第三百十二話:少し休憩
王都に帰った後、さっそく納品、と行きたかったけど、他の冒険者がまだ依頼を完了していなかったので、しばらく待つことになった。
別に、できた分から納品しても問題はないだろうけど、今回の場合、一つの素材だけあっても意味がない。
一層一層丁寧に重ねていき、魔力伝導率の差を縮める必要があるので、必然的にすべての素材が揃わなければ作るのは難しい。
もちろん、持ってきた魔物の素材が必ずしも合うとは限らないし、場合によっては数が足りないなんてこともあるだろうから、すべてが順調に行くとは限らないけど、足並みを揃えることは大切である。
ということで、次に転移魔法陣が使えるまでの間、他の魔物も狩りに行くことにした。
なに、時間はあるのだ。少しくらい手伝っても問題ないだろう。
「それで、集めたのがこの素材達だと」
「そういうことになりますね」
「なんというか、あなた達が味方で本当によかったと思います」
ある程度集まったところで、フェンスさんに見せに行ったんだけど、そうしたらなんだか遠い目をしていた。
まあ、こんな魔物達を軽々討伐できる人達が敵に回ったら、国としては相当危険な状態だよね。
もちろん、冒険者はあんまり戦争には加担しないと思うけど、それでもお金のために加担する人もいないわけじゃないし、そう考えると、冒険者は優遇しておくことに越したことはない。
特に、Bランク以上の高ランク冒険者はね。
「さっそく、あちら側に渡してみたいと思います」
「お願いします」
素材に関しては、結構な量になるので、私が【ストレージ】で運ぶことになる。
転移魔法陣でゴーフェンへと向かい、さっそく素材を納品することにした。
「確かに受け取りました。これで、一層完成に近づくと思います」
相手の外交官は、そう言って笑顔を見せた。
今回、狩ってきてほしいと言われたリストに書かれていた魔物のうち、約八割近くを狩ってきた。
他の冒険者達の頑張りもあるけど、暇を持て余したお兄ちゃん達が張り切ったというのもある。
他の国にも、同様のリストは渡されていたが、彼らも同じように納品できたかはわからない。
だが、この様子を見る限り、少なくともいい結果ではあったんだと思う。
そういう意味では、頑張った甲斐はあったかな。
「これでひとまずは前進かな?」
「そうですね。まさか、あのような方法で魔力伝導率を解決するとは思いませんでしたが」
この後は、既存の木材で船体を作ったのち、それぞれの魔物の素材でコーティングを施していくことになる。
魔力伝導率はもちろん、外敵に脅かされない防御力も完備した、完璧な装甲。
いったい何層積み重ねることになるかはわからないが、そのあたりはセレフィーネさんが何とかしてくれるだろう。
素材が足りないというならまた取ってくる所存ではあるが、これでひとまず私達の仕事は終わったかな?
「ハク殿、ご協力ありがとうございました」
「いえいえ。この後はどうしますか?」
「私はもろもろの調整のために待機ですね。ハク殿は、お休みになられていても問題ありませんよ」
「そういうことなら、ちょっとゆっくりさせてもらいますね」
ここ最近は、ずっと狩りに明け暮れていたので、少し疲れている。
いや、そんな気にするほどのことではないんだけど、精神的にね。
なので、しばらくの間は、家に籠っていようかなと思うのだ。
手伝えることがあるなら手伝いたいけど、正直、ゴーフェンの技術力には勝てない。
魔物の素材を船体のコーティングをするために加工するのも技術がいるし、浮力を生み出すパーツに関しても然り。
私の、小手先の魔道具作製技術では、流石に分が悪い。
素材を用意しろというなら喜んで用意するが、それもないなら、休んでいても問題はないはず。
ということで、久しぶりにゲームでもしようかなと。
「割と久しぶりかな?」
家に帰り、さっそく自室に用意したゲーム機の電源をつける。
ここ最近は、魔導船の開発のために色々飛び回っていたというのもあるし、家に戻ること自体が久しぶりな気がする。
別に、ゲームにそこまで時間を割く必要はないけど、これでもRTA配信やらである程度のプレイはしなくてはならないからね。練習は大事だ。
しかし、次は何をしよう。
以前やったのは、宇宙運送の遭難記のRTAだった。
あれにはチャレンジモードとかもあるし、続編もあるから、そっちにチャレンジしてもいいんだけど、私としては色々なゲームで遊びたい。
何かよさげなものはないだろうか。
「たくさんもらったけど、まだ全部は見れてないんだよね」
私がRTA配信をするってなった時に、親切なリスナーさんが色々とゲームを送ってくれたけど、数が多すぎて全部は見れていない。
懐かしのゲームもいくつかあるので、そっちに手を回してもいいんだけど、あんまり古いと今の子は知らないんじゃないかという不安もある。
いや、名作ゲームなら古くても関係ないかな?
例えば、魔界の村とかは有名だろう。テレビでも取り上げられていたくらいだし。
なるべく名作である方がいいのは確か。となると、やっぱり落ち着くのは赤い帽子の配管工のゲームとかになりそうなんだよね。
「あ、これとかいいんじゃない?」
赤い帽子の配管工とは少し違うんだけど、その弟である、緑の帽子が主人公のゲームがある。
お化け屋敷に行って戻ってこない兄を探して、掃除機でお化けを吸い取りながら屋敷を探索するというゲームで、今まで日の目を見なかった緑の帽子が活躍するとあって、結構人気だったような気がする。
私はホラーは苦手だけど、これくらいのカジュアルさなら、多分大丈夫かな?
昔やっていたことがあったけど、その時は一エリア目で詰んだ気がするが。
「うん、これやってみよう」
とりあえず、やるだけやってみようということで、ソフトをセットし、ゲームをスタートさせる。
ゲーム自体が久しぶりということもあって、なんか懐かしい気持ちになってしまったが、これは当時の思い出補正も入っていそう。
一通りプレイし、一エリア目を突破するところまで行って、ああやっぱり今ならできそうだなと確信する。
これのRTAとかあるのかな。ここだと動画が見られないから、調べられないけど、後であちらの世界に行った時に調べていくとしよう。
私は、次にあちらの世界に行った時のことを考えつつ、ゲームに熱中するのだった。
感想ありがとうございます。




