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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十一章:空飛ぶ船編
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第三百十四話:妨害工作

 調べた結果、原因はわからずじまいだった。

 有力なのは、何者かが火魔法で爆発を起こしたってところなんだろうけど、ドワーフは魔法の扱いが不得手だ。意図的にしろそうでないにしろ、そうそうやるとは思えない。

 ならばドワーフ以外がいたのではないかとも考えたけど、あの時ドッグにいたドワーフ以外というと、私とエルくらいしかいない。

 もちろん、私達は何もしていないし、完全に想定外だ。

 監督者も、エルバートさんも、何が原因なのかわからないようで、とにかく皇帝に報告しようということになり、城に行くことになった。

 一応、もしかしたらこれをやらかした犯人がいるかもしれないので、エルには見張りとして残ってもらって、私とエルバートさん、セレフィーネさんで謁見することになった。


「それで、被害状況は?」


「幸い、怪我人はおりませんでした。船の方も、一部のコーティングが傷ついたくらいで、特にダメージはありません」


「ふむ、まずは怪我人がいなくて何よりだ」


 皇帝が真っ先に心配したのは、怪我人がいるかどうかだった。

 船も大事だろうが、やはり優先すべきは人員である。

 いくら大きなプロジェクトとはいえ、そこは履き違えないようだ。


「原因はわからないのか?」


「はい。爆発跡を調べてみましたが、これと言った証拠は見つけられず……」


「そうか……」


 あの場にあったのは、コーティングに使っていたシールっぽいものと、木材の破片くらいだった。

 作業していたドワーフに話を聞いたりもしてみたけど、特にこれと言った証言は得られず。

 本当に、なんで爆発したのか、見当もつかない状態だった。


「どこかの国の妨害工作か……?」


「それは、確かにあり得るかもしれません」


 今回のプロジェクトは、夢の船を完成させようという、壮大なプロジェクトである。

 これに参加している国は、ゴーフェンが選んだ、特に友好的な国だけであり、それ以外のそこまで友好的でない国は含まれていない。

 プロジェクト自体は、一応秘密裏に行われてきたけれど、流石に半年近くも経てば、どこからか情報が洩れてもおかしくはないだろう。

 ゴーフェンにお呼ばれされなかったことを恨んで、あるいは純粋にゴーフェンのことを恨んでいる国が、邪魔するために爆発事故を起こした、と考えれば、辻褄は合う。

 ただ、いまさらそんなことしてどうするんだって話ではある。

 確かに、今回のプロジェクトが頓挫すれば、ゴーフェンの信用は失墜するだろう。

 なにせ、参加を打診された国は、ゴーフェンが新たな時代を築くその一歩に、一枚噛ませてやろうという割と上から目線の物だった

 これでできなかったら、そうして誘った国々からバッシングを受けてもおかしくないし、ゴーフェンの技術力が劣っているという証左になってしまう。

 だが、それはプロジェクトが完全に頓挫した場合だ。

 いくら妨害工作をしたところで、ずっと続けることはできないだろう。物理的にゴーフェンの技術者の命が狙われたり、設計図が盗まれでもしない限り、プロジェクトは止まることはない。

 そして、もし途中で妨害していることがばれれば、ゴーフェンは全力で潰しに来るだろうし、あまりにリスクが大きすぎる。

 確かに、ゴーフェンの信用を失墜させることができると考えれば、賭けに出てもおかしくはないけど、それだってあからさまに誰かに妨害されてってなったら、バッシングもそこまで強まらないだろう。

 明らかに、リスクとリターンが見合っていない気がする。


「もしそうだとしたら、あまりにも短慮が過ぎるが、ゴーフェンを敵視している国もないわけではない。恨みが積もって、というのも考えられる」


「だとしたら、どうしましょう? 私としては、このまま開発を続けるべきだと考えますが」


「うむ、開発自体はこのまま続けるつもりだ。まだ誰かが仕掛けてきたと決まったわけではないが、それに関してはこちらで調べておく。妨害に負けず、必ずや完成させようではないか」


「もちろんでございます」


 結局、今回のことは、事故として済まされることになった。

 もちろん、皇帝が調べておくと言ったからには、暗部が動くだろう。

 今回の爆発事故は、結構巧妙に仕組まれたもののようだけど、流石にそう何度も通用するとは思えない。

 そのうち、誰が妨害していたのか、ひいてはどの国が恨みを持っているのかもわかるはず。

 まあ、そう大きな問題にはならないだろう。


「ハクさん、少しよろしいですか?」


「はい?」


 謁見を終え、城を後にする道中、セレフィーネさんが話しかけてきた。

 珍しく、エルバートさんに聞こえないように、わざわざ離れて寄ってきたので、これは何かあるんじゃないかと思い、こちらも居住まいを正す。

 いったい何の話だろうか?


