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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十章:学園の特別講師編
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第二百八十二話:ギルドマスターの話

 それから数日。私は徹底的にラスト先生の尾行を続けた。

 いつか気づかれるんじゃないかと思ったけど、私の隠密魔法は探知魔法にも引っかからない精度を誇っている。いくら先生として優秀でも、そう簡単には見つからないようだ。

 しかし、見つからないのはいいものの、目ぼしい成果はなし。

 学園に足を運び、授業をして、家に帰ってくつろぎ、寝る。そんなサイクルを繰り返している。

 時たま町に繰り出して買い物をしたり、ギルドに寄っていたりしていたけど、怪しい動きをするわけでもないし、怪しい人物と接触することもなかった。

 流石に、ここまでびっちり見張っているのだから、何かあったら絶対に気づく。

 私だけなら見逃すかもしれないけど、アリアもエルも一緒なのだ。三人もいれば、誰かしら気づくはずである。

 それなのに、何もないということは、何もないってことなんだろう。


「まさか、本当に裏なんて何もなく、留学生達を退学させようとして……?」


 あれから、留学生達に指示した場面は見ていないが、あの時のやり取りがただの冗談だったとは思えない。

 でも、裏がないとしたら、行動が中途半端すぎる気もする。

 大金払って行うことが、一部の留学生を追い払うだけとは到底思えないんだけど……。


「これは、見方を変えた方がいいかもしれないね」


 ラスト先生が元凶であるなら、張り付いていればいずれ尻尾を出すと思っていたけど、この様子だとそれは期待できない。

 なら、もっと尻尾を出してくれそうなところから崩していくべきだと思う。

 すなわち、留学生の方だね。

 今までは、ラスト先生にばれるかもしれないと思って聞けなかったけど、いつまでもこのままじゃいけないだろう。

 ばれたとしても、それはなぜ問題行動を起こすのかという興味からだとわかるだろうし、それで自分に辿り着かれたと思ったなら、あちらからアクションを起こしてくるはず。

 まあ、なるべく口止めするけどね。秘密裏にと言われたし。


「ただ、その前にギルドに話を聞いておこうか」


 今まで、ギルドで金銭の受け渡しが行われていることは突き止めていたけど、深く突っ込んだことはなかった。

 ギルド側も、問題は把握しているだろうし、何か重要な情報があるなら、お兄ちゃん達なり、ミーシャさんなりから情報が入ると思っていたからね。

 でも、一応事実確認も含めて、聞いておいた方がいいかもしれない。

 今は、何か一つでも手掛かりが欲しいからね。

 そう思って、まずはギルドに行くことにした。


「お、ハクちゃんじゃないか!」


「久しぶりだな! 元気してたか?」


「あいかわらずちっこいなぁ」


 ギルドに入ると、冒険者達からの歓迎を受ける。

 昔は、定期的にギルドを訪れて、差し入れしたりしていたんだけど、最近はお兄ちゃん達も復帰したし、他にやることも色々あったので、顔を出すのが疎かになっていた。

 まあ、それでも久しぶりと呼ばれるほど顔を出していなかったわけではないんだけど、ちょうど遠征にでも行っていたのかもしれないね。

 私は、適当に冒険者の輪に入りつつ、話を聞いてみることにする。

 聞くのは、もちろん問題行動を起こしている留学生についてだ。


「ああ、あいつらか。確かに迷惑だよなぁ」


「まあ、みんなFランクでろくな討伐依頼が受けられないからって反発してるんだろうが、あれはないな」


「横取りはしちゃなんねぇ。どうしてもというなら、許可を得んとな」


 やはりというか、冒険者達も、留学生の問題行動については迷惑しているらしい。

 と言っても、この場にいるのは多くがDランク以上であり、そもそも狩場が同じになることの方が少ない。

 留学生達は、問題行動ばかり起こしているせいでランクが上がらず、元からある程度のランクを持っていた留学生も、今回の件で受ける依頼に制限が科せられているようだ。

 ただ、いくら制限を科したところで、Fランクが受ける定番の薬草採取とかは、子供が一生懸命集めていることもあり、彼らが割を食うんじゃないかと心配しているらしい。

 今のところは、留学生達は皆討伐依頼ばかりに目が行っているようで、安い薬草採取の依頼は鼻から眼中にないようだからまだ大丈夫なようだけど、いずれ目をつけられるかもしれないと考えると、確かに心配だね。


