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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十章:学園の特別講師編
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第二百八十四話:留学生の証言

「単刀直入に聞きます。あなたは、なぜ問題行動を起こすんですか?」


「そ、そんなのお前には関係ないだろ!」


 そう言って、生徒はこの場を脱出しようと暴れ出す。

 ただ単に腕を掴んでいるだけだから、逃げようと思えばすぐに逃げれると思ったんだろうけど、私の力は割と強い。

 その気になれば、腕を潰すこともできるけど、今回はそんなことはしないつもりだ。

 また怪我させて、問題だって言われても困るしね。


「これは大事なことなんです。今後のあなたの進退にも関わります」


「うるせぇ! 俺が何しようが俺の勝手だろ!」


「確かにそうですが、それで学園に迷惑をかけるのであれば、こちらも対処せざるを得ません。場合によっては、またお仕置きしないといけないですが……」


「ひっ……!」


 生徒の目に涙が溜まっていく。

 やっぱり、私が腕を落とした出来事は衝撃だったようで、同じことをされると思ったのかもしれない。

 本当にするつもりはないが、若干腕に力を籠める。

 生徒の体がこわばっていくのを感じる。

 隣では、睨みを利かせているエルも立っているし、もしかしたらトラウマものかもしれないね。


「わ、わかった、言う! 言えばいいんだろ!」


「ありがとうございます。悪いようにはしないので、どうか教えてください」


 このままではまずいと思ったのか、生徒はしぶしぶといった形で話し始めた。

 まず、問題行動を起こすように指示を出していたのは、ラスト先生で間違いないらしい。

 ラスト先生は、報酬と引き換えに、自分達に人を困らせるようにと言ってきた。

 それに対して、大半の留学生達は難色を示したが、ラスト先生からの強い要望と、報酬が貰えるということもあり、引き受けることにしたようだ。

 どうやら、留学生達は、使えるお金が限られているらしい。

 貴族の子として、仕送りは定期的に送られてきているようだが、流石に実家にいる時のように自由にお金を使うことはできず、少しでもお金を得ようと、話に乗る人が多かったようである。

 確かに、同じ町ならともかく、他国となると、運搬するだけでも大変である。

 ギルドを通じてという手もあるが、貴族は基本的に、冒険者は体のいい遣い走り程度に考えている場合が多く、冒険者であれば、自由にお金を引き出せることを知らない人も多い。

 子供が冒険者の資格を持っているのは、あくまで学園在籍中にお金や素材を集める目的であり、それ以上のことは考えていないんだろう。

 だからこそ、四割もの留学生が話の乗ったのかもしれない。


「ラスト先生は、なぜそんなことをさせようと考えたんですか?」


「し、知らねぇよ。ただ、これはお前達を守るためでもあるとかなんとか……」


 ラスト先生は、確かに問題行動を起こすように指示を出したが、その中には、いくつかの決まりごとがあったらしい。

 その中でも特に重要だと言われたのが、明確な犯罪を犯さないこと。

 すでに問題行動を起こしているのに今更じゃ? と思ったけど、確かに今まで留学生達がやってきたのは、犯罪と呼べるほどのものではない。

 ギルドに対する迷惑行為も、確かにグレーではあるけど、犯罪として立証される可能性は低い。

 これが、もっと上のランクであったり、相手を死亡させてしまったりとかだったとしたら、流石にギルドも罰を下すだろうが、留学生達の多くはFランク。あってもEランク程度である。

 問題行動に関しても、冒険者達は確かに迷惑に思っているが、やり返す程ではないし、今年の学園の生徒はやんちゃな奴が多いな、くらいの印象のようだ。

 学園内でも、授業をさぼったり、先生と喧嘩することはあれど、犯罪と呼べるほどのことはしていないように感じる。

 まあ、私に対して攻撃しようとしてきたのは犯罪と呼べるかもしれないけど、未遂だったし、そもそも本気で攻撃してきたかどうかもわからない。

 問題行動ではあるが、犯罪と呼べるほどのことではない。そんなラインを攻めようとしているようだ。


「どういうこと……?」


 確かに、ラスト先生の目的が、留学生達を退学させることなのだとしたら、犯罪行為にまで発展させる必要はないだろう。

 学園の品位を貶めたというだけでも、学園長の采配によって退学にはできるだろうし、留学生達の今後を考えるなら、犯罪はしない方がいいに決まっている。

 けど、ラスト先生は他国の人間に対してとても厳しい人だ。そんな先生が、そんな手心を加えるだろうか?

 まあ、犯罪行為にまで発展してしまうと、国内での犯罪が増加するという結果になるから、それは避けたかったという可能性もあるけど、その理由が、留学生達を守るためって言うのがよくわからない。

 留学生達が問題行動を起こすことによって、留学生を守る? どういうことだ。


「他にも、ラスト先生に協力している人はいますか?」


「さあな。見たことない」


 今のところ、留学生が接触しているのはラスト先生だけらしい。

 ラスト先生が単独でやっていると考えていいだろうか?

 うーん、ますますよくわからなくなってきた。

 ラスト先生は、一体何をしようとしているんだ? 留学生達を貶めたいのか、それとも守りたいのか。

 性格的には前者なんだけど、ギルドでの行動といい、どうにも引っかかる。


「も、もういいだろ? 話すことは話したはずだ」


「では、最後に一つだけ。あなたは、ラスト先生のことを、どう思っていますか?」


「いい先生だと思うよ。人柄的な意味でな」


 どうやら、ラスト先生には色々と世話になっているらしい。

 今回の、問題行動を起こすにあたって、当然ながら色々な衝突が生まれた。

 学園やギルドだけでなく、町の人達にもちょっかいを出しているから、そのクレームが来ることも多々あった。

 しかし、その度にラスト先生が丁寧に謝罪し、解放してくれたんだという。

 確かに、当たりがきついと感じる時もあるようだけど、その裏にはきちんと優しさがあることを知っているようだ。

 だから、問題行動を起こしている多くの留学生は、ラスト先生に対してプラスの感情を抱いているらしい。

 留学生嫌いの先生が、留学生に好かれているとは。自分がやったことの責任を取っているだけとも取れるけど、ちょっと面白ことになっているね。


「ありがとうございます。ここで話したことは、私達だけの秘密です。もし喋ったら……わかりますね?」


「ひっ! わ、わかってるよ!」


 十分言い含めた後、解放すると、一目散に去って行ってしまった。

 ちょっと脅しが強すぎた気もするけど、でも、それなりに有用な情報が手に入ったといえるだろう。

 ラスト先生は、留学生のことを嫌っているわけではないのかもしれない。

 相変わらず、その行動原理は謎だけど、少なくとも、退学させてやろうというような単純な理由ではなさそうだ。

 ただ、これ以上の情報を手に入れるのが難しそう。

 もし、ラスト先生が、何かしらの思惑があって、留学生達に問題行動を起こさせているのだとしたら、そのために何かアクションがあってもおかしくはない。

 けど、今のところそんなそぶりは全然見せてこなかった。

 よほど隠すのがうまいのか、単に見逃しているだけなのか。今後も監視は続けていくけど、うまく見つけることができるだろうか。

 今後は、より注意して観察しようと決め、その場を後にした。

 感想ありがとうございます。

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