「今回の事件、恐らくこれで終わりにはなりません」


「それは、そうですね」


 これが、ただの誰かのミスであるならば、これで終わりになる可能性もあるだろうけど、誰かが妨害しようとしているなら、また妨害があってもおかしくはない。

 いくらリスクとリターンが見合ってないとはいえ、相手はそうと思ってない可能性もあるし、愚直に妨害してくる可能性は十分にある。


「このプロジェクトを妨害するにおいて、最も確実な方法は何かわかりますか?」


「確実な方法ですか? それは……設計図を盗むとかですかね」


「ええ、それもあるでしょう。ですが、それだけでは足りません。なにせ、私の頭の中には、設計図があるのですから」


 確かに、設計図が盗まれるのは致命的だが、設計者であるセレフィーネさんがいれば、仮に盗まれてしまったとしても、新たに作成することができるだろう。

 もちろん、設計図が盗まれるということは、魔導船の弱点を晒すということでもあるから、完成した後にも破壊される可能性があるけど、ただプロジェクトを成功させるだけだったら、セレフィーネさんがいさえすれば、問題はないとも言える。


「致命的なことは二つ。一つは魔導船のコアとなる、魔石が盗まれること」


「それは、確かに……」


 魔導船の動力源となる魔石は、現状替えが効かない。

 魔力を帯びたギガントゴーレムという、珍しい個体を丸々魔石として利用することで、コアとしようとしている関係上、これを盗まれたり、破壊されたりしてしまうと、魔導船を作ることができなくなってしまう。

 まあ、あれは恐らく城の宝物庫とかに保管されていると思うから、そうそう手は出せないと思うけどね。

 もし手を出せるとしたら、城の人が裏切ったってことになっちゃうだろうし。


「もう一つは、私自身が攫われることですね」


「あっ……」


 確かに、その可能性もあったな。

 セレフィーネさんの頭の中に設計図があるなら、セレフィーネさん自身を攫ってしまえばいい。

 セレフィーネさんは、ゴーフェンでも随一の魔道具発明家だし、ゴーフェンの国力を低下させるという意味でも、セレフィーネさんの存在は重要だ。

 設計図を盗まれるより、よっぽど大変なことである。


「もちろん、私も自衛のためにいくつかの魔道具は所持していますが、それで身を守り切れるかわかりません。ですので、ハクさんに、これを渡しておこうかと思いまして」


 そう言って、手渡してきたのは、ペンダントのように装飾された、小さな丸い結晶だった。

 魔石を小さく砕いたもののようにも見えるけど、これは一体?


「それは、共鳴石と呼ばれるもので、同じ波長を持つ共鳴石の方向を示す効果があります」


 セレフィーネさんは、そう言って懐からもう一つ同じものを取り出す。

 なるほど、セレフィーネさんの言いたいことがわかってきた。


「つまり、もし攫われるようなことがあったら、これを伝って助けに来て欲しいと?」


「そういうことです。兄様では、どんな無茶をするかわかりませんからね。ハクさんなら、信用できるというものです」


「そういうことなら、承りました」


「よろしくお願いします。私も、まだ死にたくはないので」


 最後ににこりと笑うと、セレフィーネさんは去っていった。

 しっかりと先のことを考えているあたり、セレフィーネさんはやはり油断ならない人である。

 まあ、一番は攫われないことだけど、もしそうなったら、しっかり助け出すとしよう。

 というか、その可能性があるなら、私もアクセサリーを渡しておいた方がいいかな?

 あれには、防御魔法を仕込んであるから、いざという時には守ってくれるはずだし。

 私は、急いでセレフィーネさんの後を追う。

 さて、厄介なことにならなければいいけど。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
厄介事にはなるだろうなぁ
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