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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十二章:転生者の仕事編
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第三百四十六話:呼び出し

 翌日。私は、気になっていた『雷鳥チャンネル』のコメント欄を覗きに行くことにした。

 自己紹介動画が、全部で六本。

 つい先日まで、二本しか投稿されていなかったチャンネルに、一気に六本もの動画が投稿されたことで、結構反響があったようだ。

 まだ自己紹介動画の段階なので、そこまで大きな評価はできないが、概ね、リアルな人外要素を称賛するようなコメントが多く、それなりに好評のようである。

 まあ、一気に六人も増えたことに関しては、賛否両論と言った形みたいだけどね。

 人外要素が好きな人からしたら、そう言った人達が増えてくれて嬉しいという声もあるし、最初がうまくいったからって、味を占めて連打するのはどうなのかといった意見もあった。

 別に、裏の事情などほぼなく、ただ単にローリスさんがやりたかったからってだけなんだけど、一気にこんなに増えたことに対して、色々と議論をしている人もいるようだった。

 と言っても、せいぜい個人チャンネル。一気に六人増えるのは異例かもしれないが、まだ新参者のチャンネルであり、人気も爆発的に多いかと言われたらそんなことはないので、そこまで大きな騒ぎではない。

 ここから、受け入れられるか、はじき出されるかはみんな次第だろうね。

 うまい具合に、軌道に乗ってくれたらいいんだけど。


「今日はどうしようかなぁ」


 昨日は配信もしなかったので、今日は配信したいとは思っている。

 ただ、そろそろ帰らなくちゃいけないって言うのもあるんだよね。

 今回は、最初の方でケントさん関連で結構な日数を滞在してしまったので、すでに一週間以上経っている。

 別に、こちらの世界に滞在できる時間が決まっているわけではないけど、今回は誰にも伝えずに来てしまったので、そろそろ帰らないと心配させてしまうことだろう。

 一応、ケントさん関連をどうにか収めてからと思っていたけど、それについてもとりあえずどうにかなったし、ローリスさん達が配信するって言うイレギュラーはあったにしろ、結局あの記者との約束は果たせている。

 まあ、いきなり増えたから、何か言ってきそうではあるけど、それに関しては無視でいいだろう。

 だから、これ以上滞在する理由はあまりないわけだ。


「ひとまず、次のRTAのためにゲームの練習でも……うん?」


 そんなことを思っていると、スマホが揺れていることに気が付いた。

 見てみると、相手はどうやら信之さんのようである。

 もう呼び出しだろうか。次の日に呼び出さなかっただけましだけど、まだ一週間も経ってないのにね。


「もしもし」


『お、出たな。今大丈夫か?』


「はい、大丈夫ですよ。どうしましたか?」


 話を聞いてみると、案の定、葵ちゃんがまた遊びたいと言っているらしい。

 こちらにも事情があるから、すぐに遊ぶのは無理だと言い聞かせていたようだが、ついに我慢の限界に達したようだった。

 いや、早くない? この調子だと、私があちらの世界に帰ってしまったらどうなるだろうか。

 その間は電話も繋がらなくなるし、なんか一悶着ありそうな気がする。


「わかりました。幸い、今は暇なので、今から向かいますね」


『すまんな。駅に迎えをよこすから、それに乗ってきてくれ』


「はい」


 そう言って、通話が途切れる。

 しかし、葵ちゃん、多分小学生か中学生だと思うんだけど、学校はどうしたんだろうか。

 祝日ではないし、まさか遊ぶためにわざわざ休んだんだろうか?

 もしそうだとしたら、ちょっと注意しなければならないけど。

 妙な子に懐かれちゃったなと思いつつ、一夜ひよなに出かける旨を伝えてから、駅へと向かう。

 一応、警戒はしていたけど、尾行されている気配はない。周りにも、黒服らしき人影は見えなかったので、家までつけられているってことはなさそうだ。

 そこらへんは、配慮してくれたんだろうか? それともたまたまなんだろうか。

 今後も、一夜ひよなの家がばれないように注意しなければ。


「ハク様、こちらです」


 駅に辿り着くと、あの時のように黒いワゴンが止まっていた。

 相変わらず、見た目が誘拐にしか見えないが、通報とかされないんだろうか?

 ちょっと心配に思いながらも、言われるがままに乗り込む。

 できれば、その黒服もやめた方がいいと思うけど、何か決まりでもあるんだろうか。


「到着しました」


 そんなことを思いながら車に揺られていると、しばらくして例の屋敷に着く。

 玄関を開けると、待ち構えていた葵ちゃんが、突撃してきた。

 そんなに待ち遠しかったんだろうか。

 私は、頭を撫でながら、ひとまず中に入ろうと促す。

 案内されたのは、葵ちゃんの部屋だった。

 葵ちゃんの部屋は、結構散らかっていて、ゲーム機の配線がぐちゃぐちゃに絡まっていたり、ぬいぐるみがその辺に放置されていたりとちょっとあれだが、私も昔はこうだったなぁと考えると、強くも言えない。


「なにする? なにする?」


 あまり表情は変わらないが、それでも目をキラキラさせながら語りかけてくる葵ちゃん。

 というか、信之さんに挨拶しなくていいんだろうか。

 今のところ、友達の家に遊びに来たって感じだけど。


「葵ちゃんに任せますよ」


「じゃあこれ」


 そう言って、レースゲームを取り出す。

 遊びたくて仕方がないって感じなので、まずは落ち着くまで遊んであげるとしよう。

 そう思って、大人しくゲームの相手をする。

 私からすると、その気になれば全戦全勝もできると思うけど、流石にそこまではしないよ。

 これはあくまで遊び、それも、年下の子供相手の遊びだ。まじになったら大人げないというものである。


「お、来てたか。邪魔するぜ」


 しばらく遊んでいると、部屋に信之さんが入ってきた。

 人の家に上がっているのに、ゲームしながらで申し訳ないが、ひとまず挨拶をする。


「お邪魔しています。こんな体勢ですいません」


「いや、構わねぇさ。それより、葵と遊んでくれてありがとよ」


 そう言って、キセルをふかす。

 子供の部屋でそれはどうかとも思うけど、葵ちゃんは気にしていない様子だった。


「今日はどれくらいいられるんだい?」


「そうですね。夕方までは大丈夫ですよ」


「そいつはよかった。お前さんと遊ぶんだって、聞かなくてなぁ」


「ハクは私の友達だから」


 そう言って、腕に抱き着いてくる葵ちゃん。

 クレーンゲーム一つでここまで懐いてくれるのは嬉しいが、普通の家じゃないって言うのが少し怖い。

 戦闘力的な意味じゃなく、人間関係的にね。

 信之さんがまだこちらに譲歩してくれているから何とかなっているけど、今後どうなるかはわからないし、あんまり近くなりすぎるって言うのも考え物だよね。

 若干複雑な気持ちになりながら、ゲームに興じる。

 妙なことにならなきゃいいけど。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
あんまり近付きすぎるのはねぇ
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