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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十一章:空飛ぶ船編
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第二百九十九話:説明当日

 それから一週間後。私達は、転移魔法陣に乗って、ゴーフェンに向かうことになった。

 一応、今回のプロジェクトは、一部の人しか知らされていない、極秘のプロジェクトらしい。

 いや、極秘というほどセキュリティがしっかりしているわけではないが、せいぜい噂程度に流すくらいで、詳しくは知らせないって感じのスタンスを取っているようである。

 だから、お兄ちゃん達にもあんまり話していなかったんだけど、すでに冒険者の間ではちょっとした噂になっているのか、普通にあっちから話が飛び出してきた。

 あの二人、ばらすの早くない?

 確かに、冒険者は酒の席とかでぽろっと話してしまうことはよくあるけど、たった一週間くらいだというのに。

 ばれたところで問題ないとはいえ、もう少し守秘義務的なものを守った方がいいんじゃないだろうか。


「いやぁ、話した覚えはないんだけどなぁ」


「いくら仕事がないからって、飲んだくれるには早いですよ」


「いや、仕事はあるからな? 無職じゃないからな?」


 一緒に来た冒険者に、ちょっと冗談交じりに注意しつつ、転移魔法陣を起動させる。

 わずかな浮遊感の後、景色は移り変わり、あっという間にゴーフェンの広場へと移動していた。


「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 無精ひげを生やし、筋骨隆々な見た目のドワーフ達が、さっそく出迎えてくれる。

