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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第十章:学園の特別講師編
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第二百八十話:調査の結果

 数日かけて、ラスト先生について詳しく調べてみた。

 オルフェス魔法学園には古い歴史があるが、ラスト先生はその中でも、割と新しい方の先生らしい。

 元々は、騎士になるために養成所に通っていた過去があるようだが、ある日魔物に襲われ、足を怪我し、まともに戦闘に立てなくなったことから、騎士を諦め、商人の道を志すことにしたらしい。

 しばらくは、行商人として各地を回っていたが、王都に来た際に、護身術として使っていた魔法の才を買われ、学園に教師として招かれた。

 その後、商人として培ってきた技術を教えながら、学園に在籍し続けている。

 留学生を嫌っているのは、子供の頃に他国の騎士団に家を接収され、他の村人と共に村を追い出されたことからだという。

 他国の人間は冷酷で、慈悲がなく、自分達を下等種族か何かと思っている、というような思想があり、他国の人間には容赦する必要がないと考えたようだ。

 その考えが今もあり、他国の人間である留学生は必要ない。わざわざ敵に塩を送る必要はないと、反対し続けているって感じだね。


「まあ、調べた限りでは、ちょっと可哀そうな過去を持つ先生って感じだけど」


 怪我をして騎士を諦めざるを得なくなったり、無理矢理村を追い出されたり、ちょっと可哀そうなところはあるけど、その後商人としてそれなりに成功したようだし、学園にも招かれたのだから、徐々に上向いてきてると言えなくもない。

 ただ、バックグラウンドがわかっても、なぜ留学生に対して問題行動を起こすように指示しているのかがわからない。

 他国の人間に対して否定的だというなら、留学生相手には、むしろ制限を設けそうなものだけどな。

 普通の生徒ではまず見ないような、細かいルール違反にも重いペナルティを科したりして、苦しめそうな気がする。

 それとも、あえて問題行動を起こさせることによって、留学生を追い出そうとしている?

 指示したのはラスト先生だとしても、問題行動を起こしているのは留学生自身だから、後で留学生達がラスト先生からの指示だと言っても、容易に誤魔化せるだろう。

 そうなれば、退学になるのは留学生だけで、ラスト先生の望み通り、留学生はいなくなるという寸法である。

 まあ、すべての留学生が問題行動を起こしているわけじゃないし、それで追い出されるのは一部だけで、留学生自体は残ると思うけどね。


「もうちょっと詳しく調べる必要がありそうだけど」


 ラスト先生の利が、留学生がいなくなることだとしたら、ちょっと中途半端すぎる。

 まあ、これは前座で、これから本格的に始動するってことかもしれないけど、留学生全員が加担するわけではないだろう。

 もし、何か報酬を渡しているのだとしたら、留学生全員に配るにはかなりの量が必要になると思うし、ラスト先生一人で賄えるとは到底思えない。

 調べた限り、ラスト先生は貴族というわけでもなく、普通の平民だったっぽいしね。行商人時代の繋がりが多少あるかもしれないけど、太い貴族にコネがあるとも思えない。

 それとも、他にもラスト先生に協力している先生がいるのかな?

 もしそうだとしたら、ちょっと面倒だな。

 どこまで組織立っているのかわからないけど、もし先生が複数関わっているのだとしたら、学園に対する裏切りである。

 これのせいで学園の評判に傷がつくのは避けたいし、どうにか穏便に済ませたいところだ。


「ハク、戻ったよ」


「お帰り、アリア。どうだった?」


 そこに、アリアが戻ってくる。

 アリアには、精霊を通じて、留学生達が何か妙なことを話していないかを突き止めてもらっていた。

 今までは、ただ単に行動だけを監視していたけど、裏にラスト先生がいるってことは、生徒達にも何かしらの利があるはず。

 それを突き止めれば、少なくとも学園長に報告して、処分を下すことはできるだろう。

 そういうわけで調べてもらっていたんだけど、どうだったかな?


「貰ってるのはどうやらお金みたいだね。ギルドの貸金庫に保管してあって、そこから貰ってるみたい」


「直接渡していたわけじゃないんだね」


 もし、直接渡していたら、しばらく張り込みしていれば気づいただろう。

 だが、ギルドの貸金庫となると、秘匿性も高いし、ばれることはまずない。

 もしかしたら、ギルドで問題行動を起こしているのは、報酬を渡していることをばれないようにするためのカムフラージュの意味もあるのかもしれないね。

 ギルドを出禁になったらやばいけど、学園の生徒がギルドから除名されることはほぼないし、なったとしても、貸金庫に保管しているのはあくまでラスト先生だろうから、取り戻すのは難しくないだろう。

 まあ、人の貸金庫を別の人が開いているわけだから、ギルドは多少不審に思っていたかもしれないね。

 そこらへんは、少し調べていればわかったかもしれない。


「となると、ラスト先生は、留学生に金銭を支払うことで、意図的に問題行動を起こさせているって言うことになるね」


 ラスト先生は、留学生が消えてくれればラッキー、留学生は、つかの間のお小遣いをもらえてラッキー、ということなんだろう。

 まあ、長い目で見るならどう考えても釣り合っていないような気がするけど、目先の欲に捕らわれたってところだろうか。

 と言っても、問題行動を起こしている留学生は四割くらいだし、半分以上は理性的なんだよね。

 いや、四割もいる時点でおかしいんだけども。


「どうしますか? 学園長に報告ですか?」


「報告はするけど……それだけで終わるかな」


 もし、これを学園長に報告するとなったら、ラスト先生は何かしらの処分を受けることになるだろう。

 それで、留学生達が態度を改めるのなら、それでもいいのかもしれないけど、なんとなく引っかかる。

 ラスト先生の利が、留学生達がいなくなることだとは言ったけど、本当にそうなんだろうか?

 今の一年生や二年生を追い出したところで、留学制度がなくならない限り、留学生はこれからもやってくるだろう。

 その度に、問題行動を起こさせて、退学させるつもりなんだろうか?

 そんなことやってたら、いくら資金力があったとしてもいずれ尽きてしまうだろうし、割に合わないと思う。

 それこそ、学園長に直談判でもして、留学制度を取りやめさせるくらいすると思うんだよね。

 それをしないのは、過去にやったけど断られたか、あるいは少数意見過ぎて受け入れられないと思っているのか。

 だとしても、大枚叩いて留学生に問題行動を起こさせるよりはよっぽどましだと思う。

 というか、そんなに嫌なら学園を辞すればいいだけの話だし、いまいち利が少なすぎるような気がする。

 もしかしたら、他にも何か原因があるのかもしれない。

 報告はするけど、調査は続けた方がいいかもね。


「学園長のためにも、何とか原因を突き止めないと」


 このまま、学園の評判が下がっていくのもいただけないし、何とか裏を暴いて、学園長に報いなければ。

 そう考えながら、ひとまずこれまでのことを報告しようと、学園長室に向かうのだった。

 感想ありがとうございます。

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