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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十二章:転生者の仕事編
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第三百四十八話:一時保留

 駅まで送ってもらい、その後、一夜ひよなのマンションへと転移する。

 ちょっと複雑な気分になったが、これに関しては、今後詳細を調査して、それから答えを出した方がいいだろう。

 ローリスさんや正則さんに報告して、判断を仰ぐのが一番手っ取り早いと言えばそうだけど、いくら敵とはいえ、今の私目線だと、ただの娘に優しいお父さんって感じなんだ。

 正則さんが様子を見ようって言ってくれるならともかく、そいつが敵だ、つれて来いと言われても、ちょっと承服しかねる。

 本当に、信之さん自身がローリスさん達の殺害を命じたのか、それとも部下が勝手にやったことなのか、それでも対応は変わってくるだろう。

 もし、前者だったとはっきり分かったなら、連れていくのも吝かではない。

 だから、それを判断するためにも、まずは情報を集める必要があるね。


「まあ、そんな簡単には調べられなさそうだけど……」


 ローリスさん達が殺害されたのが正確にいつなのはかわからないが、恐らくだけど、公になっていない事件だと思う。

 正則さんだって、表向きは商人だけど、裏の顔があるわけだし、そんな大っぴらに発表されることは嫌うだろう。

 マスコミとかに家に来られても困るだろうしね。

 そうなると、事情を知っている人から聞く以外にないわけだけど、その事情を知っていると思われるのは、ローリスさん達と、殺害した犯人くらいなものだろう。

 信之さんの指示かどうかを判断するなら、その中でも犯人の方だと思う。

 でも、仮にそいつらを見つけられたとして、素直に喋ってくれるとは思えないし、誰が殺害したのか正確にわかっていない以上、話を聞くことすら難しいと思う。

 こんな状態で、ちゃんと調べることなんてできるんだろうか?


「信之さんにローリスさんのことを聞くわけにもいかないし……」


 信之さんは、自分がそう言う組織の人間だと隠したがっていた様子だったし、聞いてもはぐらかすか、あるいはもしかしたら口封じのために攻撃してくるかもしれない。

 それは黒服達も同じことだろうし、事情を聞くには、それ相応の理由が必要になってくる。

 流石に、殺人の理由を聞くのにふさわしい理由なんてそうそうないだろうし、話を聞くって言うのはちょっと無理があるよね。


「あるとしたら、その犯人の方を監視するとかだけど……」


 ローリスさんの事件が、独断なのか指示を受けてなのかはわからなそうだけど、その犯人の態度を見て、信之さんに反抗的かとか、殺人を楽しむような狂人かとかを判断することはできるだろう。

 状況証拠に過ぎないけど、そう言った根っからの悪人だって言うなら、私も捕まえる気力が沸く。

 問題は、その犯人がわからないってことだけど。


「……これに関しては保留かな」


 調べると言っても、流石に手掛かりがなさすぎる。

 仮に、正則さんが見せてくれた写真の人物が犯人だとして、じゃあそいつらがどこにいるのかもわからないし、調べようがない。

 まあ、信之さんの家をずっと見張っていれば、もしかしたら出入りする可能性もあるけど、そこまでして調べる必要はない気がする。

 確かに、私は正則さんの復讐にはそれなりに肯定的だが、何が何でもやらなければならないことだとは考えていない。

 そもそも、信之さん自身はあの写真に入ってなかった気もするし、連れてきてほしいという約束を守ることには当たらない気もする。

 だから、何かの偶然でたまたま写真の人物を目撃でもしない限りは、保留でいいんじゃないかな。

 ……葵ちゃんを不幸にしたくないって言うのもあるけどね。


「ハク兄、お帰りー」


「ただいま」


 一時的な結論をつけ、部屋の中に入る。

 今日は配信する予定だけど、流石にまだRTAは早いと思ってる。

 一応、ちょっとだけ下調べとしてプレイはしてみたが、流石オープンワールドだけあって、行ける場所が広すぎる。

 動画を見る限りでは、any%であれば、そこまで時間はかからないっぽいけど、それをやるにしても、今日はそんな気分でもない。

 なので、適当に雑談でもしようかなと思ってる。


「何かあったの?」


「いや、別に……」


「そう? なんか元気なさげだけど」


 私の表情は、ほとんど変わらないはずだが、それでも何か感じ取るものがあるんだろうか。

 もしかしたら、精霊の契約があるからかもしれないけど、一夜ひよなに知られるのもそれはそれで問題だろうし、私だけの中に留めておかなくてはならない。

 適当に返しながら、夕食の準備をすることにする。

 誤魔化しのための行動だったけど、いつも一夜ひよなが作ってるんだから、たまにはいいだろう。


「ハク兄の料理って久しぶりな気がする」


「そうだっけ?」


「だって、ハク兄って全然キッチンに立たないじゃない」


 確かに、思い返してみれば、私は実家で料理を作った経験がほとんどなかった。

 一応、たまに手伝ったりすることはあったけど、ほとんどキッチンに立たなかった気がする。

 まあ、上京してからは、自炊もするようになったけど、それは一夜ひよなは知らないから仕方ないか。

 実家で料理を作ったのなんて、家庭科で覚えた料理をもう一回作ってみたいって実践した時くらいかな。

 その時は割と好評だったけど、そもそも料理を作ること自体がちょっと面倒くさいので、お母さんに任せっきりだった感じはする。


「これでも、あっちの世界では料理担当なことも多いんだけどね」


「普通に美味しいのに、なんで料理しないの?」


「自分で作ったものより、人に作ってもらったものの方が美味しくない?」


「ああ、それはあるかも」


 料理を作ること自体が面倒、というのはあるが、自分で作るより、誰かに作ってもらった料理の方が、美味しいと感じることが多い気がする。

 それは恐らく、その人の愛情とか真心とかが籠ってるからだと思っているけど、だからこそ、誰かに作ってもらえるなら、そっちの方がいいよねってなってしまう。

 最近は、自分で作った料理を誰かに食べてもらうって言うのも気に入っているから、そこまで気にならないけどね。

 どちらかというと、料理を作ることより、後片付けをすることの方が面倒くさく感じるようになったと思う。


一夜ひよなの料理も、いつも美味しく食べさせてもらってるよ」


「ふふ、そう言われるとちょっと嬉しいね」


 和気あいあいとしながら、夕食を食べる。

 話しているうちに、だいぶもやもやも晴れてきたので、引きずることもなさそうだ。


「ごちそうさまでした」


 食べ終えた後、後片付けをする。

 ついでにお風呂にも入ってさっぱりした後、いつものように配信部屋へと向かい、配信の準備をした。


「ねぇ、今日は雑談配信なんでしょ? せっかくなら、私も行っていい?」


「いいけど、話したいの?」


「今はそう言う気分なの」


「まあ、それならいいけど」


 どうせ、質問箱に寄せられた質問に適当に答える予定だったし、一夜ひよなが増えても問題はない。

 むしろ、元々この部屋は一夜ひよなの配信部屋なんだし、一夜ひよなが出たいというなら、無条件に受け入れるしかないだろう。

 私は、急遽コラボとなることをSNSで伝え、配信画面を開く。

 さて、どんな配信になるだろうか。

 感想ありがとうございます。

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こっちの両親にも料理食べさせてあげないと
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