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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十一章:空飛ぶ船編
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第三百十五話:爆発の手法

 それから数日。特に何事もなく、時は過ぎて行った。

 事故によって傷ついた個所はすぐに修復され、作業は滞りなく続いている。

 もし、何者かが妨害をするつもりなら、そろそろもう一度仕掛けてきてもおかしくはなさそうだけど、果たして。

 つい、気になって、毎日のようにドッグに足を運んでしまう。

 あの時は、誰も怪我することはなかったが、次はそうじゃないかもしれない。

 私がいれば、治癒魔法ですぐに治してあげられるし、そういう意味でも、近くにいたかった。


「皇帝から続報はないんですか?」


「今のところは。ただ、爆発の原因は何となくわかったみたいだね」


 あの謁見の後、すぐに国の方からも調査が入ったらしい。その結果、爆発の原因と思われるものを発見したようだ。

 それは、木片に刻まれた刻印である。

 刻印魔法の中には、爆発魔法に類似する刻印が含まれている。

 もちろん、暴発したら命はないし、実用性もそこまででもないため、実際に使用する人は少ないが、それでも刻印魔法で爆発の刻印を刻めば、その場にいずとも、うまくすれば遠隔で爆発させることが可能である。

 本来なら、刻印魔法は武器などに刻むが、今回は作業員達が休憩に使っていた、椅子の代わりの樽に仕掛けてあったらしく、爆発によって刻印は木っ端みじんになり、証拠は隠滅されたというわけだ。

 国の調査によって、運良く残っていた破片を見つけられたからよかったものの、そうでなければ完全犯罪だったかもしれない。

 恐ろしいことを考えるものだ。


「犯人の特定はできてないですか」


「流石にそっちはね。でも、爆発魔法を刻印できるってことは、少しは絞り込めると思うけど」


 刻印魔法で爆発魔法を付与するためには、結構な技術がいる。

 ただの刻印師が刻もうとしたところで、少しでも歪みが生じれば、暴発して命はないからね。

 つまり、爆発魔法を刻んでも、失敗しない自信があるほど優秀な刻印師がいる国ってことになる。

 優秀な刻印師は、国がお抱えにすることも多いので、一般にはあまり出回らないが、逆に言えば、それだけ有名でもある。

 優秀な刻印師を持つ国を当たって行けば、いずれ妨害していた犯人もわかることだろう。


「なら、時間の問題ですね」


「うん。でも、だからこそ、相手も焦ってくると思うんだよね」


 今回の妨害は、本来なら、証拠も残らない完璧なものになる予定だった。

 しかし、それがすぐにわかったとあっては、相手も焦ってくるはず。

 もちろん、国はこのことを発表していないので、まだ悠長に構えているって可能性もなくはないが、スパイが優秀なら、知っていてもおかしくはない。

 だから、焦って何かしら仕掛けてくる可能性も十分にある。


「それなら、彼女のことを見ていた方がいいんじゃないですか?」


「それはそうなんだけど、セレフィーネさん自身が断ってきたんだよね」


 あらかじめ、攫われるのがわかっているなら、攫われないように護衛をつけるなりすればいいじゃんと思ったんだけど、セレフィーネさんはなぜかそれを断ってきた。

 自衛のために色々魔道具を用意しているとは言ったが、自分で完全ではないと言っておきながら、なぜそんな真似をしたのかわからない。

 確かに、あえて攫われることで犯人を特定することができるって言うのはあるかもしれないけど、あまりに危険な賭けじゃないだろうか?


「いったい何を考えているのやら」


「攫われるとわかっているのに何もしないのは、確かによくわかりませんね」


 まあ、セレフィーネさんも馬鹿じゃないだろうし、何かしらの狙いがあるんだろうけどね。

 私にできることは、攫われたとしたらできるだけ早く助けることである。

 攫われるのではなく、問答無用で殺しに来たならちょっとやばいけど、一応、防御魔法を仕込んだアクセサリーは渡したし、セレフィーネさんほどの発明家をむざむざ殺すような真似はしないと信じたい。

 うまく利用できれば、自国が潤うかもしれないんだからね。


「魔石の方はどうですか?」


「そっちは大丈夫じゃないかな。一応、皇帝には伝えておいたけど」


 魔石の管理は、皇帝がやっていることもあって、あの後皇帝に魔石が狙われるかもしれないということは伝えておいた。

 皇帝も、すでにその可能性には気づいていたらしく、魔石の保管場所には厳重に警備を敷いているらしい。

 元々、ゴーフェンの宝物庫は、様々な魔道具によるセキュリティが行き届いており、他の国の宝物庫とは比べ物にならないくらいの堅牢さを誇っている。

 それは、今まで宝物庫を暴かれたことが一度もないことからもわかるだろう。

 だから、よほどのことがない限りは、魔石は大丈夫だと考える。

 まあ、仮にダメだったとしても、最悪代わりは用意できるけどね。

 魔力を帯びたゴーレムがいっぱい出る場所は知ってるから。


「ならいいですが……馬鹿なことを考えるところもあったもんですね」


「ほんとにね。現実が見えてなさすぎる」


 ゴーフェンの社会的信用を無くさせるのが狙いだとは思うんだけど、そもそもゴーフェンを敵に回すこと自体が間違ってると思う。

 ゴーフェンは、ドワーフ達の高い技術力を狙ってか、度々狙われてきた歴史がある。

 ただ、ゴーフェンは、それらを悉く撥ね退け、逆に相手の国を吸収する形で、ここまで大きくなってきた。

 そもそも、ゴーフェン自体は特に争う姿勢はなく、攻撃されても、今やめれば許してやるって言うスタンスだった。それを、わざわざ突っ込んでいって玉砕してるんだから、無謀だと言わざるを得ないよね。

 ゴーフェンの発言力が大きいのは、過去に同じような過ちを犯した国がたくさんあるからなのに、自分達は関係ないとばかりに同じことを繰り返すのはどうなのか。

 自分達だけは特別だと思ってる? 個人で思う分にはどうでもいいけど、国単位でそう思うのは流石に考え直した方がいいと思うけどね。

 過去に、それで滅んだ国なんていくらでもあるだろうに。

 今回の件で、仮にゴーフェンの信用が失墜したとして、じゃあ妨害をした国の信用が上がるとも思えないし、本当にただ、気に入らないから邪魔してやるって言う風にしか見えない。

 そういうのは、子供の喧嘩だけにして欲しいものだ。


「このまま何事もなく完成まで行ってくれたらいいんだけど……」


 一番いいのは、今回の件でゴーフェンは揺るがないことを認め、手を引いてくれることだ。

 まあ、絶対にそんなことにはならないと思うけど。

 セレフィーネさんのことも心配だし、色々と考えることが多い。

 せめて、私の目の届く場所なら、対処もできるから、そこでやって欲しいものだね。

 そんなことを考えながら、今日もドッグで作業を見守るのだった。

 感想ありがとうございます。

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