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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十二章:転生者の仕事編
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第三百二十話:話を聞いてみる

 考えた結果、ひとまず行ってみるのがいいのではと思った。

 話を聞いただけでは、細かな情報がわからないし、もしかしたら、すでにあちらで解決策を用意している可能性もある。

 まずはその転生者に話を聞いてみて、詳しい事情を把握する必要があるだろう。

 そのことをウィーネさんに伝えると、確かにそうだなと頷き、まずは直接話を聞いたローリスさんに会った方がいいだろうということになった。

 転生者に話を聞くにしても、ローリスさんがいた方が話しやすいだろうしね。

 そう言うわけで、私とエルはウィーネさんの転移魔法でヒノモト帝国へと飛ぶことになった。


「まさか、こんな形で向かう羽目になるとは……」


 そろそろあちらの世界に向かうべきではないかと思っていたとはいえ、まさかそんな問題がついてくるとは思っていなかった。

 やっぱり、完全にばれないで暮らすというのは難しいのかもしれない。

 今回は、そんな致命的な発見ではなさそうだったけど、写真で撮られるということは、監視カメラやドライブレコーダーなんかにも気を付ける必要があるし、いくら夜に活動すると言っても限度はあるかもしれない。

 そのあたりは、何か対策を考えないといけないかもしれないね。


「ハク、よく来てくれたわ」


「ローリスさん、お久しぶりです」


 城の応接室に入り、ローリスさんと再会する。

 相変わらずの全裸にさらしという格好だが、もうすでに慣れてしまった。

 できればその獲物を狙うような目をやめてほしいとも思うけど、それは置いておいて、ひとまず話を聞くことにする。


「ウィーネさんからそれなりに聞きましたけど、ローリスさんとしてはどうしたいんですか?」


「私としては、できる限り転生者の願いは叶えたいと思ってる。罪悪感で申し訳ないと思うなら、その原因を取り除きたいって言うのが本音ね」


「なるほど。何か策はあるんですか?」


「一応、その人物についてはお父さんに調べてもらっているけど、正直どうしたものかって感じなのよね」


 仮に直接会える環境が整ったとして、正体を明かすのは怖いし、正体を明かさないにしてもリスクは付きまとう。

 なにせ、恩人にお礼がしたいという理由があるとはいえ、他人の写真をSNSに投稿してしまうようなネットリテラシーの低さだ。もし、何らかの理由で正体が露見するようなことになれば、そこからどんどん拡散されて行って、転生者達が滞在するのが難しくなる可能性もある。

 ただ、そうなると、原因を取り除くのは難しい。

 その人物が諦めるのを待つくらいだろうか。まあ、その場合、転生者のもやもやは晴れなさそうだが。


「ハクは、何か手は思いつかない?」


「今のところは何も。ひとまず、直接話を聞いてみて、それから考えようかと」


「まあ、本人がどうしたいのかを把握するのは大切ね。なら、今から行く?」


「そのつもりです」


 ローリスさんも具体的な策は浮かんでないみたいだし、ひとまず行ってみるのがいいと思う。

 まあ、直接話を聞いたところで策が浮かばない可能性もあるけど、何もしないよりはましだろう。

 私は、確認を取ってから、転移魔法を起動する。

 ウィーネさんも連れて行こうかと思ったけど、この城にローリスさんとウィーネさんがどちらもいない状況は避けたいので、今回もウィーネさんは残るとのこと。

 毎度、大変そうだけど、どうか頑張ってほしい。


「それじゃ、行きますよ」


 ローリスさんとエルの腕を掴み、転移魔法であちらの世界に転移する。

 私の転移魔法で行く場合は、あちらの世界で出る場所も自由に設定することができると思うけど、人目についてもあれなので、とりあえず転移魔法陣で行ける場所と同じ、山に転移することにした。


「ほんと一瞬よね。私もその転移魔法使えないかしら」


「どうでしょう、神力がないと難しいと思いますけど」


「うーん、流石にそれは無理かも」


 ローリスさんは、大体の能力をコピーすることができるが、流石に神力を使用する転移魔法は使えないと思う。

 仮に方法がわかっても、神力がないんじゃ使えないだろうしね。

 せっかくこちらの世界に来たのに、お兄ちゃん達を連れてこられなかったのは少し残念だけど、まあ、今ならそこまで時間を食うことはないし、問題ないと信じたい。


「さて、それじゃあひとまず向かいましょうか」


「そうですね」


 ローリスさんには、あらかじめ用意していた服に着替えてもらい、なるべく人目に付かないように移動する。

 隠密魔法で隠してもいいけど、まあ、一応節約ってことで。

 早く話を聞きたかったので、若干速足で向かうと、すぐにアパートが見えてきた。

 相変わらずぼろいが、特に変わった様子はなく、平和である。


「その転生者って言うのは、誰なんですか?」


「ケントね。ほら、サンダーバードの」


「ああ、あの人ですか」


 サンダーバードのケント。

 サンダーバードはその名の通り、雷の化身とも言える鳥で、ギザギザとした尾羽と、黄色い体が特徴である。

 雷の化身と言われるだけあって、自在に雷を降らせることができ、生ける災害とも言われるAランク級の魔物だ。

 【擬人化】の際は、その特徴的な尾羽と、黄色い髪にツンツンとした髪型が目立つが、尾羽はズボンに隠せば見えないし、髪色はかなり目立つが、帽子を被ればそこまででもない。

 見られたとしたら、尾羽かな? 隠せば見えないとはいえ、結構特徴的な見た目だし、ちらっとでも映っていたら目立つだろう。


「本人は今どうしてるんですか?」


「一応、しばらくは外出禁止ってことにして、部屋に引きこもってもらってるわ。でも、悶々としてるみたい」


「大丈夫ですかね……」


 まあ、究極的なことを言うなら、ばれたくないなら助けに入るなんて目立つ行為をしなければよかった、とも言えるけど、流石にそれは酷というものだろう。

 ある程度情があれば、目の前で襲われていたら助けに入るのが普通だ。特に、自分が常人よりよっぽど強い力を持っているというなら、自分が襲われるという心配をしなくてもいい分、踏ん切りがつきやすい。

 だから、助けたこと自体は間違いではないと思う。

 本来なら、サンダーバードの速さをもってすれば、写真に写るよりも早く移動できたと思うしね。

 今回はちょっと、運が悪かったというだけで。


「まあ、とりあえず本人に話を聞いてみましょ」


 ローリスさんは、慣れた様子で階段を登り、ある部屋の前で止まる。

 インターホンを押し、しばらく待っていると、扉が開いた。


「あ、ローリスさん。それに、ハクさんとエルさんも……」


「ええ、調子はどう?」


「まあ、体調は悪くないんですが、その……」


「まだ気にしてるわけね」


「はい……」


「その気持ちはわかるわ。とりあえず、ハクにも話を聞かせて上げてくれる?」


「わかりました。どうぞ、中へ」


 そう言って、ケントさんは私達を中へと通す。

 さて、事の詳細はどんな感じなんだろうか。

 感想ありがとうございます。

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