうが。


「まあ、次回は連れて行ってくれそうだし、そこで検証しようか」


(コメント)

・もう行く気満々で草

・俺も行きたーい

・姉妹の間に挟まるんじゃない

・異世界行ったら写真撮って来て

・あ、それは気になるかも


「ああ、うん、許可が下りたらね」


 ふぅ、あんまり深く飲みすぎるとぼろが出そうだし、そろそろこの辺にしておこうか。

 私は、適当に締めて終わりの挨拶をする。

 ストレスと言えばストレスだけど、でも、ハク兄が私のことを一番に考えてくれているのはわかるから、あまり面と向かって文句は言えない。

 話を聞いてくれるリスナーがいてよかった。

 私は、残ったお酒を片付けて、配信を終了する。

 さて、次はいつ来るかな。

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