表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第四章:ドワーフの国編
118/1545

第百五話:サリアとデート

 護衛依頼は結構な日数がかかる。近場であればお金を浮かせるために護衛を付けないこともたまにあるらしいけど、お金に余裕があるなら基本的にはつける。

 護衛の仕事は道中の安全を確保することだ。野盗に襲われるなど、不測の事態に対応するためにそこそこのランクが要求される。

 私の場合はすでにBランクという評価を貰っているためその辺りは問題ないが、一つ問題があるとしたら自らの容姿である。

 身長130センチメートルちょっとしかない幼い少女。11歳ではあるが、見た目的には幼女と言っても差し支えない容姿だ。

 依頼主は道中の安全のために護衛を雇うのであって、実力を重視する。それなのに護衛だと言って現れたのがこんな子供だったらどう思うか。

 とにかく舐められる。こんなところに子供が来るんじゃないとか、ギルドに騙されたとか、酷い時は護衛とすら思われず迷子扱いを受けることもあった。

 それでも私を護衛として雇ってくれるのは王都の噂を知っている人物。ちゃんとした実績があるということを知っている人物だけだ。

 今でこそスコールさんが事情を察してそういう依頼者を見繕ってくれているからトラブルも少ないけど、まともに仕事できないって言うのはやっぱり面倒だったね。

 この容姿のせいで舐められるのであれば強そうな人とパーティを組めば解決するんじゃないかなとも思ったけど、まあ、碌なのがいない。みんな下心丸出しである。

 こんな子供に欲情するなんて変態かよ。

 女性の冒険者もいないわけではないが、やはり護衛となると男性が重宝されるようで一緒にやってくれる人はいなかった。

 そういうわけで、いつも一人で護衛依頼を請け負っているのだ。

 ほんとはお姉ちゃんと一緒に受けたいんだけどね。人手不足だって言うから仕方がない。


「ハクー、今日はどこ行くんだー?」


「うーん、服でも見てみる?」


「おお、いいな! よし行こう!」


 先を行くサリアが振り返りながらどこに行くかを問うてくる。

 護衛依頼も終わり、道場に関しても休ませてもらったので今日は完全にフリーだ。

 護衛依頼を受けるたび、数日間会えないのがサリアには苦痛らしく、いつも帰ってきたらこうして一日デートしてる。

 時たまお姉ちゃんやアリシアが加わったりするけど、今日は二人っきりだ。

 あんまりべったりというのも困るのだが、寂しい思いをしただろうと思うとどうしても甘くなってしまうのは直さないといけないだろうな。思ってるだけで全然改善の兆しが見えないけど。

 さて、行き先も決まったことだし行くとしよう。


「そういえば、ハクはいつもその格好だな。他の服とか持ってないのか?」


「うん。これで事足りるし」


「もったいない! ハクなら絶対ドレスとか似合うぞ!」


 私の服はカラバでマリーさんに作ってもらったこの一着のみだ。

 元々汚れにくい仕様だったし、いつも水魔法で洗浄してるから別に汚くはない。

 初めて着た当初は服に着られているといった印象だったが、今ではだいぶ馴染んできたような気がする。

 いかにも旅人と言った感じの見た目で私は結構気に入ってるし、特段ファッションに興味もないので着続けている。

 でも、もう一着くらいは何か持っていた方がいいのかな? 流石にドレスはないけど。


「なあ、着てみるだけでも、いいだろー?」


「まあ、いいけど……」


 サリアが何度もしつこく催促してくるので着るだけ着てみることになった。

 店員さんがてきぱきと採寸し、それに近いドレスの見本を持ってきてくれる。持ってこられたのは黒を基調としたドレスだった。

 ふんわりとしたスカートには幾重にもレースやリボンがあしらわれている。いわゆるゴスロリと言われるものだ。

 え、これを私が着るの? 無理がない?