 それにしても、あの見た目でスーツ着てるんだけど、きつくないんだろうか。

 もっとこう、鎧みたいなものの方が似合う気がするけど。


「すっごい久しぶりだなぁ」


 久しぶりに見た街並みは、特に変わっている様子はなかった。

 相変わらず、どこからともなく鉄を打つ音が聞こえてきたり、どこからか熱気が流れてきたり、暑苦しいところはあるけど、それもこの町の特色の一つだろう。

 案内されるがままに、城へと向かう。

 通されたのは、中庭だった。

 芸術品かと見まがうほどの繊細な彫刻が施されたテーブルや椅子が用意され、そこには何人かの人々が団欒を楽しんでいる。

 見た限り、この人達は他の支援国の人達かな。皆きちっとしていて、羽目を外すような人は一人もいない。

 今回のプロジェクトは、他の国にとっても、大きな出来事なのかもしれないね。


「あ、あれは……」


 と、そんな中に、見知った顔を見つけた。

 以前、ゴーフェンを訪れた時に、なにやら悪だくみをして、皇帝に謹慎処分を食らっていた、魔道具作りの名門貴族。

 確か、エルバートさんだったかな。隣には、妹のセレフィーネさんの姿もある。

 あちらもこちらのことに気が付いたのか、軽く手を振って挨拶してくれた。


「あら、ハクさんではないですか。お久しぶりです」


「ハク? げぇ!? 貴様は!?」


「あ、お久しぶりです」


 にこやかに挨拶してくれるセレフィーネさんと違い、エルバートさんはまるで悍ましいものを見たかのように苦々しげな顔をしていた。

 まあ、エルバートさんとは色々あったしね。許してもらったとはいえ、あんまり印象はよくないのかもしれない。


「なぜ貴様がここにいる!? ここには、陛下に招待された者しか入れんはずだぞ!?」


「ええ、招待されましたね。まあ、私はおまけみたいなものですが」


「ぐぬぬ、また私の行く手を阻もうというのか!? なぜいつも邪魔をする!?」


「いや、別に邪魔をするつもりは……」


 確かに、以前は結果的に邪魔をしてしまったかもしれないが、それはこの人のやり方が良くなかっただけで、偶然的に起こったものである。

 別に、何か悪だくみでもしない限り、私が妨害するメリットはない。

 むしろ、ここに呼ばれてるってことはもう皇帝からは許されたってことだろうし、悪人でもない、再起を図ろうとしている人を邪魔するほど非道じゃないつもりなんだけど。


「兄様、失礼ですよ。あれは兄様の失策じゃないですか」


「し、しかしだな、セレネ。あれのせいで、陛下の信頼を取り戻すのにどれだけ苦労したと……」


「そこまで苦労してないでしょう? 新たな魔道具の一つや二つ作り上げただけで、すぐにお許しいただいたんですから」


「そ、それはそうだが……」


 セレフィーネさんの指摘に、エルバートさんはたじたじになっている。

 前から思っていたけど、妹には弱いよね、この人。

 まあ、妹の意見を無視して突っ走るよりはよっぽどましだし、だからこそ好感も持てるけどね。

 実際、この人達の功績って結構凄いし。


「えっと、一応、邪魔する気はないですけど、悪だくみしちゃだめですよ?」


「誰がするか! このプロジェクトに呼ばれただけでも望外な名誉だというのに、それを手放すような真似をするわけがないだろう!」


「後ほど陛下から説明があると思いますが、ハクさんも手伝ってくれると嬉しいです」


「まあ、呼ばれたからには頑張りますよ」


 エルバートさんが結構大声を出していたせいか、周りの視線がきつくなってきたので、そろそろこの辺でお暇しておく。

 この辺に置いてあるお茶って勝手に飲んでいいのかな?

 頼んだら入れてくれるのかな。


「諸君、よくぞ集まってくれた!」


 そんなことを考えていると、一人の男性が登場する。

 その威厳のある立ち姿は、この帝国の皇帝である、バルト・フォン・ゴーフェンだった。

 ようやく皇帝のお出ましか。

 皇帝の登場に、他の人達もみな背筋を正して体を向ける。


「今回集まってもらったのは他でもない、我が国が計画した、とあるプロジェクトに協力してもらいたいからだ」


 そう言って、皇帝は話し出す。

 昨今、ゴーフェンでは、大きな技術革新が起こっていなかった。

 新たな合金の開発や、画期的な魔道具の開発、何も起こっていなかったわけではないが、今までの進歩と比べると、少し見劣りする部分も多い。

 確かに、ゴーフェンはここシャイセ大陸においては、最大の規模を誇る技術大国だが、だからこそ、何か目玉となるものを開発し、時代を進めたいと考えていた。

 そこで目をつけたのが、今までおとぎ話の中でしか存在しないと言われていた魔導船である。

 もし、この魔導船を開発することができれば、歴史が動くことは間違いない。

 その名乗りを上げるのはゴーフェン以外になく、優秀な技術者や協力者の力があれば、十分に実現は可能だと考えた。

 ここに集められたのは、そんな精鋭達と、支援に協力を申し出てくれた心優しき国の人々である。

 必ずや、魔導船を完成させ、共に時代の幕開けを見ようと語った。


「すでに、大体の図面の構想は完成している。後は、材料をどうするかというのが最大の課題だ。なので、諸君らにはその支援をお願いしたい」


 魔導船は、普通の船とは訳が違う。

 そもそも、海に浮かべるのと違い、空を飛ばすのだから、必要な浮力は段違いだ。

 いくら、魔石の魔力を使って浮力を生み出すとは言っても、それだけでは魔石がいくつあっても足りやしないだろう。

 だから、できる限り軽い素材が必要になってくる。

 だが、軽いだけでは、今度は耐久の問題が出てくる。

 より軽く、より耐久性のある素材。いくつか候補はあるだろうが、それを集めるのが、支援国の役目なんだとか。

 まあ、妥当なところだよね。支援って言っても、技術力ではゴーフェンが圧倒的に上だし、できることはそれくらいしかない。

 まあ、あんまり珍しい素材ばかりになるとそれも難しい気はするけど、そこらへんは考えているんだろうか?

 ワクワクすると同時に、少し不安も感じるが、どうにかなってくれるといいのだけど。

 そんなことを考えながら、皇帝の演説を聞いていた。

 感想ありがとうございます。

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[一言] やっぱりここはジュラルミン!
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