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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十一章:空飛ぶ船編
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第三百十六話:誘拐事件

 今日もドックは平和だった。

 爆発事故が起きてから、また同じことが起こるんじゃないかと、職人達は少し不安げだったが、あれからこの場所にあるものはすべて検め、危険性はないと判断されたし、後から持ち込むものにも、厳しいチェックが成されるようになったので、一応は安心することはできていると思う。

 まあ、そのせいで作業がだいぶ遅れてしまっているけど、それはもう仕方ない。

 妨害してきた国に文句言うしかないね。


「このまま何もなければ……」


「た、大変です! セレフィーネ様が行方不明に!」


「……よかったんだけどなぁ」


 突如、ドック内に駆け込んできた警備の人によって、平穏は破られた。

 いやまあ、確かに相手が仕掛けるならそろそろだと思っていたし、狙われるとしたら魔石よりはセレフィーネさんを攫う方が簡単だろうから、そっちが狙われるとは思っていたけども。

 こんなことなら、セレフィーネさんの意見を無視して見張っておけばよかったとも思うけど、まあ、まだ慌てるような時間じゃない。

 行方不明ってことは、殺そうとしたのではなく、攫って行ったってことだと思う。

 セレフィーネさんは恐らく家にいただろうし、もしそんな短慮な相手なら流石にエルバートさんが気付くはず。

 まあ、攫われたとしても気づく気がしないでもないけど、とにかく、死んではいないはず。

 であるなら、あらかじめ渡されていた共鳴石を使うことで、後を追うことができるはず。


「さて、一体どこにいるのか」


 私はドックから出て、さっそく共鳴石を使ってみることにした。

 共鳴石は、同じ波長を持つ共鳴石の方向を示すらしい。

 いったいどのように示すのかと思ったけど、どうやら振動して示すらしい。

 対となる共鳴石がある方向に向かって振動してくれるので、手のひらの上に置いていると少しくすぐったいが、これならなんとなくの場所はわかりそうだ。

 まあ、ちょっと使いにくい気はするけどね。

 振動という方法だから、若干わかりにくいし、大まかな方向しかわからないから、これだけをヒントに探すのは少し難しそう。

 私の場合は、探知魔法があるから、近くまで行けばセレフィーネさんの魔力を探知できると思うけどね。

 とにかく、振動を頼りに、攫われたと思われる方向へと進んでいく。


「いつ攫われたかにもよるけど、そう遠くではなさそう?」


 しばらく歩いていると、だんだんと振動が強くなっていくのがわかった。

 近づくにつれて、振動の強さが変わるのかな?

 探知魔法でも、しばらくしてセレフィーネさんの気配が引っ掛かった。

 どうやら、近くにある鉱山付近に向かっているのかな?

 セレフィーネさん以外に、気配が四人ほどある。

 流石に、これだけでどこの国の人かまではわからないけど、まあ、見れば何となくわかるだろう。


「さて……」


 木々が生い茂る道中。

 どうやら、奴らは馬車に乗っているようだった。

 外からだと見えないけど、探知魔法で見れば、あの中にセレフィーネさんがいることは明白である。

 さて、どうしたものか。

 恐らく、攫われたことは間違いない。警備の人も、行方不明だって言ってたし、少なくとも誰かに伝えてからいなくなったわけではないだろう。

 だから、ここで問答無用で襲い掛かって、セレフィーネさんを救出するって言うのでも、問題はないと思うけど、万が一ということもある。

 これで、お忍びでどこかに行ってましたじゃ、私が悪者だし、ちょっと様子を見たいところ。

 今のところ、奴らにセレフィーネさんを殺すような意思はなさそうだしね。

 まあ、セレフィーネさんが縛られたりして、辛い状況に遭ったらちょっと可哀そうだけど、多分大丈夫だと信じたい。


「いったいどこに行くつもりなんでしょうね?」


「さあ。あんまり地理には詳しくないけど……」


 一応、この先には鉱山があるということは知っている。だが、その先に何があるのかまでは知らない。

 というか、ゴーフェンの妨害をするためにセレフィーネさんを誘拐するのはいいとして、そのあとどこに連れていくかだよね。

 考えられる可能性としては、どこかに監禁しておくとか、あるいは自国に連れ帰るとかだけど、後者の場合、ちょっと難しそうな気はする。

 なにせ、隣国だとしても、皇都から行くとなると最低でも一か月以上はかかる。

 その間、セレフィーネさんを大人しくさせておけるとは思えないし、転移魔法陣で連れていくにしても、あれは目立ちすぎるから無理がある。

 となると、どこかに監禁しておくって考えるのが自然か。

 鉱山は、その隠れ蓑なのかもしれない。


「とりあえず、鉱山に着いたら助けようか」


 あわよくば、監禁場所を突き止めて、まとめて検挙したいところ。

 私は、気づかれないように隠密魔法をかけながら、馬車の後を追う。

 しばらくすると、鉱山の近くまでやってきた。

 鉱山そのものに用があるのかと思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。

 途中で馬車を止め、中からセレフィーネさん達が姿を現す。

 どうやら、セレフィーネさんは両手を後ろに縛られ、猿轡をさせられているらしい。

 ちょっと可哀そうな光景だけど、抵抗しなかったのか、そこまで酷い傷はなさそうだ。

 他は全員男で、黒い外套を身に纏っている。

 明らかに怪しげな人達だし、誘拐されたのは確定のようだ。


「なんか可哀そうだし、もう助けちゃうか」


 ここで降りた以上、恐らくこの先に監禁場所があるとは思うけど、別にここで助けてしまっても、後から探し出せばいいだけの話である。

 流石に、ここからそう遠くはないだろうし、探知魔法を駆使すれば、人がいるならすぐにわかるだろう。

 いないならいないでこいつら以外に仲間はいないってことだし、問題はない。


「ちょっと失礼しますよっと」


「な、なんだおま……」


 即座に近づいて、全員の首をトンってやって気絶させる。

 最後の一人に気づかれかけたけど、まあ、顔は見られてないだろうし大丈夫。

 私は、セレフィーネさんにつけられている猿轡を取り、縄も解く。

 すると、セレフィーネさんはちょっと膨れっ面をしていた。


「ハクさん、助けるのが早いです」


「え?」


「せっかく、このまま彼らの国まで連れて行ってもらおうと思ってましたのに」


「えぇ……」


 なんか、助けたら文句を言われてしまった。

 助けろって言ったのはそっちじゃないですか……。


「もしかして、わざと攫われました?」


「はい。私の設計した船にケチをつけるのですから、その落とし前はつけさせてもらおうかと思いまして」


「危ないですよ」


「大丈夫ですよ。その証拠に、こうして助けてくれたじゃないですか」


 そう言って、私のことを指さすセレフィーネさん。

 どうやら、妨害をされたことを思ったよりも怒っていたらしい。それで、仕返しをしたいって思っていたようだ。

 だからと言って、それでわざと攫われるのは違うと思うけど……。

 思った以上に、セレフィーネさんはアグレッシブな性格なのかもしれない。

 意外な一面に、思わずため息をついた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
でも国まで連れて行かれたら最低でも一月は遅れるから……
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