 とはいえ、サリアは期待に満ちた目で見てきている。これには応えなくてはならないだろう。

 しぶしぶながら着てみる。ついでに靴も編み上げのブーツを用意され、髪には蝶をあしらった髪留めとリボンが添えられる。

 鏡で見てみたが、表情が動かないこともあってまるで人形のようだった。可愛くはあるけど、やっぱり自分が着るとなるとちょっと……。

 忘れてるかもしれないけど、私は前世の記憶を持っており、その前世では男だったわけだからね。こんな趣味はない。


「ハク、すっごく可愛いぞ!」


 サリアはとても乗り気なようで、キャーキャー言いながら私のことを絶賛していた。

 その後もいくつかの服を着せられ、さながら着せ替え人形状態。サリアの服を見に来たはずなのにどうしてこうなったのか、これがわからない。

 最終的に何着か買うことになったが、恐らく今後着ることはないだろう。そこそこ痛い出費だけど、サリアが喜んでるならまあいいかな。

 店を出て大通りに向かって歩く。

 そういえば、サリアって防具とか持ってないんだよね。冒険者として活動するなら持っていた方がいいのかな?

 私もサリアも基本的に魔術師型で接近して戦うことはない。いや、サリアの場合は不意打ちのために背後を取って接近することもあるけど、基本的にはない。だから、無理に装備する必要はないんだけど、どうだろうか。

 冒険者向けの武器防具屋とかは入ったことがないし、これを機に寄ってみるのもいいかな?

 そう思い、ギルド方面に向かって歩き出そうとした時、正面から誰かが走ってくるのが見えた。


「おー、やはりハクだったか。こんなところで会うとは奇遇だな」


 切れ長の目に明るい金髪。外套で隠してはいるけど、背の小さい私にはすぐに顔が見えてしまった。

 王子様じゃん。なんでこんなところにいるの?


「奇遇って、こんなところで何してるんですか?」


「いやなに、ちょっと外壁工事の視察をな。今はその帰りだ」


 なるほど、確かにこの通りは中央部側の外壁の現場に近いし、城までの通り道ではあるか。

 王子様に遅れてさらに後ろから二人の騎士が走ってくる。護衛かな?


「王子! お下がりください! この者は危険です!」


 そう言って手にした槍を突きつけてくる。

 この人は一体何を言ってるんだ?

 考え込んでいると、さらに私達の背後からも何人かの騎士が出てくる。この人達はサリアを監視している人達だね。……ん? ああ、そういうことか。


「この子に危険なんてありませんよ。武器を下ろしてください」


「黙れ! 貴様が陛下を誑かしていることは知っている! 魔女に与する悪党め!」


 王を誑かしたって、私はただ真実を述べたまでだ。それを聞いて王様が判断したに過ぎない。

 この兵士はサリアを幽閉するのに賛成派だったのだろう。多少の犠牲が出たとしても、それで今後の安全を買えるならと思っていたんだろう。

 実際はすでにサリアにその気はなく、むしろこうして敵対することで危険にさらされているのを理解していない。

 まあ、人をぬいぐるみに変えるなんてスキルを持ってるから魔女と呼ばれるのもわからなくはないけど、それを本人の前で言うとか馬鹿としか。

 ちらりとサリアの様子を窺ってみる。きょとんと眼を丸くしてまるで状況を理解できていないようだった。

 まあ、気づかないならその方がいいか。これでサリアが傷ついたら可哀そうだし。


「やめないか。ハクが悪党なわけがないだろう」


「しかし殿下、こいつは!」


「もちろん、彼女が何者かは私も知っている。だが、こうして敵対行為を示すことが危険なのはお前も知っているだろう?」


「ぐっ……」


 いち早く、王子が騎士を諭したおかげで兵士は槍を下げた。だが、憎しみがこもった目で私とサリアを睨んでいることは変わらない。

 そこまで露骨に敵対してくると少し笑えて来る。ちょっとお仕置きして上げた方がいいかな?


「済まないハク。護衛の者が失礼をした」


「いえ……ですが、もう少し騎士達を制御するようにお願いします」


「肝に命じよう。本当に済まなかった」


 まあ、ここは素直に頭を下げた王子に免じて許してやろう。サリアも気づいてないみたいだしね。

 作者名から作者のページに飛べないようになっていたようなので修正しました。

 誤字報告もありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] しかし、他人しか被害を受けてないならまだ実感できないのも分からんでもないけど、自分も身内も被害受けてるのによくここまで受け入れられるな…加害者ではなく被害者としか見てない。甘い通り越して歪に…
[良い点] ハクさんとサリアは百合百合なんだが、サリアがボクっ子でサクさんの前世が白夜なためいびつにBLな雰囲気も醸し出す何とも歪んだ友愛空間な展開。 [一言] あ〜(ー ー;)ハクさんや、その槍を突…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