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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十一章:空飛ぶ船編
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幕間:お披露目式

 主人公、ハクの視点です。

 今日は、魔導船のお披露目会の日である。

 お披露目と言っても、公の発表ではなく、魔導船の製作に携わった国々に対するものではあるけど、携わった国は結構な数に上るし、そのうち魔導船の情報は世界中に広がっていくことだろう。

 最先端の技術を真っ先に目の当たりにできると考えれば、このお披露目会も結構重要な意味を持つ。

 特に、あまり活躍できなかった国は、自分も呼んでもらえてほっとしていることだろう。


「皆の者、よく集まってくれた。本日は、魔導船の完成を祝う日である。お互いの健闘を称え、どうか楽しんでいってほしい」


 皇帝が、そう高らかに宣言する。

 今回のお披露目会では、実際に魔導船を飛ばしてみて、その運用度のテストを行う目的もある。

 協力してくれた国の中から、希望があった人々を数人乗せ、皇都の周りを一周する予定となっている。

 まだ試作品故に、安全面の確認はされていないが、魔導船の初の飛行ということで、希望者は多く、ほぼすべての国から希望者が手を上げた。

 中には、その国の王様なども行きたいと言っていた国もあったようだけど、流石に、万が一のことがあったらいけないので、王族は遠慮してもらったようだけど。

 まあ、そんなの関係なしに、皇帝は乗るつもりみたいだけどね。

 よほど職人達の腕を信頼しているのか、それとも好奇心か。どちらかはわからないけど、皇帝が乗り込むことで、他の人も若干安心しているようなので、意味はあるのかもしれない。


「それでは、乗り込んでくれ」


 その言葉と同時に、魔導船からタラップが降りてくる。

 皇帝が先んじて乗り込み、他の人達も後に続く。

 私も、ぜひとも乗ってみたいと思っていたので、当然立候補している。なので、その後に続いた。

 魔導船の内部は、客船をモデルに作られている。

 いくつかの船室があり、パーティが開けるほどの大広間も存在している。

 色々なパーツがくっついていることを除けば、ただの豪華客船に見えなくもない。

 まあ、それだけでも凄いことだけどね。

 ここまでの大きさの船は、この世界だとほとんど見ないし、これだけ大型化してきちんと機能するなら、魔導船じゃなくても凄い技術力である。


「皆乗ったな? それでは、発進!」


 皇帝の指示により、魔導船が起動する。

 各種取り付けられたプロペラやら羽やらが動き出し、徐々にその巨体を浮かび上がらせていく。

 数瞬後には、船は上空にいた。

 甲板でその光景を目の当たりにしていた人々は驚き、あるいは歓声を上げ、このプロジェクトの完成を喜んでいるようである。

 いやぁ、まさかほんとに飛ぶとは。

 半分くらい、飛ばずにそのままなんて可能性も考えていたけど、流石にセレフィーネさんの設計でそれはないか。

 ぐんぐんと高度を上げやがて雲と同じくらい高くまでくる。

 ここまでくると、若干空気が薄くなる気もするけど、まあ、そこまで深刻ではないかな。

 風避けの魔道具も機能しているようで、突風に煽られて落ちそうになる、なんてこともない。

 この調子で行けば、快適な空の旅を続けることができそうだ。


「魔法を使わず、人の手だけで空を飛ぶ時代ですか」


「昔は空を飛ぶ人いなかったの?」


「飛行魔法で空を飛ぶ人はいましたが、このように道具を使って空を飛ぶ人はいませんでしたね」


 エルが、感慨深そうな表情でその光景を見ている。

 飛行魔法は、相当な魔力操作の技術と、莫大な魔力が必要となってくる。

 遥か昔では、神様の神力が溢れていたから、魔力の問題は特になく、技術に関しても、それが当たり前の時代だっただろうから、特に驚かれるようなことはなかった。

 しかし、神様が地上からいなくなり、神力から魔力へと変化していった過程で、飛行魔法は、ほぼ使い物にならない魔法と化してしまった。

 だから、今の時代で空を飛ぶというのは、かなりの偉業なのである。

 そう考えると、確かに凄いことだよね。


「船が空を飛ぶって言うのは、ゲームでは見たことがあるけど、実際にやるってなると凄いことなんだね」


「ハクお嬢様は、自分でも飛べますけどね」


「それはそうだけど、こういうのってワクワクしない?」


 そりゃ確かに、あちらの世界では、飛行船だったり、飛行機だったり、空を飛ぶ手段は色々あるけど、手段によって、感じ方は変わると思う。

 極端に言うなら、自力で空を飛ぶのと、誰かに飛ばせてもらうのとでは全然違うだろう。

 特に、魔導船はおとぎ話の中に出てくるような、本来は存在しない船である。

 それが実際に飛んでいると考えると、ちょっと興奮する。


「申し訳ありませんが、私にはよくわかりません」


「そう?」


「不安定というか、いつ落ちるかもわからないものに身を任せたくはないので」


 エルとしては、自分で飛べるのに、わざわざ自分よりも遅く、不安定なものに身を任せるのはあまりよろしくないらしい。

 魔導船の方が性能的に上回っているというなら、使うのも吝かではないが、そうでないなら、自分で飛んだ方がましって感じらしい。

 まあ、この辺りは、空への憧れを持っているかどうかで変わってくると思う。

 私は、元々普通の人間だったから、空を飛んでみたいという願望は少なからずあった。けれど、エルは元々が竜で、空を飛べるのが当たり前だったから、そこまで空に対する憧れがないんだろう。

 だから、同じ飛ぶなら、単に性能のいい方を選びたいってことなんだと思う。


「ハクお嬢様は、この船と私の背中なら、どっちがいいですか?」


「それは、エルの背中だけど」


「ふふ、それを聞いて安心しました」


 ちょっと嬉しそうに笑顔を見せるエル。

 何の対抗心なんだろうか。魔導船もエルの背中も、どちらもいいものだと思うけどね。

 しかし、この魔導船、そんなに速くはないな。

 かなり巨大だから、それを浮かせるための浮力を生み出すので精一杯で、推進力を生み出す力が弱いんだろうか。

 この様子だと、もしかしたら馬車の方が早い可能性もある。

 これなら、移動革命とまでは行かないのかな?

 いや、いくら遅くても、道中危険な魔物や盗賊と出会わなくて済むというのはあるし、空なら地形関係なく一直線に進むことができることを考えると、多少遅くてもつり合いは取れているかもしれない。

 それに、今回の魔導船は、まだ試作品段階である。

 これからもっと改良が成されていくだろうし、そのうち、高速で移動できる手段として確立するかもしれない。


「まあ、これに関しては、今後に期待かな」


 こうして、空を飛び、移動できるというだけで、すでに革命的な発明である。それに文句を言うのは、お門違いというもの。

 まあ、改良するにあたって、またギガントゴーレム級の魔石が必要になるかもしれないと思うと、なかなか進まなそうではあるけど、それもいずれは改良していけるといいね。

 魔導船は、宣言通り皇都を一周し、元の場所に戻って、着陸することができた。

 人々は、空飛ぶ船に感銘を受け、その一助となれたことを誇りに思うことだろう。

 いつの日か、魔導船が普通に使われる時代も来るといいね。

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― 新着の感想 ―
取りあえず飛ばす理論はできたから次はブラッシュアップですね 空飛ぶデロリアンとかロマンの塊だもんな
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