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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十二章:転生者の仕事編
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第三百三十五話:家にお邪魔

 黒服は、女の子の姿を見るなり、ほっとした様子で縋り寄っていた。

 よくよく考えると、黒服って見た目はかなり怪しさマックスだけど、私の感覚的に、そこまで悪い人には見えない。

 いや、話し方や仕草を見る限り、全くのカタギってわけでもなさそうだけど。

 でも、女の子を送り届けた私に対して、しっかりと礼を言っていたし、その辺は割としっかりしていると思う。

 女の子は、心配をかけたことをわかっているのかわかっていないのか、ぬいぐるみを抱きしめながら、「またね」と言って去っていった。

 なんとも不思議な子だったが、まあ、どうせ今後関わることはないだろうし、問題はないだろう。


「結構時間経ったし、そろそろ行こうか」


 ある程度時間も潰せたので、お土産を買って、アケミさんの家へと向かう。

 何気に、アケミさんの家に行くのは初めてではないだろうか?

 いつも、外で会っていたから、家にお邪魔するのはなんか新鮮な気持ちである。

 住所はあらかじめ教えてもらっていたので、それを頼りに進んでいくと、やがて一軒の家に辿り着いた。

 インターホンを押すと、ドタバタという足音と共に、アケミさんが出迎えてくれる。

 その後ろでは、母親と思しき人が優しそうな笑みでこちらを見ていた。

 私は、お邪魔しますと一言言ってから、家の中に入る。

 アケミさんの部屋は、なんとも女子高生らしいというか、女の子らしい部屋だった。

 全体的に、可愛い感じのもので固められているが、中には某ロボットアニメのフィギュアとか、男の子らしい趣味の物も混ざっているように思える。

 アケミさんらしいと言えばそうだけど、特に突っ込まなくていいかな。


「ハクちゃん、待ってたよー!」


「わざわざ来てくれてありがとうございます」


「お土産持ってきてくれたのー?」


 部屋では、テーブルを囲んで、チトセさんとスズカさんの姿もあった。

 どうやら、きちんと勉強していたらしい。

 こういうのって、なんだかんだ息抜きと言ってゲームしたりしちゃうことが多いと思うんだけど、真面目なんだね。


「皆さん、お久しぶりです。元気にしてましたか?」


「元気は元気よ。ただ、テストでちょっと憂鬱だけど……」


「アケミもスズカも勉強苦手ですもんね」


「むしろチトセはなんでそんなに勉強できるのー?」


 私が来たということで、軽く休憩に入るようだ。

 お土産を渡し、それぞれくつろぐ体勢に入りながら、それぞれの近状を報告する。


「せっかくハクちゃんがいるのにテスト勉強だなんて、ほんと、テストなんてなくなればいいのに」


「そんなに難しいテストなんですか?」


「いえ、そんな難しいものではないですよ。ちゃんと復習しておけば」


「その復習がめんどいんじゃーん」


 お土産のお菓子を食べながら、そんなことを言うアケミさん。

 まあ、テストって面倒くさいよね。

 そりゃ、日々授業をちゃんと聞いて、ある程度復習もしておけば、そんな難しいものではないとはいえ、勉強が好きでない人にとっては、その過程が面倒くさすぎる。

 先生によっては、ちゃんとここが出るって教えてくれる人もいるけど、そうじゃない先生だと教科書の太字の部分を全部覚えるとかしておかないといけないからね。

 もちろん、テストはきちんと知識が身についているかどうかを判断するためのものだし、必要なことではあると思うけど、学生だとやっぱりその辺は関係なくて、ただただ面倒だって気持ちの方が強いよね。


「早くテスト終わらせて配信したい」


「配信も控えてるんですね」


「してもいいんだけどね。でも、やっぱり集中しないといい点取れないからさ」


「まあ、仕方ないことだと思います」


 この辺は、学生配信者ならではの悩みだろうね。

 自由にやりたいなら、やっぱり成人してからの方がいいんだろうか。

 あんまり遅くに始めると、それはそれで問題があるから、どっちがいいかはわからないけど。


「それより、ハクちゃん昨日も配信してたよね」


「はい。練習配信ですね」


「あれ、後で調べてみたんだけど、相当やばいことだったみたいだよ?」


「やばいこと?」


 やばいって言うのは、どうやら私がやろうとしているカテゴリーについてらしい。

 あのゲームにおける100%RTAは、お金をすべて集めなければならないという条件があるが、それが本当に鬼畜なんだとか。

 私も調べた時にわかっていたことだけど、基本的に、被弾したらお金が飛び散るから食らっちゃいけないし、出てくるかどうかは乱数だし、出てきてもオブジェクトの隙間に挟まってロストしたりと運ゲー要素が強いから、ほとんどやる人がいないとのことだった。

 でも、調べてみたらきちんと動画はあったし、時間もそこまで長いわけではなさそうだったから、運要素があるとはいえ、そこまで難しくはないと思っていた。

 だが、実際には、そんないつロストするかもわからない状態で、数時間プレイするのは精神的にもきつく、せっかくいいタイムをキープできていても、一つのミスでパーになることもあるから、狂気の沙汰とも言われているらしい。

 特に鬼畜なのが開かずの間であり、そこで出てくる運要素を回収するために何度も出入りする必要があるんだけど、そこに辿り着くにはかなりの時間を取られるので、どんなに他が良くても、そこがダメなら記録がダメになると言ったこともあるようで、それが難易度を上げているらしい。

 私の場合、一時間程負けたわけだけど、それでも運がよかった方だと言われるくらいなようだ。

 そう考えると、とんでもないものに手を出してしまったんだなと思う。


「まあ、私はやったことないから、そうなんだくらいの印象なんだけど、確かにやろうと思ったら、気が狂いそうになるかもねとは思った」


「まあ、確かになかなか出ない時もありましたが」


「よくやろうと思ったね?」


「いやぁ、そこまで詳しくは調べなかったもので」


 私が調べたのは、動画に載っているタイムと、ルートくらいなものである。

 運ゲー要素が強いとは聞いていたけど、これくらいのタイムでクリアできるほどなら、別に気にしなくてもいいと思っていた。

 思えば、コメントでも、無謀なことはやめろみたいなことを言っていた人はそれなりにいたと思う。

 あれは割と的を射た発言だったんだね。ちょっと軽率だったかもしれない。


「でもまあ、時間をかければクリア自体はできることは証明されたので、このままやるつもりではありますよ」


「流石ハクちゃんね。応援してるよ」


 運ゲーがある以上、練習はそんなにしなくてもいいかもしれないね。

 実際、初見でもそこまで大きなミスはしなかったし、後は同時吸いとかの調整や最適な動き方とかを少し練習するだけで行けるだろう。

 やる以上はいいタイムを取りたいけど、競っているわけではないし、ある程度のタイムが出せれば私は満足である。

 本番では、うまくいくといいね。

 感想ありがとうございます。

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ハクさんなら高校生くらいの勉強なら教えられそう
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