「確か、ちょっと前に学園の教師が謝りに来てたよな?」


「ああ、ちょうど見てた。ギルドマスターに直接話をしたいって、頭下げてたよな」


 どうやら、学園側からギルドに謝罪があったらしい。

 一応、学園側は、今回の件について、公に謝罪はしているけど、直接謝りに来てたというのは初耳である。

 でも確かに、号外で済ませるよりは、直接謝りに来た方が印象はいいよね。


「それって、どんな先生だったんですか?」


「なんか、筋肉ムキムキのマッチョだったな。学園のローブを着てなきゃ、先生だとは思わなかったかもしれん」


「え、それって……」


 その特徴だと、恐らくラスト先生だろう。

 ラスト先生が、わざわざ留学生のために頭を下げに来た?

 今のところ、ラスト先生は留学生達に問題行動を起こすように指示した元凶である。それなのに、わざわざ謝りに来るのは、どうにもしっくりこない。

 あえて謝ることで、学園の、いや、自分の株でも上げようとしてる?

 確かに印象はいいかもしれないけど、ちょっと弱くないだろうか。

 ギルドマスターに話をしたらしいし、直接話を聞いてみようかな。


「ありがとうございます。これ、奢りますね」


「お、気が利くねぇ、ありがとよ!」


 酒代を奢り、受付に話をして、ギルドマスターに繋いでもらう。

 いつも厄介な依頼とかを片付けているせいか、ギルドマスターは私に対してはとても協力的だ。

 数分もしないうちに部屋に通され、面会が叶う。


「やあ、ハク君。聞きたいことがあるってことだけど、どうかしたのかい?」


「はい。冒険者の方から聞いたのですが……」


 私は、問題行動を起こす留学生について、謝罪に来た先生のことを話す。

 普通に考えれば、ただの謝罪なんだろうけど、わざわざギルドマスターに直接話をしたのなら、何かしら情報を握っているかもしれない。

 謝りに来た時に、何か変わったことはなかっただろうか?


「ああ、確かに謝罪に来た教師がいたね。確か、ラストという方だったかな」


「その方は、何か言ってませんでしたか?」


「この頃、うちの生徒がご迷惑をおかけして申し訳ないって感じで、菓子折りを持って謝りに来ただけだったよ」


 ギルドマスターから見た限り、特におかしな部分はなかったらしい。

 かなりの体格で、威圧感はあったが、その態度はとても謙虚で、見ているこっちが申し訳なくなるほどだったという。

 本当に、心の底から謝っていたって感じだね。一体どういうことだろう?


「様子が変だったとかは?」


「うーん、特には。ああでも、ちょっとおかしなことを言っていたかな」


「おかしなこと?」


 話を聞くと、ラスト先生は、こう言ったらしい。


『今後もご迷惑をおかけすると思いますが、しばらくすれば収まりますのでどうかご容赦を』


 そのままの意味で受け取るなら、そのうちやめると思うから、今は大目に見てやって欲しい、みたいなニュアンスだと思う。

 でも、こういう時って、今後はこう言ったことが起こらないように、注意していきます、という風に言うんじゃないだろうか?

 もちろん、ちょっと言い方が変わっただけで、ニュアンス的には似たようなものだと思うけど、今後もご迷惑をおかけするってことは、すぐにはやめる気がないという風にも取れる。

 果たして、これは単なる言い間違えなのか、それとも……。

 私は、ラスト先生の言葉の意図について、考えを巡らせた。

 感想ありがとうございます。

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[一言] 何考えてるんだろうなぁ
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